作品紹介
作成 | 1981年 |
ジャンル | ホラー |
監督 | デイビッド・クローネンバーグ |
キャスト | スティーブン・ラック、ジェニファー・オニール、マイケル・アイアンサイド、パトリック・マクグーハン |
この映画のココがヤバい
前回紹介した「裸のランチ」は、映画史を代表する程のぶっ飛び具合でしたが、今回の「スキャナーズ」もなかなかのぶっ飛び具合です。なたって、「裸のランチ」のクローネンバーグ監督が作った映画ですから♫
この表紙にもなっている白目を剥いたおっさんは、”カナダのジャック・ニコルソン”と言われているアイアン・サンドです。この映画では、悪役の「レボック」を演じることになります。
この映画は、超能力者たちの戦いを描いた映画なんですが、この映画をきっかけで、クローネンバーグ監督の名前が世に知れ渡ることになりました。特に、ストーリー序盤での「頭部爆発シーン」は、あまりにも有名です。
ストーリー自体は、「裸のランチ」と比べてかなり解り易く、どなたでもスっと入っていける内容となっています。
時代が時代なため、目からビームが出たり空を飛んだりという派手な演出はないですが、全体的におどろおどろしい感じが出ており、「いぶし銀」の映画と言えるでしょう。
それでは、中身をいってみましょう!
以下、ネタバレの内容が含まれますので、まだ映画をご覧になっていない方は注意してください。
ストーリー
キャメロン・ベイル
本作の主人公であるキャメロン・ベイルは、うだつが上がらず、いわゆる”世に見捨てられた”ような存在でした。
そんな彼は、ある日レストランで食事をしていたところ、向かいの席に座っている初老の女性二人が、ベイルをチラチラ見ながら会話をしています。
「あの男、いやらしい目でこっちを見てくる」「ほんとだ、キモッ」
声はの小さいはずなのに、なぜかベイルには聞こえてしまいます。
すると、ベイルをディスっていた女性の一人が、突然苦しみ出します。同時に、ベイルもなにやら体調が悪そうです。女性はとうとうその場で倒れて痙攣し、周囲は騒然となります。
と、ここで二人組の怪しい男たちがベイルの存在に気づき、彼を捕まえようとします。ベイルは訳も分からず逃げ出しますが、麻酔銃を打ち込まれ、ついに捕まってしまいます。
大勢の人間、もがくベイル
ベイルが眠りから覚めたとき、そこは大きな倉庫の中でした。ベットがぽつんと寂しく置かれており、その上にベイルは拘束具で高速されている状態でした。
そこに一人の老人がやってきて、「君はスキャナーだから、世の中から見捨てられた」と言い出します。突然のことに、状況を理解できないベイル。しかも、ベットの前には、大量の椅子が並べられています。一体に何に使うのでしょうか?
すると、突然大勢の人間が登場し、別途の前に並べられた椅子に座ります。どうやらこの人たちは、先ほどの老人が金で雇った人たちみたいです。
この大勢の人たちは、椅子に座り、じっとベイルを見つめるだけで、何も会話をしません。しかし、ベイルはベットの上でもがき苦しみます。
ある程度苦しんだところで、老人はベイルにある薬を注射します。すると、不思議なことにベイルの苦しみは緩和され、会話ができる状態にまで回復します。
有名な”頭部爆発”シーン
場所が変わって、ここはとある会社のホール。壇頭にはメガネをかけた男が立っており、十数人ほどの客に対して公演を行っています。
メガネの男は、「これからスキャン(心の中を読む)をするから、希望者は前に出て」と言います。このメガネは、超能力者のようです。ざわつく会場ですが、ひとりの男が手を挙げます。
メガネは、「何かを考えてください」と言い、男をスキャンしようとします。ところが、通常はスキャンされる側が大きな苦痛(吐き気、頭痛など)を感じるはずなのに、スキャンする側のメガネが苦しみ出します。
何か変だ・・・そんな雰囲気が会場を支配しようとした瞬間、
メガネの頭が突然爆発します
そして、スキャンされているはずの男はピンピンしています。
会場は悲鳴に包まれ、男は警備員によって取り押さえられます。そうです、この男こそ、本作の悪役で最強のスキャナー(超能力者)でもある「ダリル・レボック」だったのです。
メガネにスキャンされるはずだったレボックは、逆にメガネをスキャンしてしまい、圧倒的な超能力でメガネの頭を吹き飛ばしたのです。
レボックの拘束に成功した警備員は、車に乗せて護送ようとします。
ところが、レボックにより意識を操作された警備員は、ある者は自ら車で事故を起こし、ある者は仲間を射殺したうえ自殺してしまいます。これにより、レボックはその場から脱走してしまいます。
コンセック社
国際的な警備会社でもあるコンセック社は、スキャナーの能力を利用して商品にしようと考えており、スキャナーを大量に育成しようとする「スキャナー計画」を目論んでいました。
頭が爆発したメガネが行っていた公演も、PRのうちのひとつだったのです。
しかし、このスキャナー計画はレボックによって妨害されており、社が抱えているスキャナーたちは次々と殺されているのでした。最高責任者のケラーは、「計画を中止すべし」と提案しますが、イマイチ踏ん切りがつきません。
「どうにかならないのか?」
ここでルース博士が「一人だけ対抗できるやつがいる」と提案します。このルース博士こそ、倉庫内でベイルに実験をした老人なのです。
能力に気付くベイル
ベイルはこれまで、人が心に思う言葉が、勝手に自分の頭の中に入ってくるということに度々苦しめられていました。しかし、ルースがスキャンの能力についてベイルに話をすると、ベイルは自分がスキャナーであることを自覚します。
そして、「エフェメロル」という薬の話もします。エフェメロルは、スキャナーの能力を一時的に鎮静する薬で、倉庫の中でベイルに打った薬も、エフェメロルなのでした。
また、ルースはレボックが精神病棟に入院していた頃のビデオを見せます。ビデオでは、「頭の中に人が入って来る。重いから、軽くするために穴を開けた」とレボックが語り、自分で空けた額に穴を見せるシーンがありました。
それを見てベイルは、自分がレボックと全く同じ症状であることを理解します。
さらにルースは、「レボックがスキャナー達を集めて地下組織を結成し、従わないスキャナーたちをどんどん殺している」「レボックは君(ベイル)のことを知っている」ということを伝えたうえ、レボックを倒すようベイルに依頼します。
ルースは、まだまだ能力が弱いベイルを鍛えるため、ヨガの達人を連れてきて、「こいつは大丈夫だから遠慮なく精神攻撃しろ」と命じます。
ベイルは、このヨガの達人に精神攻撃を仕掛けます。最初は余裕そうにしていた達人ですが、徐々に苦しみ出します。
いよいろヨガ達人がヤバイ状態になり、「もうやめろ」というルースの静止も聞かず、ベイルは精神攻撃を続けます。たまりかねたルースが、ベイルにエフェメロルを注射しようとした瞬間、ギリギリのところでベイルは力を緩めます(そこまでしなくても・・・)。
ベイルは、ルース博士により、スキャナーとしての能力が完全に覚醒したのでした。さらに、相手の心の中を読むだけでなく、相手の意識を操作できるという、レボックと同じ能力まで身につけてしまうのです。
ベンジャミン・ピアース
ベイルは、レボックに接触するため、居場所を知っているとされるベンジャミン・ピアースの元を訪ねます。
ピアースは、ベイルと同様スキャナー能力の持ち主で、10歳の頃に家族を皆殺しにするという経歴を持ち、今は不気味は彫刻を作る芸術家として活動していました。
ピアースからレボックの居場所を聞き出したいベイルでしたが、なかなか教えてくれません。
と、ここでショットガンを持った暗殺者たちが唐突になだれ込み、ピアースを射殺してしまいます。もちろん、この暗殺者たちは、レボックに意識を操作された者たちです。
そしてピアースは、死に際に「キム・オブリスト」という言葉を残します。
キム・オブリスト
キムは、街中に佇むアパートの中、仲間のスキャナー数人とともに暮らしていました。ベイルがそのアパートを尋ねると、迎えたスキャナーに「そうか、ピアースが死んだのか」と早速スキャンされました。
ここは、レボックを快く思わないスキャナーたちの隠れ家なのでした。
皆はベイルを歓迎するのですが、そこで現れたのがレボックでした。レボックは、再び殺し屋の意識を操作し、ベイルたちがいるアパートに向かわせます。
殺し屋は、瞬く間に数人のスキャナーを射殺してしまいますが、キムが能力を発動し、殺し屋を返り討ちにします。
ベイルとキム、そして残った数人のスキャナーたちは、車両で逃走を図りますが、再び殺し屋が現れて、ベイルとキムを除くスキャナーたちを皆殺しにしてしまいます。
しかしベイルは、銃を向けて引き金を引こうとする殺し屋をギリギリのところでスキャンすることに成功し、一命を取り留めます。さらにベイルは、レボックの居場所を知るヒントとして、液体の入った瓶を手に入れます。
その瓶には、何か会社のマークのようなロゴが入っていますが・・・
生物科学研究所
瓶のロゴを頼りに行き着いた先は、生物科学研究所。ベイルはそこに潜入すると、この研究所で陣頭指揮を執るレボックを見つけることに成功しました。
さらにベイルは、研究所のコンピューターから不可解な事実を知ることになります。この研究所では、どうもスキャンの能力鎮静薬「エフェメロル」が生成されているらしいということ、このエフェメロルの出荷先が、ルース博士やケリーが所在するコンセック社であるということ。
ここでベイルは「裏切り者がいる」こう思うようになります。
加えてベイルは、「ライプ・プログラム」という言葉を知ります。しかし、これ以上はアクセス権限がないため、この言葉がなんなのかまでは解りませんでした。
レボックの居場所を突き止めたベイルは、ルースに連絡し、情報提供者(キム)とともに帰還するための手配を依頼するのでした。
ケリーの裏切り
ここで、一連の黒幕が判明します。コンセック社の責任者でもあるケラーは、実は裏でレボックと繋がっていたのです。ケラーは、「ベイルがお前を探しているぞ」などと、逐次情報提供をしていたのです。
そして、「ベイルと情報提供者(キム)がルースと会う」ということもチクります。レボックは、「ルースが何か知ったら殺せ」と命令します。
さて、レボックとベイル、そしてルース、一体どんな関係なんでしょうか?
ルースの死
帰還したベイルはルースの元へ行き、生物科学研究所にレボックがいた事、科学研究所でエフェメロルが作られている事、ライプ・プログラムの事について話します。
しかしルースは「確かに生物科学研究所は私が作ったが、後は知らん」と言います。さらにルースは、「コンピューターをスキャンしてアクセスし、ライプ・プログラムについて調べろ」とも言います。
ちょうどその頃、ケラーはキムを尋問し、自らの正体を表したうえでキムを殺そうとしますが、キムがスキャンの能力を発動させ、逃げ出します。ケラーはエマージェンシーボタンを押し、「スキャナーを殺せ!」と命じていました。
会社全体が騒然となる中、ルースは、さっきはベイルに「知らない」と言っていたライプ・プログラムについて、「ライプは災いの源」などとボソボソ言っています。ルースは、このライプ・プログラムについて何かしら関わっていたようです。
しかしルースは、直後ケラーにより射殺されてしまします。
コンピューターをスキャン
コンセック社を脱出したベイルとケリーは、公衆電話の電話を使って、生物科学研究所のコンピューターにスキャンをかけようと試みます。
一方、生物科学研究所では「誰かにハッキングされた」と大騒ぎです。ケラーは、ベイルの仕業であると見破り、「このままコンピューター自身を自壊させれば、ベイルの精神を崩壊させられるのでは?」と思い付きます。
職員は静止を促しますが、ケラーは聞かず、職員にコンピューターデータを自壊させるよう指示します。
職員が自壊スイッチを押し、ベイルに精神攻撃を仕掛けますが、ベイルは回路を暴走させ、逆に生物科学研究所のコンピューターを破壊してしまいます(爆風に巻き込まれ、ケラーはひっそりと死亡)。
ベイルは、ケラーの横槍によりすべての情報をスキャンすることはできず、わずかに得た断片的な情報を頼りに、ライプ・プログラムの真相について探ることになりました。
ライプ・プログラムの真相
コンピューターのスキャンにより得た情報、それは「フレイン医師」というライプ・プログラムの関係者でした。ベイルは、フレイン医師の元へ行き、ライプ・プログラムのことについて聞き出すことに成功しました。
ライプ・プログラムとは、超能力者「スキャナー」を大量に生産する計画のことで、妊婦にある薬を注射することにより、生まれてくる子供がスキャナーになるという非人道的なものでした。
その妊婦に注射する薬こそ、スキャナーの鎮静剤として使われるはずの「エフェレロル」でした。
この事実を知った瞬間、再びレボックの刺客が現れ、ベイルとキムに麻酔薬を打ち込みます。
最後の決闘
ベイルが目を覚ますと、そこにはレボックがいました。レボックは、「父親は誰だ?」「母親は誰だ?」「少年時代の思い出は?」と聞きますが、ベイルは何も答えられません。
なぜ小さい頃の記憶がないのか?理解できないベイルですが、ここでレボックから衝撃的な話を聞かされます。
・ふたりの父親はルース
・エフェメロルは、当初妊婦用の睡眠薬として販売されたが、副作用が見つかり問題となった。その副作用が、スキャナーである。
・ベイルとレボックは、母体にエフェメロルを投与することにより、意図的にスキャナーとして産み出された
・ルースは、エフェメロルの特性に注目し、その全てをコンセック社に売った
・ベイルは、レボックが問題を起こすまで氷漬けにされていた(だから記憶がない)
狼狽するベイルに、レボックは「強力なスキャナーを量産し、世界を征服しよう」と持ちかけます。しかし、レボックはその提案を断り、ついにベイルとレボックの超能力対決が始まります。
お互いがお互いに意識の中に入り込み、精神攻撃を仕掛けます。
あまりの強力さに、両者の顔や皮膚に血管がボコボコ浮き出てきます。
そのうちに、レボックの方が優勢に立ち、ベイルは心臓付近の肉が溶け出し、顔面の肉がボロボロ崩れ落ちてきます。さらには、体中から血が噴き出し、発火までし始めます。
勝負あったか?そう思われた刹那、急にレボックが苦しみ出します。そして、完全に白目を剥きます(表紙のアレ)。ベイルも、目が爆発します。
劣勢に立たされたベイルでしたが、最後の力を振り絞って攻撃をしているのです。両者ともすでに満身創痍ですが、軍配はどちらに上がるのでしょうか?
衝撃のラスト
二人が超能力バトルを繰り広げている時、別室にいたキムはようやく起き上がります。そして、二人が戦っている部屋へと入ります。すでに勝敗は決しているようです。
部屋の真ん中に、黒焦げの死体が転がっています。これはどちらの死体なのか?確か燃えていたのはベイルでしたが・・・
「カメロン・・・」
と呟くキムですが、ここで「キム」と呼ぶ声がします。この声は、こう聞いてもレボックのようですが・・・
そしてレボックが登場します。しかし、レボックは「僕だよ、カメロンだよ」「僕たちの勝利だ」と言い出します。そして、キムがよく見ると、レボックの額にあるはずの古傷が、すっかり消えてなくなっていたのでした。
そうです。ベイルは、レボックとの死闘の最後に、お互いの体と意識を交換させることに成功していたのです。今いるレボックは、体はレボックですが意識はベイルであり、黒焦げの死体は、体はベイルですが意識はレボックだったということです。
考察及び感想
最後の結末は、あまりにも予想外過ぎて衝撃的でした。そして、すべての黒幕がルースだったということも意外でした。
ストーリーはとても良く作り込まれており、まるでミステリー小説を読んでいるかのようでした。次々と明らかになっていく事実に、興奮の連続でした。
ホラー要素としては、頭部の爆発シーン、あと最後の超能力決戦でしょうか?結構グロテスクだったりするので、グロ耐性のない方は注意してください。
「裸のランチ」と比べてわかり易いストーリー展開でした。それにしても、クローネンバーグの映画は、どこかしら普通じゃなく刺激的なので、面白いですね。
今後もどんどん紹介していきたいと思います。
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