『ビデオドローム』の作品紹介
| 作成 | １９８２年 |
| ジャンル | ホラー |
| 監督 | デイビッド・クローネンバーグ |
| キャスト | ジェームス・ウッズ、デボラ・ハリー、レスリー・カールソン |
やってきました、みんな大好きクローネンバーグ監督の代表作の一つ「ビデオドローム」の登場です。今回の映画も、なかなかのブッ飛び具合、超電波ストーリーとなっていますよ。
「ブッ飛んだ映画」というカテゴリーでくくっていますが、「クローネンバーグ」というカテゴリーにしてもよかったかもしれませんね。
『ビデオドローム』のココがヤバい
今回紹介するこの「ヴィデオドローム」は、ビデオテープが重要な鍵を握ることになります。この「ビデオテープ」という言葉、最近では馴染みが無いので、知らない人のために少し解説します。
ビデオテープとは、弁当箱のような四角い箱のような物で、中にはフィルムが入っており、専用のデッキに入れて再生すると映像と音声をブラウン管に映し出すことができるという物です。
映画などを見るときは、今はDVDやブルーレイが主流ですが、一昔前まではこのビデオテープが主流でした。
そしてこのビデオテープですが、なんと、主人公のお腹の中に入っていっちゃうんです。まるでビデオデッキのように…
もう意味が分からないですよね。いくら映画の世界とはいえ、なぜビデオテープを体内に挿入しようという発想が産まれたのか？
この辺の発想は、まさにクローネンバーグ監督のらしさが発揮できていると言えるでしょう。
また、ストーリー展開も非常に難解。
注意深く見ておかないと、後半は置いてけぼりを喰らいます。
考察及び感想
今回もなかなかのブッ飛び具合。所々にグロテスクなシーンがありますので、過激な描写が苦手な方は視聴に注意が必要です。
ストーリーとしては、最初の方はわかり易いのですが、最後は難解な終わり方をしています。
大きく分けると、
現実世界パート→幻覚パート→現実世界と幻覚の融合パート
の順に進行するのですが、その境界線の判別が明確ではないので、それがストーリーを難解にしている理由の一つと思われます。
マックスは、幻覚を見ているうちに自分の体が変化していった。そして、自分自身がビデオドロームそのものになってしまった。
マックスは、「マックス自身がこの世から消えることで、ビデオドロームが完全に破壊される」と信じて自ら命を絶った、そのように私は感じました。
そもそもこの手の映画は、正解などないのです。「見る人がどう感じるか」が重要であり、見た人の頭に浮かんだものが答えなのです。
今回も、クローネンバーグらしさ全開の映画でしたね！なんとも、玄人が好みそうな映画を作ってくれますね！
『ビデオドローム』のストーリー
「シビックTV」社長のマックス
今回の主人公であるマックスは、小さなTV局「シビックTV」の社長を勤めており、視聴率を稼ぐためより刺激が強くて“ドぎつい映像”を求めていました。
マックスの言う”刺激”とは、過激な暴力、性的描写の事をいいます。
せっかく日本のビジネスマンから入手した映像も、強烈さが足らず、イマイチな結果に・・・
ある日マックスは、友人のハーランから「ものすごい映像がある」との情報を聞きつけ、彼のもとに向かいます。
刺激的映像の発見
ハーランは、電波ジャックの専門家で、世界中のあらゆる電波を盗視聴することができました。なんとか電波ジャックに成功し、その映像をブラウン管に映し出します。
そこには、黒ずくめの男二人が、裸の女性を鞭打つ映像が流れていました。わずか５３秒の短い内容でしたが、マックスは強烈に興味を惹かれることになります。
ビデオドローム
その後ハーランは、「ビデオドローム」と書かれたビデオテープをマックスに渡します。
ハーランは、先ほどの映像の電波発信元がアメリカのピッツバーグであることを掴み、１時間近い映像の盗視聴に成功したらしいのです。
マックスは早速ビデオドロームの内容を確認すると、再び黒ずくめの男ふたりが登場し、黒人の男性をひたすら鞭打つという内容が映し出されます。
「ストーリーはいつ始まるんだ？」マックスは疑問に思いますが、ハーランによると、この映画は特に筋書きがなく、拷問、殺人、手足の切断などが１時間淡々と流れるとのことでした。
「変態のための映画だよ」と、ハーランは言います。
ガールフレンドでドMのニック
その夜マックスは、ガールフレンドのニックを自宅に呼び、共にビデオドロームを見ることになりました。すると、今度はニックが強烈にその映画に惹かれ、「興奮するわ」「私も出演してみたい」とまで言い出します。
ニックは、ピアスを開けながらセッ○スをする「ピアスプレイ」をしたり、タバコの火を自分の胸に押し付けて自ら「根性焼き」をするなど、なかなかドMな性癖を持っているようです。
「バカ言うな」とマックスは言いますが、冗談を言っているとは思えません。
後日、ニックは「ピッツバーグに出張することになった」と、ピッツバーグに旅立つことになります。実は、この出張というのは嘘で、ニックはビデオドロームに出演することが目的なのでした。
マーシャ
マックスは、世界中にビデオ販売のマーケットを持つお得意様のマーシャに、ビデオドロームについての調査を依頼します。
マーシャによる調査の結果、「ビデオドロームは政治的であり危険」「ビデオの中身は、演技ではなくすべて本物」「哲学が入り込んでいる」というのです。
そしてマーシャは、「危険だから、ビデオドロームのことは忘れたほうがいい」、こうマックスに告げます。
しかし、マックスは諦めきれず、情報を聞き出そうと食い下がるります。ついに根負けしたマーシャは、「オブリビアン教授」という言葉だけを言い残すのでした。
オブリビアン教授のもとへ
マックスは、オブリビアン教授を尋ねることにしました。しかし、部屋には教授本人はおらず、代わりに娘のビアンカがいるだけでした。
マックスは、「ビデオドロームについて聞きたい、教授と話をさせてくれ」とお願いしますが、ビアンカは「父は２０年以上誰とも話していないから無理」とした上で、「後ほどビデオで返事をします」と言います。
送られてきたビデオテープ
その夜、教授から一本のビデオテープがマックスのもとに届きます。
マックスはそのビデオをデッキに入れて再生すると、オブリビオン教授が写っていました。
教授は、「私は今、幻覚世界にいる」「ビデオドロームを見ていたら、脳腫瘍が出来た」という話をするのですが、その映像の中で、何者かによってオブリビオン教授は絞め殺されてしまうです。
そして次に、そのオブリビオン教授を殺した者が登場するのですが、そこには、マックスのガールフレンドであり、ピッツバーグに出張に行ったはずのニックが写っていたのです（どういうことだってばよ？）。
余りの突然のできごとに困惑するマックスですが、今度はなんと、ブラウン管のTV本体が、まるで生きて呼吸をしているかのようにボコボコ動き出します（キモッ）。
ニックの唇がドアップで映し出され、「私の中に来て」と呟きます。マックスは、その言葉に誘われるかのように、自分の頭をブラウン管の中に突っ込むのでした（なんだそりゃー？）。
クローネンバーグらしさが光っていますね！さて、この辺から加速度的にブッ飛んできますよ。
ビデオドロームの正体
この不可解な出来事が起こった次の日、マックスはビアンカのところへ行き、ビデオを返しに行きます。そして、「昨日は幻覚（TVに頭を突っ込んだこと）を見たんだ」というを話します。
それを聞いてビアンカは、「その幻覚はビデオドロームのせいだ」と言います。どうもビデオドロームは、見る人に幻覚作用を与えるらしいのです。
マックスは、「オブリビオン教授に会わせてくれ」とお願いしますが、ビアンカの口からは「父は１１か月前に死にました」という答えが返ってきました。ビアンカによると、教授は相棒に裏切られ、ビデオドロームによって殺されたということです。
マックスに、「教授からの返事」と称して送ったビデオも、既にダビングされたものだったのです。
さらにビアンカは、「僕は一体どうなる」と心配するマックスに、「父（ビデオテープ）なら知ってる」と、ビデオドロームを追加で４本貸出しするのでした。
拳銃が腹の中に・・・！
その夜マックスは、TSUTAYAビアンカからから借りてきたビデオドロームを見るのですが、そこでさらなる幻覚に襲われます。
自分のお腹にパックリ穴が空き、まるで口のようにグニャグニャ動くのです。そこでマックスは、何を思ったか今持っている拳銃をその腹の中に入れ込むのです。
腹から手を取り出してみるの、既にその手には拳銃はありませんでした（腹の中に置いてきた？）。
ビリーからの電話
と、ここで突然ビリーと名乗る男から電話がかかってきます。ビリーは、ビデオドロームが持つ力を商用化しようと考えており、そのために、マックスが見る幻覚を分析したいと申し出るのです。
ビリーは、マックスの頭に巨大な幻覚分析機を乗っけると、どこかへ行ってしまいます。
しばらくすると、マックスは例によって幻覚を見ます。今回の内容は、かつてのガールフレンドのニックが登場します。ニックは、「ようやく会えたわね、ビデオドロームで」と言うと、マックスに鞭を渡します。
すると、なぜかニックの姿はブラウン管の中の映像と変わり、マックスは、ニックが映っているTVをひたすら鞭打つという、誰得なのかわからない謎プレイをし始めます。
マックスは、誰得鞭打ちプレイが終わると、今度は自宅のベットで突然目を覚まします。そしてそのベットには、自分の他に誰かが入り込んでいます。
おそるおそるシーツをめくってみると・・・手足が縛られているあのマーシャの死体が残置されていたのでした。
これが幻覚かどうか確かめたい。そう思うマックスは、急遽友人のハーランを自宅に呼び（ちな真夜中）、「今すぐベットにあるものの写真を撮ってくれ」と依頼します（ハーランは半ギレ）。
しかし、ハーランからは「何もない、なんの写真を取ればいいんだ？」と返ってきます。あわててベットを確認するマックスですが、さっきまで確かにあったはずマーシャの死体が煙のように消えていたのです。
混乱するマックスですが、今度はハーランに「昨日録画しているはずのビデオドロームを見せてくれ」とお願いします。
仕組まれていた罠
マックスは、ハーランのラボに行き映像を確かめようとしますが、なんとハーランは突然「ビデオを君に見せるという僕の仕事は終わりだ」と言い出します。
一体なんの話をしているのか？釈然としないマックスですが、ハーランが扉を開けると、今度はビリーが登場します。
なんと、ビリーとハーランは初めから仲間だったのです。そしてハーランは、自分たちの仲間にマックスを引き込もうと、盗視聴した映像と見せかけて、既にダビングされてあるビデオドロームをマックスに見せていたのです。
ビリーとハーランの真の狙いは、ビデオドロームを一般のチャンネルに流して世界中に放送することでした。こうすることで、軟弱な番組を見て内部を腐らせる者を一掃し、強い北米を取り戻せる、そう信じているのです。
ここでマックスは、オブリビアン教授を殺したのはこのビリーだ、と確信します。逃げようとするマックスですが、ビリーはここで「これは君の幻覚の分析テープだ」と、一本のビデオテープを取り出します。
すると、マックスの腹には、以前のようにまた口のような穴が空き、モゴモゴ動き出します。ビリーは、ビデオテープをマックスのお腹の中に押し込むのでした。
そして、ビリーの声がマックスの頭の中に響きます。
「まずは仲間を殺せ」
頭の中の声に従うように、マックスは行動を始めます。自分のお腹の中に手を突っ込み、拳銃を取り出します。しかし、なんとこの拳銃から触手のようなものが生えてきて、マックスの右腕に突き刺ささります。
そして、銃は完全にマックスの右腕と同化してしまうのです。
ここにきてマックスは、自分で見る幻覚の段階を超越し、幻覚が現実化し始めたのです。
殺人鬼と化すマックス
まずは自分の会社である「シビックTV」の重役室へ行き、右腕と同化した銃で重役の二人を撃ち殺します。
その後、頭の中に「ビアンカを殺せ」という指令が下ります。その指令のとおり、今度はビアンカを殺しに行きます。
ビデオドロームの本質
ビアンカのもとへ行き、銃口を突きつけるマックスですが、ビアンカは逃げるドサクサに紛れて、ある映像をマックスに見せます。それは、ガールフレンドでもあるニックが、ビデオドロームによって殺されている映像でした。
映像が流れたあと、今度はブラウン管から銃口のようなものが飛び出してきて、マックスを撃ちます。銃弾はすべてマックスに命中し、倒れ込むマックスですが、ブラウン管から血が流れるだけで、マックスはなんともありません（これも恐らく幻覚です）。
そこでビアンカは、ビデオドロームの本質は「死」であることをマックスに教え、ビデオドロームを破壊するよう教化します。
恋人の死がよほど答えたのか、今度は、マックスはビアンカに完全に教化され、ビリーからの洗脳はここで解かれます。そしてマックスは、ビデオドロームを破壊しに（つまり、ビリーとハーランを殺しに）行くのでした。
ハーラン殺害
マックスは、早速ハーランのもとに向かいます（ハーランは、まだマックスが操られていると思ってる）。
ハーランは、さらに追加のテープをマックスの腹の中に入れようとします。しかし、テープを腹の中に入れたはいいものの、今度は手が抜けません。そして、「ギャー！」という叫び声とともに、ハーランは手を抜きます。
なんとハーランの手は、肉が完全にそげ落ちて、骨だけになっていたのです。さらに、マックスが念じると、ハーランは爆発して死んでしまいます。
マックスは、自分の見る幻覚を、現実世界において武器として使用できるようになってしまったのです。
ビリー殺害
次の目標は、ビリーです。
マックスは、商品説明会に出席するビリーのもとへ向かい、右腕の銃で射殺します。
ビリーは即死ではなく、打たれた銃痕から体が割れて、内蔵や脳みそが飛び出すという悲惨な死に方をします。
結末
ビリーとハーランを殺害したマックスは、全てをやり終えて、廃墟となった船の中に入ります。すると、目の前のTVにニックが映り始め「あなたを導くために戻ってきた」と言います。
マックスは、「自分がどうしていいかわからない」と言うと、ニックは「あなたはやりきったと思っているがそうではない」「ビデオドロームは完全に死んでない」「次の段階にすすむべきだ」と言います。
ここでブラウン管には、別の映像が流れます。そこにはマックス本人が映っていて、右腕と同化した銃を自分のこめかみに当て、「新人間よ、永遠なれ」と言って自殺するのでした。
マックスは、この映像を見終わると、映像と全く同じ手順で銃口を自分のこめかみに当て、「新人間よ、永遠なれ」と言い残し、引き金を引くのでした。
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