【考察】「ブラック・ジャック」の魅力を紹介します。巨匠・手塚治虫の代表作と言ったらコレ!

漫画

作品紹介

連載 1973年~1983年 週刊少年チャンピオン
(全242話 完結)
作者 手塚治虫
ジャンル 医療

ブラック・ジャックは、医療系の漫画の金字塔的な存在であり、巨匠として知られる手塚治虫の代表作ともいわれる、まさにレジェンドの名を欲しいままにした漫画です。

作者である手塚治虫は、一般的には漫画家として知らていますが、実は奈良医科大学で医学博士を取得するほど医学に精通しており、医師の免許も持っているのです。

それゆえに、このような医学に特化した漫画を描くことができたのです。

この漫画のみどころ

この漫画の見どころは、なんといっても作中で繰り広げられる壮大な人間ドラマです。242話もありますので、中には「んー?」と眉をひそめてしまうような話も中にはあります。

しかし、ほとんどが深く成熟されたストーリー構成となっており、読む人の心を震わせます。

基本的には、若者から壮年まで、どの世代でも楽しんで読むことができるのですが、特に20~30代の方で、結婚をして子供が出来たくらいのタイミングで読むと、涙が止まらなくなると思います。

医学漫画というと、主人公が難しい手術や治療を施して、「○○(主人公の名)スゲー!」で終わるという単純なストーリーを想像してしまいがちですが、ブラックジャックは一味違います。

もちろん、困難な手術に挑むという話もありますが、手術に失敗することもありますし、ブラックジャック本人がメスすら握らずに終わるという話もあります。

また、時代背景も古く、スマホや携帯電話はもちろん、ポケベルすら登場しません。

それでも強烈に人を引き付け、時代を超えて広い世代から愛されるこの漫画は、正に手塚治虫のエキスが十二分に詰まった漫画と言えるでしょう。

主な登場人物

ブラック・ジャック

本名は、間黒男(はざまくろお)。幼少の頃、不発弾を踏んで体中がバラバラになるという半死半生の大けがを負う。しかし、本間丈太郎による奇跡の手術により一命を取り留める。

このことがきっかけとなり、医師を志すことになる。

母親は、ブラック・ジャックと同じく不発弾の爆発に巻き込まれ、四肢が欠損し、言葉を話せなくなる。その後、失意のままに死亡した。一方、ブラック・ジャックの父親は、そんな状態の母親(妻)を捨て、他の女と共に外国へ移り住んだ。以来、ブラック・ジャックは父親を恨むようになる。

医者としての腕前は”世界一”と言われており、どんな絶望的な手術であっても、己の腕を信じ、命がけで取り組む。

医師免許を持たず、誰ともつるまず、どの組織にも属さず、一匹狼。

1回に数百万~数億円という法外な手術料を要求するが、依頼者の多くは「ブラック・ジャックならなんとかしてくれる」という厚い信頼を置いており、手術の依頼が絶えることはない。

お金の支払いさえ受ければ、善悪に関係なくどんな手術でも受けるというスタンスを貫いている。

ピノコ

ブラック・ジャックの助手。畸形嚢腫(双子として産まれるはずが、正常な形として産まれず、もう一人の赤ん坊の体内で育つ)として、姉の体内で18年間を過ごし、ブラック・ジャックが手術で摘出した。

摘出された時は、骨格が無く脳や内臓だけの存在だったが、ブラックジャックが足りない部分を合成繊維で繋ぎ

合わせ、ピノコは一人の人間として活動できるようになった。見た目は2~3歳くらいの少女だが、実質は18歳。

ブラック・ジャックに好意を寄せており、自分はブラック・ジャックの妻だと自称している。

一方、ブラック・ジャックはピノコを子ども扱いし、一見して相手にしないように見えるが、『第228話 人生という名のSL』では、「何をしている、おまえ、俺の奥さんじゃないか。それも、最高の妻じゃないか。」という言葉をピノコにかけている。

ブラック・ジャックに鍛えられているだけあって、助手としての腕前は相当なもので、内臓の位置が左右逆の患者を手術する際には、鏡に映し出すことで内臓の位置を反対向き(つまり医者側から見て正常)にするなど、機転が利く。ブラック・ジャックも、ピノコの助手としての働きには全幅の信頼を置いている。

しかし、掃除や料理の腕はからっきしで、6時間かけて焼いたほぼ炭のようなパンを朝食に出したり、食事中に激しくほうきがけしたりなど、花嫁修業が終わるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

本間丈太郎

奇跡的な執刀でブラックジャックの命を救った医師であり、ブラック・ジャックの恩師でもある。

手術の腕前もさることながら、「医者は人を治すわけではなく、治す手伝いをするだけ。治すのは本人の気力。医者が人の生き死にのカギを握るなど、思い上がりも甚だしい」という、哲学にも似た強い信念を持っている。

彼の存在は、ブラック・ジャックが超一流の医師に成長していく過程で欠かせないものとなっている。

キリコ

ブラック・ジャックのライバル

安楽死させることを生業としており、安楽死こそが真に苦しんでいる患者を救う道と信じている。それゆえ、対極の立場を取るブラック・ジャックとはしばしば衝突する。

彼が安楽死にこだわるのは、軍医として働いていた時の経験が大きなきっかけとなっている。

激しい戦闘により体の半分を吹き飛ばされ、それでも死ねずに苦しんでいる兵士達の治療にあたっている時、彼らをおだやかに死なせてやると、皆キリコに心から感謝をして死んでいったという。

しかし、”人を助けたい”という医者としての信条は完全に忘れているわけではなく、第177話 死への1時間では、薬と間違えて安楽死の薬を飲んでしまった患者をブラック・ジャックが救った瞬間、「やった、やった!」と喜びの声を挙げている。

タカシ

ブラック・ジャックが幼少期に体験した大手術の時、唯一皮膚を提供した少年。混血児であり、肌は黒色。

本間丈太郎が、お見舞いに来たブラック・ジャックの同級生に皮膚の提供を呼び掛けたところ、ほとんどの者は「皮膚を剝がされるなんて嫌だ」と言って逃げてしまう。

しかし、タカシだけは「クロオ君からはよく宿題を教えてもらっている」「クロオ君が助かるなら」という理由で、自ら皮膚の提供を申し出た(ブラック・ジャックとは肌の色が違うが、手術は一分一秒を争う事態であり、選別している余裕はなかった)。

この手術により、タカシの皮膚はブラック・ジャックの顔左半分に使用された。

術後、ブラック・ジャックはクロオを命の恩人と感じており、タカシからもらった皮膚を友情の証として大切にしている。ゆえに、意地でも皮膚移植手術を受ない。

ハリ師琵琶丸

盲目のハリ師で、超一流の腕を持つ男。乞食のような風体だが、貧しくて医者にかかれない人たちの家を周り、無料でハリ治療を行っている。

鳥や獣は、例え病気になっても手術をせずに自分の力で治すことから、医者が行う手術を「くだらない」と言い切っている。

馮二斉(ひょうじさい)

一流の刀鍛冶師。山奥に「刺生庵」という店を構えている。

ブラック・ジャックは、自分が使用するメスを研ぎ直すには必ず馮二斉に依頼している。

刃物を見るだけで、一体どれくらいの人を切ってきたのかがわかる。

ブラック・クイーン

一流の腕を持つ女医。これまで手術でミスをしたことは無く、腕は確かだが、患者の手足を躊躇なくズバズバ切断するそのあまりにも冷酷な姿から、冷酷なメスの鬼ブラック・ジャックと比較され、「ブラック・クイーン」と呼ばれている。

ロックという名の恋人がいる。

考察

高額な医療費の理由

この漫画の魅力の一つが、ブラック・ジャックが患者に請求する高額な医療費です。ブラック・ジャックがどのようにして医療費を算定しているかは明確になっていませんが、おそらく”どんぶり勘定”と思われます。

もし、ブラック・ジャックが法外な医療費を請求する医者でなければ、壮大な人間ドラマは生まれず、この漫画が手塚治虫の代表作とならなかったでしょう。

ブラック・ジャックは、相手が金持ちの場合はもちろんのこと、貧乏人に対してでも容赦なく数千万円レベルの高額な医療費を請求します。それゆえ、作中でも「悪魔」「貧乏人からお金を巻き上げいる」などと中傷を受けています。

一見冷酷とも見えるこの高額医療費の請求ですが、これは、決してブラック・ジャックが自身の私利私欲を満たすためだけに要求しているわけではありません。これには作者である手塚治虫からの「命はお金では買えない」という強烈なメッセージととらえることができます。

もし、自分の家族など大切な人が重い病気にかかったとして、”絶対に助かる”という保証をもらえるならば、何億円かかろうが安いものだと私個人的には思います。

作中においても、ブラック・ジャックからどんな高額な医療費を請求されても、”大切な人の命を助けたい”という一心で、「どんなことをしてでも払います」と即答する者たちが多数登場します。そんな心意気に、読者は感動すらします。

実はブラック・ジャックは、お金のない人たちの為にしっかりと救済措置を設けています。自分に被る不利益を顧みず、ただひたすら大切な人の命を救いたい、そのような患者には手術料をバンバン値下げをします。

数千万円の手術代がほぼ無料になることも珍しくはありません。

医師免許を持たない理由

ブラック・ジャックは、腕は超一流ながら医師の免許を持っていません。ゆえに、「モグリの医者」などと揶揄されることも珍しくありません。

医師免許を持たない理由については明らかにされていませんが、作中にいくつかのヒントがちりばめられているので、それらを紹介します。

ルールに縛られることを嫌う

ブラック・ジャックは、組織に属したり、決められたルールに従うということを極端に嫌います。医師免許を取得する、それはつまり日本医師連盟に加盟することを意味し、ブラック・ジャックにとっては苦痛そのものであると容易に想像できます。

また、連盟に加盟すれば、決められた料金を取ることしかできません。第88話 報復においてブラック・ジャックは「私は自分の命をかけて患者を治している、それで治れば一千万でも一億でも安いもん、医師連盟で決められた料金などバカバカしくて相手にしない」とも話しています。

”無免許”という立場の医師が必要?

ブラック・ジャックの基を訪れる依頼者は、善良な市民だけとは限りません。ヤクザやマフィア、亡命した軍人、身分を隠したい芸能人や著名人など、多種多様な患者がブラック・ジャックに手術を依頼します。

ブラック・ジャックが生きている世界は、時には切った張ったが必要となる世界でもあるのです。

そんなまともではない連中を相手にするとなると、医師免許が無いほうが融通が利いたりもするのです。

第160話 白い正義では、一流の病院に勤める若いエリート医師に対し、ブラック・ジャックは「患者はね、いい人間とは限らない。育ちのいい正義の見方には通用しない世界がある。そういう連中のためにも、私のような立場の医者も必要なんだ」と問いています。

痙攣

すべてが完璧と思われるブラック・ジャックですが、実は一つだけ欠点があります。それは、弁状気胸(胸の傷から空気が入って、息ができなくなる病気。その苦しみは、死ぬよりつらいとも言われている。)の手術を行う際は、必ず手が痙攣を起こし、手術の続行が不可能になるということです。

これには理由があり、ブラック・ジャック幼少時の大手術の時、彼自身も弁状気胸の為呼吸困難を引き起こし、死ぬような苦しみを経験していたため、無意識的にその時の苦しみを思い出してしまうからです。

『第71話 けいれん』においても、ブラック・ジャックは手術中に手の痙攣を起こし、周りの医師に対し「これで私がまともに医師の免許を取れないことがわかったろ」とつぶやいています。

火魔人の超絶おススメ回

最後に、ブラック・ジャック全242話のうち、私が特にお勧めしたい話を3つ紹介したいと思います。(ネタバレ注意!)

第74話 なんという舌

サリドマイド児で、産まれながらに短肢症だった少年の話。

少年は、障害を患っていたもののソロバンの天才でした。腕が短いため、健常者のように指でソロバンをはじくことはできませんが、血のにじむような努力の末、体の”ある部分”を使っ

てソロバンの球をはじくことができるようになったのです。

 

 

ブラック・ジャックは、ソロバンをはじく少年の姿を見て、「それは天才じゃない、訓練ですね」と語っています。

しかしその少年は、体の”ある部分”を使ってソロバンをはじく姿を友達に見られるのが恥ずかしく、「もうソロバンをしたくない」と言い始めたのです。

少年の担任の先生は「この才能を埋もれさせるのは惜しい」と思い、ブラック・ジャックに、別の人間の腕をこの少年に付けてもらえるよう依頼するのでした。

 

ブラック・ジャックの手術により新しい腕が付いたこの少年は、再び血のにじむような努力を行い、全国青少年珠算コンクールの決勝戦に出場を果たすまでになりました。

決勝進出を喜ぶ少年でしたが、ブラック・ジャックは「付け替えた腕だと、疲れて決勝を戦い抜くことができない、優勝は無理だ」と断言します。それでも少年は「僕はきっと優勝して見せます」と言って、決勝の舞台へを進みます。

 

決勝戦が始まり、初めは難なく問題をこなしていく少年でしたが、中盤に差し掛かると、疲労のために腕が動かなくなってしまいます。「もうだめだ、優勝は無理だった」そうあきらめかけた少年でしたが、再び闘志を燃やし、今度は自分の”舌”を使ってソロバンをはじきだしたのです。

少年の根性に、会場は大いに盛り上がります。

新しい腕が付く前に使っていた体の”ある部分”とは、実は自分の”舌”だったのです。

 

「舌を使うとはルールー違反ではないか?」実行委員会側は協議を始めます。そこで少年の担任が登場し、この少年は身体障害者だったこと、腕が付く以前は舌でソロバンの練習をしていたことを説明し、決勝戦を最後まで”舌”を使ってやれるよう懇願します。

 

協議が終わると、出題者は「出題四、用意」と決勝戦の進行を続行します。少年は、涙を流して喜びます。

「ねがいましては・・・」というセリフとともに、ブラック・ジャックはそっと会場を後にします。

第148話 落とし物

ごく平凡な三人家族にまつわる話。

母親が重病にかかり、「絶対に治らない」とほとんどの医者がさじを投げてしまい、ブラック・ジャックだけが唯一の希望でした。

しかし、ブラック・ジャックが要求した手術代は3000万円。お父さんさんからすれば、新築の家を売り、家財のほとんどをなげうってもねん出が困難な金額でした。

しかし、「ママの命に比べ

れば惜しくはない」と、すべてを投げ出して3000万円というお金を用意します。

しかし、ブラック・ジャックの家に手術代を届ける途中、お父さんはうっかり駅構内で3000万円の小切手を紛失してしまいます。あわてて捜索しますが、見つけることができませんでした。

 

結局、小切手なしでブラック・ジャックの家を訪れますが、ブラック・ジャックは「金がなければ手術はやらない」の一点張りです。

それでも食い下がるお父さんに、ブラック・ジャックは「他に金を作るあてでもあるのか?」と聞くと、お父さんは「まだある!」と言います。

 

お父さんは、3000万円の代わりに「自分の手足、内臓、皮膚、血管、すべてを好きに使っていい」と力説します。これはつまり、母親の命を助けるためなら、自分は死んでもかまわないという覚悟の表れでした。

この覚悟に胸を打たれたブラック・ジャックは、「臓器をいつでも提供する」という契約書を交わし、母親の手術をするのでした。結果手術は成功し、お父さんと息子は泣いて喜びます。

 

その後ブラック・ジャックは、先ほど交わしたばかりの契約書を車の窓から故意的に投げ捨て、わざとらしく役所に遺失物届の手続きをしにいきます。

すると、役所の奥のほうから「今朝、3000万円の小切手を落とした人がいたが、奇跡的に見つかった」という話が聞こえてきます。

その話を聞き、ブラック・ジャックは「うらやましいですな、その人」とだけ言い残し、役所を後にします。

第13話 ピノコ愛してる

ブラック・ジャックが手術を失敗した、珍しい話。

 

ピノコは朝から料理や掃除に精を出しますが、何をやってもうまくいきません。「自分は18歳」と主張するピノコに対し、世間のことを知らない赤ん坊とからかうブラック・ジャックは、言い争いを始めます。

そして、勢い余ってブラック・ジャックは「またバラバラにして培養液に入れるぞ」と口走ってしまいます。

ここで、ブラック・ジャックの元に急患が運び込まれます。とあるお金持ちの子供がトラックにひかれ、瀕死の重傷を負ったのです。

早速手術をするブラック・ジャックですが、この子供は肝臓が二つともすり潰されていることが判明しました。肝臓は、どちらか一つでも残さなければ、人間は生きていくことはできません。

別の人間の肝臓が必要・・・そう思っていたところ、ピノコが「さっきバラバラにするって言われたから」と言って、肝臓の提供を申し出てきます。しかし、ブラック・ジャックはピノコから臓器を取り出すことはしません。

 

ブラック・ジャックは、すぐそこで待っている両親に対し肝臓の提供を依頼しますが、父親は手術費用ばかり気にして、話が先に進みません。

そうしているうちに、患者は急激に容体が悪化。ピノコは泣きながら「今すぐピノコを殺して体を使って」と懇願しますが、ブラック・ジャックはそんなピノコを横目で見ながら、心臓マッサージを続けます。

 

しかし、ブラック・ジャック必死の処置も空しく、患者は死亡してしまいます。

「ベストは尽くした」そう説明するブラック・ジャックですが、息子の父親は激怒し「俺が手術代を値切ったから適当に手術をした」「人を殺しておいて何がベストだ」「ヤブ医者」などと散々の罵詈雑言を浴びせかけます。

 

余りにもひどい言葉を浴びせてくるので、ピノコはブラック・ジャックに同情しますが、「医者だって神じゃない、人も殺すし悪口も言われるさ」と、割と淡白な様子。

ピノコは「なんでピノコの身体を使わなかったのか?」と問い詰めますが、ブラック・ジャックは「うるさい!」と一掃し、自室に戻るよう指示します。

 

自室に戻ったピノコですが、ブラック・ジャックの様子が気になりだします。

そーっと部屋に入ってみると、悔しさのあまりに暗闇の中で机に突っ伏して唸り声を上げているブラック・ジャックを発見します。

そんなブラック・ジャックの姿を見たピノコは、自室に戻り、「ピノコね、先生愛してる」と言いながら、笑顔で眠りにつくのでした。

 

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