【考察】「カッコーの巣の上で」(ネタバレ)チーフはなぜあの時、マクマフィーを殺したのか?

問題作、衝撃作、上映禁止等

『カッコーの巣の上で』作品紹介

作成 1998年
ジャンル 人間ドラマ
監督 ミロス・フォアマン
キャスト ジャック・ニコルソンルイーズ・フレッチャー

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『カッコーの巣の上で』の見どころ

みなさんは、「ロボトミー」という言葉を聞いたことがありますか?ロボトミーとは、精神外科の世界でかつて用いられた、医師が人間の脳内にメスを入れて行う「脳手術」のことです。

具体的には、大脳の一部を物理的に切り取ってしまうことにより、精神病患者が発作的に発症する興奮や衝動を抑えてしまおうというものです。

しかし、術後に重大な障害が残ってしまう可能性がある他、人権上の問題点も多数浮上し、現在の医学ではロボトミー手術はタブーとされています(「ロボトミー」とは、「人間をロボットに変えてしまう」が由来)。

今回紹介する「カッコーの巣の上で」は、まさにこのロボトミー手術を題材とした映画で、放映された当時はかなり問題視されていたようです。しかし、映画の内容自体は完成度はかなり高く、見る人の琴線に触れてきます。

そしてなによりも、主演のジャック・ニコルソンがハマリ役で、彼なしではこの映画は完成しないといっても過言ではありません。

問題作と名作は、いつの時代も紙一重なんでしょうね。それでは、映画の内容を見てみましょう。

以下、ネタバレの内容が含まれますので、まだ映画をご覧になっていない方は注意してください。

『カッコーの巣の上で』ストーリー(細部)

精神病棟

この映画の舞台となるのは、精神障害者や知的障害者が数多く収容されている精神病院の中になります。患者の障害の程度は、人により差があるものの比較的重度で、まともに会話ができない者、なぜか常に踊っている者などがゴロゴロいます。

ルイーズ・フレッチャー演じる看護婦長のラチェッドは、この病院の”おつぼねさん”的な存在で、その冷血な性格から、患者はもちろん、病院のスタッフにまでも恐れられている存在でした。この映画でも、「悪役」を演じることになります。

ジャック・ニコルソン演じるマクマーフィーは、そんな病棟に運び込まれたのです。しかしマクマーフィーは、落ち込んでいるのかと思いきや大喜びしています。一体何故でしょう?

本当に精神異常者なのか?

マクマーフィーは、前科5犯(全て暴行)という立派な経歴を持つ男で、服役中だった刑務所でも問題を起こし、この精神病院に連れてこられたということです。

マクマーフィーと面談をした院長は、彼に対しある疑いを持ちます。「本当は健常者なんじゃないか?」「刑務所の労働が嫌で精神異常のフリをしているだけなんじゃないか?」

よって院長は、本当にマクマーフィーが精神を病んでいるのかどうか、しばらく様子を見ることになります。

 

実はこの院長の疑いは図星で、マクマーフィーという男は、精神を病んでいるわけではなく、ただ単に刑務所が嫌で精神異常のフリをしていただけだったのです。

看護婦長ラチェットと集団討論

この病院では、患者に対し厳しい日課が定められています。その中の一つに、会話のできる患者を集めて行う集団討論があり、これは「治療に効果がある」ということで、看護婦長ラチェットの考えにより始められたものです。

この日の議題は、「ある患者の妻が浮気をしていることについて」。ラチェットが司会となり、数人に意見を求めますが、余りにもデリカシーの無い議題であったため、ほとんどが「意見無し」。

なんとか議題を盛り上げようとするラチェットですが、患者たちはそのうち大喧嘩を始めます。

本人が嫌がるような話題を敢えて議題に上げるラチェットのやり方に、マクマーフィーは早速不信感を抱くようになります。

マクマーフィーの人柄

マクマーフィーは、感情的で怒りっぽい性格ではありますが、根は素直で、乱暴者だけどとこか憎めない、男女問わず大勢の人から愛される人柄の持ち主です。

患者たちもマクマーフィーの人柄に徐々に惹かれて、いつしか彼はみんなのリーダー的存在となるのでした。

彼のすごいところは、どんな人間でも分け隔てなく接しているというところです。ラチェットをはじめとする病院側スタッフは、健常者である自分たちと患者たちを区別し、まるで「下等な人間」であるかのように扱います。

しかしマクマーフィーは、自分が健常者であるにも関わらず、患者たちと一緒に笑い、一緒にバスケをし、怒る時は容赦なく怒鳴りつける。

彼の中では「健常者」「精神病患者」を区分けするという概念はなく、どんな人間でも同じなのです。

ビリー

この日の集団討論の議題は「ビリー(患者の一人)の彼女について」。

ビリーには、大好きな彼女がいました。彼はついにその彼女にプロポーズをするのですが、自分の母親にそのことを話すことができず、苦悩の末ビリーは自殺未遂をしたようです。

ビリーの母親については細部描かれていませんが、彼は極端に母親を恐れており、どうやら複雑な家庭環境に生まれ育ったということが見て取れます。

しかしラチェットは、答えに詰まっているビリーに対して「なぜ母親に黙っていたのか?」と、厳しい質問を投げかけます。ビリーは完全に意気消沈してしまいます。

聾唖(聴覚障害者)のチーフ

聴覚障害者であり、インディアン出身者でもあるチーフは、実はこの映画の重要人物の一人です。

チーフは、聴覚に障害を持っているため、話しかけても全く反応がありません。

しかし、マクマフィーにとってはそんな障害は関係ありません。バスケットをしようと誘ったり、シュートのやり方を教えたりと、積極的にコミュケーションを取ろうとします。

周囲は「そいつは聾唖だから話しかけても無駄だよ」といいますが、マクマフィーは懲りずに話し続けます。その行動が、後起こる奇跡的な出来事につながってきます。

ワールドシリーズのエア実況(個人的には名シーン)

ラチェットがあまりにもデリカシーを欠いた質問ばかりするので、マクマフィーは「日課を変更してワールドシリーズを見たい」と提案します。

ラチェットは最初は否定するものの、「患者同士の多数決で決めよう」ということになります。

実はこの前の日、同じようにワールドシリーズをTVで見れるよう多数決で決めたことがありましたが、結局3人しか手が上がらず(みんなラチェットを恐れてる)、お預けになったという経緯があります。

マクマフィーにとっては、リベンジマッチということになります。

しかし、半分(18人中9人)は手が上がったものの、「過半数までひとり足りない」ということで再び却下となります(最後の最後に10人目が手を挙げますが、時間切れで無効)。

釈然としないマクマーフィーですが、なんと彼は、何も写っていないTV画面を見つめながら、突然エア野球中継を始めるではありませんか。これにはほかの患者もびっくり。

しかし、娯楽という娯楽をラチェットによって取り除かれた患者たちにとって、このエア野球中継は、彼らを興奮させるには十分すぎるものでした

ラチェットは、静粛にするよう患者に注意しますが、すでに誰も聞く耳を持たない状況になっていたのです。

 

このへんから、患者たちはマクマーフィーの行動に突き動かされ、「自分も人間らしい主張をすべき」という意識が芽生え始めてきます。

そしてこの後も、ラチェットによる精神的支配から徐々に開放されていく様子が見られてきます。

バスジャック

なんとか病院側のスタッフに一泡吹かせたいマクマーフィーは、とあることを思いつきます。それは、患者たちが一時的に外出ためのバスを乗っ取るということです。

かくしてそれは、実行に移されます。

諸君の一瞬の隙を付いてバスを乗っ取ったマクマーフィーは、仲間の患者たちを乗せて市内を爆走!途中でキャンディーという女友達を乗せ、船釣りができる埠頭へ向かいます。

そのキャンディーという女友達も、実に気持ちのいい女性で、精神病患者達を見ても、偏見や同情の目で見ることは全くなく、マクマーフィーと同様に自分と同等の存在として認識するのです。

 

埠頭についたマクマーフィーたちは、船に乗って釣りを始め、あれこれコントを繰り広げながらも、充実した時間を過ごします。

釣りを終えて埠頭へ帰ると、職員と警察が大勢待ち構えていましたが、それでも患者たちは大満足。

マクマーフィーをどうするか?

バスジャックの件を受けて、病院スタッフたちはマクマーフィーをいよいよ危険な人物と認識するようになります。

病気でないことは確かなので、退院させようとする意見もありましたが、「問題を他に押し付けたくない」というラチェットの意見で、マクマーフィーは継続して入院することになりました。

 

マクマーフィーは、病院にとって問題児であることは確かかもしれませんが、正常であるとわかっていて精神病棟に閉じ込めるというのは、人権上いかがなものかと私は思いました。

実は正常だったチーフ

患者たちは、徐々に「自分も人間である」と認識するようになり、ラチェットに対しても「タバコをくれ」「昼間に鍵をかけるな」という主張をするようになります。

情緒不安定な患者チェズウィックは、まるで子供のように扱う病院スタッフに激高し、職員と喧嘩を始めます。そこにマクマーフィー、チーフが加わり、大乱闘に発展します。

問題を起こしたとして、マクマーフィー、チェズウィック、チーフの3人は別室へ連れて行かれます。

チェズウィックが個室に連れて行かれたあと、マクマフィーはチーフにガムを渡します。すると、今まで全く喋らなかったチーフが「Thank you(ありがとう)」と口にします。

なんとチーフは、今まで聾唖のふりをしていただけで、実はマクマフィーと同じく健常者の一人だったのです。

マクマフィーは大喜びをし、「脱出をしよう」と持ちかけたところで、チェズウィックが入っていた個室に連れて行かれることになります。

個室では、マクマフィーは両こめかみ付近に電極を付けられ、頭に電流を流されます。

どうやらこれはロボトミー手術の一種ので、脳みそに刺激を与えることで、人間の持つ暴力性を取り除こうというもののようでした。

しかし、チーフという心強い見方を得たマクマフィーは、精神病院からの脱出を試みることになります。

脱出

その日の夜、マクマフィーはチーフに再び「ともに脱出をしよう」と持ちかけますが、チーフは「俺はできない」と申し訳なさそうに断ります。

そこでマクマフィーは、一人での大脱走をすることになりました。

職員に賄賂を渡し、キャンディーと女友達1名を病院内に入れて、患者たちと共に大酒盛りを始めます。

そして、泥酔した職員のポケットから鍵を取り出し、窓から脱出を図るのです。全員に別れの挨拶をし、さあ外の世界へ・・・というところで、ビリーがキャンディーにベタ惚れしていることに気づきます。

マクマフィーは、キャンディーに「ビリーに抱かれてやってくれ」とお願いし、二人の行為が終わるまで、しばらく待機するのでした。

脱出失敗

マクマフィーが気が付くと、外はすでに朝になっていました。ラチェットを始めとする職員が続々と出勤し、酒瓶が大量に転がる病室の惨状に唖然としています。

ラチェットは、ビリーが病室のどこにもいないことに気づき、職員に全ての個室を探すよう指示します。

職員がとある個室のドアを開けたところ、ビリーとキャンディーがお互い全裸の状態で発見されます。

患者たちは、男になったビリーに拍手を送りますが、怒り心頭に発したラチェットは「このことを母親にバラす」と言うのです。

母親を極端に怖がるビリーは「母親にだけは言わないでくれ」と懇願しますが、ラチェットは容赦しません。追い詰められたビリーは半狂乱状態になり、ついにはその場で自殺をしてしまいます。

 

ここでマクマフィーの怒りが爆発します。

ラチェットに襲いかかり、殺してやると言わんばかりに彼女の首を両手で締めます。マクマフィーにとってすれば、ラチェットは、大事な仲間を死に追いやった張本人なのです。

しかし、他の職員に阻まれてしまい、スタンガンによって気絶させられていまいます。マクマフィーは、脱出が失敗に終わったばかりか、ラチェットに復讐を果たすことすらできなかったのです。

衝撃のラスト

その日の夜、チーフはマクマフィーが病室に帰ってくるのを待っています。マクマフィーは、ラチェットの首を絞めたことにより、再び別室へ連れて行かれたのです。

すると、職員に同伴され、マクマフィーが帰ってきます。チーフはマクマフィーのベットに近づき、「今なら俺も脱出できる。共に脱出しよう」と持ちかけますが、なんだかマクマフィーの様子が変です。

呼吸はしていますが、何を話しかけても反応なく、死んだ魚のような虚ろな目をしています。

なんと、あの底抜けに明るい性格だったマクマフィーは、ロボトミー手術を施されことにより、完全に生きる屍と化してしまったのです。

チーフは、マクマフィーの変わり果てた姿にショックを受け、「俺はお前を置いたままで行かない」というセリフとともに、枕をマクマフィーの顔に当てつけ、窒息死させてしまいます。

そして、病室の窓を破り、チーフはついに脱出することに成功します。この映画のラストは、このような締めくくりとなっています。

1分で振り返るストーリーまとめ(忙しい人向け)

忙しい人向けに、本作の内容を1分で把握できるようまとめてみました。

✔ マクマフィーは、刑務所から逃れるために精神病のフリをして、精神病棟に入院することとなった。
✔ 精神病棟では、ラチェットという看護師が強権を振るっており、誰も口答えできない状況になっていた。
✔ マクマフィーは、そんなラチェットに反抗するかのように、自由奔放な性格を全開にして「健常者も精神病患者も一緒なんだ」ということを周囲に説く。
✔ 患者たちは、次第にマクマフィーに触発され、自分の権利を主張できるようになる。
✔ 一方、病院側はマクマフィーを”危険人物”とみなすようになる。
✔ ある夜、マクマフィーは精神病棟から脱走しようと計画するが、あと一歩というところで失敗する。
✔ 病院側は、そんなマクマフィーにロボトミー手術を施し、廃人にさせる。
✔ チーフは、廃人になったマクマフィーの姿を見て悲しみ、枕を押し付けてその場で殺してしまう。

興味が湧いた方は、ストーリー(細部)も読んでいただけると嬉しいです!!

考察及び感想

総じて言うと「めっちゃ面白い映画」その一言に尽きます。

マクマフィーの自由な生き方に憧れる一方で、「人間の尊厳とは何か」という高尚な問題についても考えさせられます。

どちらかというとシリアスな場面が多い映画ですが、微笑んでしまうようなシーンも所々にあり、映画としては非常にバランスが取れていると思います。そしてなによりも、ジャック・ニコルソンの演技力が光ります。

 

ラストシーン、チーフがマクマフィーを殺した理由について、劇中では明らかになっていない為視聴者が想像するしかありませんが、きっとチーフは「このまま生きていても、それはマクマーフィー本人が望む人生ではない」と思ったからこそ、あのような行動に出たのではないかと思います。

 

みなさんは、この映画を見た後、どのような感想を抱くのでしょうか。わたし的なオススメ度MAXのこの映画、まだ見ていない方は是非とも一度ご覧になってください。

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