視聴者を悩ませる、難解映画の存在
「え?何それ?今のってどういうことよ?」
映画を見ているときに、こんな風にストーリーに付いていけなくなったことはありませんか?
その時は頭の中でモヤモヤしますが、もう一度見返してみると、大概は「なーんだ、そういうことだったのか」と理解することができます。
こういう現象って、映画あるあるですよね。
しかし、中には何度見返したとしても、一向に内容を理解することが出来ない超難解な映画も存在します。
それは、敢えて説明が省かれていたり、時系列の整理が難しかったり、そもそも視聴者に理解させる気など持っていなかったり(笑)と、様々なパターンがあるのです。
今回は、何度見ても理解不能な超難解映画を、独断と偏見で決めつけた「意味不明レベル」と共に、選りすぐって紹介していきたいと思います。
この記事は、こんな方におススメ!
✔ 超難解映画が好きだ!
✔ 読解力に自信がある
✔ モヤモヤする気持ちをすすんで味わいたい
※ 意味不明レベルの基準(私の独断の偏見)
★★☆☆☆ → 100人中30人しか理解できない
★★★☆☆ → 100人中10人しか理解できない
★★★★☆ → 100人中2~3人しか理解できない
★★★★★ → 人類で誰も理解でる者はいない
超難解映画8選
イレイザーヘッド
★★★★★
あらすじ
印刷工場に勤めているヘンリーは、恋人メアリーの家で催される食事会に招待される。
風変わりなメアリーの両親に迎えられたヘンリーは、やや気まずい雰囲気での食事を強いられることとなる。
そんな中ヘンリーは、メアリーの母親から「メアリーは妊娠している」という衝撃的な事実を告げられる。
驚きのあまり言葉に詰まってしまうヘンリーだったが、そんなヘンリーをよそに、メアリーはさらに衝撃的な発言をする。
「赤ちゃんじゃないかも・・・」
メアリーの言葉どおり、産まれてきた子供は、人間の形をとどめないバケモノだった。
この後のヘンリーは、一体どのような新婚生活を送っていくのだろうか?
解説
紹介一発目に意味不明度MAXを飾ったこの『イレイザーヘッド』ですが、昔から”意味不明な映画”として有名な作品なのです。
まず、隕石のようなものに正体不明の男が住んでいて、その男がよくわからないレバーを操作しているというオープニングからして意味不明です。
なぜ赤ちゃんじゃなくてバケモノが生まれたのかも意味不明。
この後も、どでかいウジ虫のような生き物が大量発生したり、変な踊り子が現れて謎の歌を歌ったり、ジャックが鉛筆(!?)になったり、理解が追い付かない展開ばかり・・・
もうとにかく、うまく説明できないから一度見てみてください。一度見れば、人間の理解力を遥かに凌駕したこの作品の魅力が理解できるでしょう。
また、「この映画を完ぺきに理解できた!」という人がいたら、是非とも連絡をください。
メメント
★☆☆☆☆
あらすじ
主人公であるレニーは、過去、愛する妻を殺されたショックで10分後にはすべての記憶を失ってしまうという体質になる。
レニーが唯一覚えていることは、妻を殺した犯人の名前が”ジョン・G”であること、そして、自分はジョン・Gに復讐をするために生きているということだけだった。
そんなレニーの目の前に、テディと名乗る見覚えのない男が現れる。どうやらテディはレニーのことを知っているようだが・・・
ところが、レニーがふとメモ帳を見直してみると、テディの写真の裏に「奴の嘘を信じるな。奴が犯人だ。殺せ。」と、確かに自分で書き残したであろう文字が書いてあった。
「こいつがジョン・Gだ」
そう思ったレニーは、テディと名乗る男を殺してしまうのだった。
一体、テディとは何者だったのか?レニーのメモ帳に書き綴られていたメッセージには、どういう意味が込められていたのか?
解説
この映画は、とても斬新なストーリー進行方法を採用しています。
未来→過去→未来→過去→・・・というように、時系列がバラバラで話がすすみ、最後の最後ですべてが繋がるような作りになっています。
なので、この特殊な進行方法を理解できていないと「ん?どゆこと?」となってしまいますが、理解さえしてしまえば「あー、そういうことね!」となると思います。
記憶が無くなる系の映画はこれまでに数多く作られていますが、『メメント』ほど、その特性を十二分に生かした映画は他にないでしょう。
名作中の名作と言っても過言ではありません。
超面白いので、是非とも一度見てみてください。
ヴィデオドローム
★★★☆☆
あらすじ
TV局に務めるマックスは、視聴率を稼ぐため、より刺激の強い映像を探し求めていた。
そんな中マックスは、友人のハーランから「ものすごい映像がある」という話を聞きつける。
ハーランから紹介された映像とは、「ヴィデオドローム」と書かれている1本のビデオテープで、黒ずくめの男二人が搭乗し、別の男をただひたすらムチ打っているというだけのものだった。
しかし、マックスはこのビデオテープに強烈に興味を惹かれてしまう。
この後もマックスは、この無機質なビデオテープが発する不思議な魅力に翻弄されていく。そして、「ヴィデオドローム」の本当の恐ろしさを目の当たりにすることになる。
解説
この作品は、”ビデオテープが腹に入る”というなんともぶっ飛んだ発想で有名。
はじめは、マックスが生きる現実世界を描くストーリーで、特に難しい部分はないのですが、途中からはマックスの幻覚世界、そして終盤は現実世界と幻覚世界が融合された世界へと昇華していき、どんどん訳が分からなくなっていきます。
特にラストシーンは、何回観ても意味不明。
そもそもこの映画を作ったクローネンバーグ監督という方は、このビデオドロームのように、玄人が好みそうな映画をたくさん作っている人なんです。
クローネンバーグワールド全開のこの映画。一度見たらハマること間違いなし!
ムカデ人間3
★★☆☆☆
ストーリー
凶悪犯のみが収容されているジョージ・ビック刑務所の所長ビル・ボスは、残忍かつ狂暴な性格の持ち主で、囚人たちへの拷問や虐待は日常茶飯事だった。
ある日、ヒューズ州知事が刑務所を訪れ、維持管理費が異常に高いという問題点を指摘。ビル・ボスは、2週間以内に結果を出さなければ所長をクビになってしまうこととなった。
困り果てたビルは、経理担当のドワイト・バトラーに相談する。
すると、ドワイトから提案された意見とは、なんと囚人同士の口と肛門を繋げてしまおうという狂気のムカデ人間計画。
ビルは、早速この禁断の計画を実行に移すことに・・・
そして、ムカデ人間を超える存在”イモムシ人間”とは一体何なのか?
解説
世界中で物議を醸した、かの有名なムカデ人間シリーズの第3作目。
1と2はホラー要素が強めでしたが、3はどちらかというとホラーとコメディが50:50といった具合です。
ストーリーの97%までは単純明快でわかりやすい構成になっているのですが、ラストの3%が謎。1回見ただけで「なるほどー!!」って納得できる人はほとんどいないと思います。
私も、何度見直しましたが、未だに一体どういうことなのかが理解できません。
また、コメディ要素が強めとはいえ、かなりグロテスクなシーンが多い映画ですので、苦手な方は閲覧注意です。
クラッシュ
★★★★☆
ストーリー
妻のキャサリンとは倦怠期のジェームスは、車を運転中に対抗車両と正面衝突をするという交通事故を起こし、大けがを負う。
その後、ジェームスが入院中に病院内で出会ったのが、事故当時に相手方の車の助手席に座っていたヘレンだった。
なんとヘレンは、交通事故に遭遇することでエクスタシーを感じるという、少し(というかかなり)変わった性癖の持ち主だった。
そんなヘレンに呼応するかのように、ジェームスも交通事故エクスタシーの世界にのめりこんでいく。
解説
交通事故の現場を見たり、又は自らが交通事故を起こすことによって性的興奮を覚えるという、かなりマニアックな性癖の人たちを描いた映画。
監督は・・・、『ヴィデオドローム』で紹介したばかりのクローネンバーグ監督!
この映画は、
交通事故 → 興奮 → セッ〇ス!! → 交通事故 → 興奮 セッ〇ス!! → 交通事故・・・
というサイクルを繰り返し、エクスタシーの向こう側を探索していくというスタイル。性的描写がかなり多めの映画です。
ストーリーに着いて行くことがそもそも大変ですが、ラストシーンにおける主人公の意味深なセリフがトドメとなって「????」となった視聴者はかなり多いはず。
BLOOD-C THE LAST DARK
★★★☆☆
あらすじ
自分が”古きもの”に近い存在であることを知った衣更小夜(きさらぎさや)は、自分の本当の姿を知るべく、すべての黒幕である七原文人を探して街をさ迷っていた。
そんななか小夜は、七原文人が経営する会社「セブンズヘブン」について調査をしているネットコミュニティグループ「サーラット」のメンバーと出会う。
なんと、サーラットに資金援助をしているIT企業代表取締役の殯蔵人(もがりくろと)は、七原文人の従弟だというのだ。
サーラットの協力を得た小夜は、「セブンスヘブン」の本拠地である『塔』への潜入を試みる。
小夜は、自分の本当の正体を知ることができるのか?そして、七原文人が言う「褒美と罰」とは一体何なのか?
解説
このアニメは、『BLOOD-C』という連続放映アニメの完結編として作られた劇場版アニメです。
そもそも、前作の『BLOOD-C』がなかなか難解な終わり方をしてるので、スタート地点に立つのが一苦労。
そして、終盤からラストシーンまでの30分、かなり難解レベルが高くなります。
『BLOOD-C』→『BLOOD-C THE LAST DARK』と続けて観た人じゃないと、完全に詰むと思われます。
見ごたえがあって面白いコンテンツなので、是非とも前作の『BLOOD-C』から見てみて下さい。
裸のランチ
★★★★★
あらすじ
害虫駆除屋のビリーは、仕事で使う”黄色い粉”を何者かによって盗まれてしまう。
盗んだ犯人は、なんとビリーの妻ショーン。
ショーンによると、その黄色い粉を自分の腕に注射すれば、まるで麻薬でも使用しているかのようにハイな気分になれるらしいい。
その後ビリーは、麻薬所持の疑いで警察に逮捕される。警察は、ビリーが害虫駆除に使用する”黄色い粉”が麻薬ではないかと疑っているのだ。
必死に否定するビリーだが、警察は「これが駆除の薬というのであれば、実際にゴキブリを殺してみろ」と言い、ビリーの前に大きな箱を置く。
ビリーがその箱を開けてみると、中にはなんと全長50cmはあろうかという巨大なゴキブリが入っていた。
その後も続く不可解な出来事の連続に、ビリーは精神崩壊寸前にまで追い詰められる。
解説
タイプライターが巨大なゴキブリになる、というなんとも不思議な映画です。
この意味不明な映画を作ったのは、この記事だけで既に3回目の登場となるクローネンバーグ監督。そんなクローネンバーグ監督の作品の中でも、群を抜いて意味不明なのがこの映画です。
あまりにも電波ストーリー過ぎて、「この監督の頭は大丈夫か?」と心配になるレベルです。
この後も、宇宙人みたいな化け物が出てきたり、ゴキブリ型タイプライターがゴキブリ型タイプライターを殺した(壊した)りと、常人では理解しがたい展開が続き、最後の「ウィリアム・テルごっこ」で混乱の最高潮を迎えることになります。
そして、一体何が「裸のランチ」なにか?
とにかく、一度見てみると分かります、その意味不明さ加減が。
挑戦者求む!
鳩の撃退法
★★☆☆☆
あらすじ
すっかり落ちぶれたかつての直木賞作家・津田伸一は、房州老人が営む本屋から『ピーターパンとウェンディ』という本を100円で購入する。
その夜津田は、行きつけのコーヒーショップに赴きいつものように読書に勤しもうとしたところ、その店に一人の青年が入ってくる。
その青年は、名を幸地秀吉と言い、最近このコーヒーショップに現れては明け方まで読書を楽しんでいるのだ。
津田は、そんな秀吉に声を掛けると、途端に二人は意気投合。小説談議に花を咲かせることとなる。
津田は、今度会った時にこの『ピーターパンとウェンディ』を秀吉に貸すことを約束する。
しかし、この青年がコーヒーショップに現れることは二度となかった。
秀吉の身に、一体何が起こっっているのか?
視聴者は、小説家津田が書く”ウソ”を見抜くことができるのか?
解説
原作は、第157回直木賞を受賞した佐藤正午の『鳩の撃退法』。
小説を原作にしているだけあって、まるで文字を読み進めているかのような感覚でストーリーが進行していきます。
この映画は、津田が書く小説パートと、津田が現実の世界で体験した現実パートが交互に繰り返されるという斬新な手法を取っています。
そして、初めはフィクションと思われていた津田の小説が、実はフィクションではないという可能性が浮上してくるのです。
ただでさえ、現実とフィクションの整理が大変なのに、その上津田は自信が書く小説に”ウソ”を混ぜてきますので、さらに物語を分かり辛くさせています。
極めつけは、最後のシーン。きっと多くの人が混乱したことでしょう。
是非とも挑戦してみてください。
まとめ
というわけで、レベル別に分けて意味不明映画・アニメを7つほど紹介してきました。
超難解ということは、つまり監督のこがわりや哲学がより強く込められているという証拠。
そして、こういう系の映画こそ、一度ハマれば抜け出せなくなる麻薬のような魅力を持ち合わせている者です。
映画という世界の深淵に触れるという意味でも、この超難解映画に挑戦してもらいたいです。
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