作品紹介
製作 | 1996年 |
ジャンル | 人間ドラマ |
監督 | グレゴリー・ホブリット |
キャスト | リチャード・ギア、ローラ・リニー、エドワード・ノートン |
『真実の行方』は、1996年、グレゴリー・ホブリット監督により制作された映画です。
なお、『ファイトクラブ』や『ミニミニ大作戦』などに出演したエドワード・ノートンにとって、この映画が初主演となっています。
この映画の見どころ
この映画の見どころは、誰もが予想だにしないラストのどんでん返しです。
『真実の行方』は裁判モノで、殺人の容疑をかけられた一人の青年を巡り、悪徳弁護士のベイルと敏腕検事のジョーンが法廷で大舌戦を繰り広げるわけですが・・・
ラストの5分。すべてがひっくり返ります。
裁判モノということで、ただでさえ全体的な理論構築が難しいのに、それを破綻させることなくあの結末に繋げることができたのは、見事の一言でしょう。
登場人物
マーティン・ベイル
本作の主人公。かつては検事をやっていたが、弁護士に転身。
金儲けの為なら、どんな悪人であろうが弁護を引き受ける。
アーロンの事件が世間的に注目されていることを知り、売名のために無償で弁護を買って出る。
ジェーン・ベナブル
敏腕女性検事。かつてはマーティンの部下であり、恋人だった。
仕事に私情を挟むことはせず、容赦なく容疑者を追い詰める。
アーロン・スタンプラー
大司教殺人事件の容疑者(犯行は否認)。弱気な性格。
普段は、大司教のもとでミサの手伝いをしたり、聖歌隊として歌を歌ったりしている。
17歳の頃、お金がなく生活に困っていたところで大司教に拾われて面倒を見てもらっている。
それ以来、大司教に恩義を感じている。
一時的に意識を失くす発作を起こすことがあり、その間は自分が何をしていたのかを全く覚えていない。
ラシュマン大司教
教会の大司教。何者かによって殺され、事件の被害者となる。
シカゴ市民からは、人格者として慕われていた。
物乞いをしていた17歳のアーロンに声をかけ、19歳になるまで教会に置いて面倒を見ていた。
ストーリー(細部)
悪徳弁護士マーティン・ベイル
マーティン・ベイルは、どんな悪人でも弁護を引き受けることで有名な腕利きの弁護士だった。
つい先日も、街のゴロツキであるピネロを弁護し、150万ドルの賠償金をふんだくったばかりだ。
ベイルは、新聞記者からの取材を受けていたところ、とあるニュースに目を止める。
ラシュマン大司教が、19歳の青年に殺されるという事件だ。この事件は、大々的に取り上げられ、世間から大きな関心を集めていた。
ベイルは、早速容疑者であるアーロンのもとへと向かう。
弱気な青年アーロン
アーロンは、弱気な青年だった。
彼は、2年前に大司教に拾われたという経緯から、恩義こそ感じることはあれど恨みを抱くようには見えなかった。
アーロンの供述は以下の通りだった。
✓ 部屋では、大司教が血まみれで倒れていて、”誰か”が大司教に覆いかぶさっていた。
✓ その”誰か”は、自分の方に歩いてきた。
✓ 次の瞬間、時が消えた。
アーロンは、幼い頃から一時的に意識を失くす発作を起こすことがあり、その時のことを全く覚えていない。
発作が起こっている時間帯を、”時が消えた”と表現しているのだ。
こうしてベイルは、アーロンの弁護を引き受けることとなった。
一方、検察側はベイルのかつての部下であり恋人でもあったジェーンを担当検事に指名した。
この後の法廷では、ベイルとジェーンの戦いが繰り広げられることとなる。
初の法廷
第1回目の法廷。
第1級殺人罪で告訴するジェーンに対し、第三者による犯行説を訴えるベイル。
ベイルは、大司教が生前海岸宅地開発計画を中止させ、多くの投資家が多額の損失を抱えたらしいたという話を耳にする。
これにより、投資家による犯行を追求しようとするが、ショーネシー検事から露骨に圧力をかけられ頓挫してしまう。
ベイルとジェーンの闘い
現場に残された証拠を基に、正攻法で攻めるジョーン。
それに対しベイルは、第三者による犯行の可能性を追求し、巧みにジョーンの攻めを受け流す。
そんな一進一退の攻防が続いたが、ある日の公判でついに変化が起きる。
犯行時、大司教の胸に刻まれていた『B32.156』という記号と数字。これが、教会の地下書庫にある貸し出し用図書の管理番号と一致していることを、ジョーンら検察側が突き止めたのだった。
これは、当初から謎とされていたものだったが、ベイルら弁護側からすれば完全に検察側に出し抜かれた形だ。
これを機に、ベイルら弁護側の旗色が悪くなる。
アレックスの証言
ベイルは、スラム街の片隅であつてアーロンと同じ聖歌隊に所属していたアレックスという男を捕まえる。
アレックスは、事件後にアーロンの部屋に忍び込み、何かを物色するなど怪しい行動を見せていた男だ。
アレックスの話によると、彼はアーロンの部屋で『セックス・プレー』を録画したビデオを探していたという。
セックス・プレーとは、ラシュマン大司教、アーロン、アレックス、リンダなどによる乱交プレーの映像。
なんとラシュマン大司教は、聖歌隊の青年少女たちにセックスを強要させ、その映像を録画していたのだった。
そして、このセックス・プレーの事実は、アーロンがまだベイルに話したことのないことだった。
第2の人格”ロイ”
ベイルは、アーロンにセックス・プレーのことについて尋ねる。そして、なぜ今まで黙っていたのかと怒りをぶつける。
このセックス・プレーは、アーロンが大司教を殺す十分な動機となりえるからだ。
しかし次の瞬間、弱気な青年だったアーロンの中から、横暴な性格である第二の人格”ロイ”が突然現れる。
ロイは、セックス・プレーが殺人の動機であることと、実際に殺人行為を行ったのはアーロンではなく自分だということを告白する。
そしてロイは、ベイルの前で散々暴れまくった挙句、再びアーロンの人格の陰に隠れてしまった。
なんとアーロンは二重人格者であり、大司教を殺したのもアーロン(人格的にはロイ)本人だったのだ。
ベイルの戦略
セックス・プレーの映像は、アーロンが殺人を犯す動機となるものだったが、陪審員から同情を誘うには格好の証拠だった。
そう考えたベイルは、ジェーンの自宅にセックス・プレーのテープを送り付けるという奇策に出た。
ジェーンからすれば、殺人の決定的な動機は喉から手が出るほど欲しい情報だった。悩みに悩んだ末、ジェーンはベイルの作戦と知ってながらも、そのテープを証拠として提出した。
これにより、陪審員のアーロンを見る目が変わってくることになる。
二重人格の主張
それからベイルは、第三者による犯行説から一転しアーロンが二重人格であることを主張し始める。通常、途中から弁護の主張を変えることはタブーとされているが、ベイルは強引に推し進めた。
判事は何度も注意するが、ベイルはギリギリの線で戦い続ける。
イライラがつのるのはジョーンだった。ジョーンがアーロンにあたる態度は、徐々に厳しいものになっていった。
法廷の乱闘
公判も終盤に差し掛かった時、ジョーンはいつものように厳しくアーロンを問い詰めていた。アーロンの主張を全否定し、あたかも大司教に恨みを持っているかのように仕向けようとした。
しかし、ジョーンの尋問中、アーロンの人格がロイに入れ替わる。アーロンは、追い詰められるとロイに人格が入れ替わるのだった。
ロイは、証人台から飛び出すとジョーンに飛び掛かり、後ろから羽交い絞めにして「この女の首を折る」などと騒ぎ立てる。
法廷内は大混乱に陥る。
結局、ロイは警備員に取り押さえられて事なきを得るが、なんとこの事件で、アーロンの二重人格が判事や陪審員の前で証明されたことになる。
裁判は中止となり、アーロンは精神鑑定にかけられることとなった。裁判は、弁護側のに勝利に終わる。
アーロンの告白
実はベイルは、アーロンはジョーンに責められて、ロイの人格に変身することを計算に入れていたのだった。
裁判終了後、ベイルは独房に入れられているアーロンに面会し、勝利の報告をする。アーロンは、「命の恩人」とベイルに感謝の言葉を贈る。
そして別れ際、アーロンは
「検事に謝っておいてください。首が早く治りますように。」
とベイルに伝える。
しかし、これはどう考えてもおかしい。アーロンは、ロイの人格に入れ替わっているときは意識が無い。つまり、法廷での乱闘劇を覚えているはずがないのだ。
ベイルは、踵を返してアーロンを問い詰めると、不敵な笑みを浮かべるアーロンの口からは驚くべき言葉が返ってきた。
「アーロンなど、初めからいなかった」
そう、これまでのアーロンの人格は、すべてロイによる演技だったのだ。
ロイの演技に騙され、殺人犯を弁護し無罪にしてしまったベイルは、裏口からひっそりと裁判所を後にする。
1分で振り返るストーリーまとめ(忙しい人向け)
忙しい人向けに、本作のストーリーを1分で把握できるようにまとめてみました。
✓ 悪徳弁護士のベイルは、売名のため、無償でアーロンの弁護を買って出る。一方、対峙する検事はかつてのベイルの部下であり恋人でも会ったジョーン。
✓ 正攻法で攻めるジョーンに対し、ベイルは第三者による犯行説を主張。裁判は、一進一退の攻防となる。
✓ 実はアーロンは、二重人格者であることが判明する。弱気な青年の内には、暴力的な性格の”ロイ”という人格が隠れていたのだった。
✓ 裁判中、ジョーンが厳しくアーロンを追求した際、”ロイ”の人格が顔を出す。これにより、アーロンの二重人格が証明され、裁判は中止。弁護側の勝利。
✓ 裁判後、ベイルはアーロンから衝撃の告白を受ける。なんと、アーロンという人格ははじめから存在せず、これまでのアーロンの行動は、すべてロイの演技によるものだった。
興味が湧いた方は、是非ともストーリー(細部)も読んでみてくださいね!!
考察及び感想
陪審員制度について
この映画は、判事が容疑者の判決を下すという日本の司法制度と異なり、陪審員陪審員制度が基本となっています。
陪審員制度とは、一般市民から無作為で選ばれた陪審員の意見が判決を大きく左右するという制度で、基本的には12人の陪審員の意見が全員一致しなければ、判事は判決を下すことはできません。
それゆえ、ベイルはアーロンの同情票を集めに行ったし、ジェーンは陪審員がアーロンのおどおどした態度に絆されないか常に心配していたのです。
隙の無いストーリー構成
実はアーロンは存在せず、普段は陰に隠れた人格と思われていたロイが本体だったという衝撃的などんでん返しで幕を閉じた本作。
私もすっかり騙されてしまいました。
驚くべきは、アーロン/ロイ役を演じたエドワード・ノートンの演技力。実は彼は、この映画がデビュー作でもあるのです。
二重人格を演じるだけでもかなりの演技力を必要とするのに、最後には”二重人格のふりをしていた凶悪犯”を演じるという離れ業をやってのけているのはさすが。
しかも、こういう系の映画は、どんでん返しのヒントとなるシーンが散りばめられていることが多いのですが、何度見返してみても気づけそうなシーンは無し。
いわば、完全犯罪の映画です。
間違いなく、最もラストシーンを予測しづらい映画の一つでしょう。
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