「イレイザーヘッド」の作品紹介
制作 | 1977年 |
ジャンル | サイコホラー |
監督 | デイヴィッド・リンチ |
出演者 | ジャック・ナンス |
きましたー、ぶっ飛んでる映画の中でも「ムカデ人間2」や「王様のランチ」などをも凌駕する程の奇作中の奇作が!
今回紹介するこの『イレイザーヘッド』は、”カルトの帝王”と呼ばれた男、デイヴィッド・リンチが作った超衝撃映画です。
「イレイザーヘッド」のココがヤバい
この映画を一言で表現すると・・・って、とても一言では表現できません(=_=)そのくらい、難解で意味不明な内容なのです。しかも、終始陰鬱な雰囲気でストーリーが進行し、最後も救われたんだか救われなかったんだか、よくわからない結末(多分、救われていない)。
主人公やその他の登場人物も、意味不明な行動を繰り返しまくり、なんだか夢を見ているかのような感覚に陥ります。
この映画を見ている感覚、何かに似ているなーと思っていたら、カフカの著した小説「変身」を読んでいる感覚に似ていることを思い出しました(この小説も、意味不明かつ救いがなさ過ぎてすぎておもろかった)。
でも、一体次はなにが起きるのかが全く想像できないので、ものすごい引き込まれます。先が気になって気になってしょうがなくなり、気が付いたらエンディングを迎えるといった感じでした。
ちなみに、この映画の逸話としては、途中で出てくる奇妙な赤ん坊があまりにもリアルだったので、「牛か羊の胎児を使ったのではないか?」という噂を呼びました。このことに関してリンチは、ひたすらに口を閉ざしているため、真実は未だに解らないとのことです。
「イレイザーヘッド」考察及び感想
この映画は、今までにいろんな考察がされてきましたが、はっきりとしたことは何もわかっていません。そもそも映画とは、見た人がどう感じるかと言う問題であるので、正解などと言うものはないのかもしれません。
しかし、敢えて私自身の考察を加えるえるとすれば、この映画は”父親目線で見た、子育てに対する不安と恐怖”を描いた作品なのではないかと思いました。
実際、このような視点で映画を見てみると、共感できる部分が多数あるのです。
子供を持ったことのある人なら解ると思いますが、自分の子供は世界一可愛いと思う半面、あまりにも泣き止まなかったりする我が子を、時には悪魔のように見えてしまうこともあるのです。
特に、母親が何かしらの理由で不在になり、父親と赤ん坊だけが取り残された状態と言うのは、恐怖と不安でしかありません。仕事や学校であれば、休憩時間と言うものが必ずありますが、子育てにはそれが許されない時があります。
なんといっても、子供の命を守らなければならない責任がありますので、「ちょっと休憩、タバコ吸ってくる」とか「5分だけ待って、コーヒー飲ませて」みたいなことが出来ません。
一番やってはいけないことは育児放棄ですが、「子育てからすべて解放されたらどんなに楽だろうか…」と、子を持つ親ならだれもが考えたことあるはずです。
また、男の場合、性欲処理の問題も出てきます。妊娠中はもちろん妻と関係を持つことが出来ませんが、出産後も、関係が持てない状況がしばらく継続する場合もあります。
そうなった場合、不貞行為に走りたくなる男性が出てきてもおかしくありません。
そのような父親の思いを、リンチは映画にしたのではないでしょうか?
ジャックはヘンリーの気持ちを表した存在であり、ジャックが操作しているレバーは、ヘンリーが抱える「子育てから解放されたい」という想い。
そして、「子供を育てなきゃいけない」「でも苦しみから解放されたい」というヘンリーの葛藤を、ジャックがレバーでコントロールしていたのではないかと考えます。
そしてローレルは、ヘンリーが自分の欲望に負けてしまった場合に行きつく、「禁断の安息地」なのではないかと考えます。
「天国では何もかもいい気持いい」という歌の歌詞、途中ヘンリーが手を握ろうとしたときに消えてしまったローレル、そして赤ん坊を殺した後にローレルに抱きしめられ安堵を表情を浮かべるヘンリーなど、総合的に考えてみるとこのように考えられると思います。
また、ヘンリーが夢で見たアンナとの不貞行為は、育児中の男性の抱える性的欲求を表しているのではないかと考えました。
しかし、途中の鉛筆のシーンなどはどう考えても意味不明で、子育てとはあまり関係が無いように思えます。もしかしたら、壊れていくヘンリーの精神状態を表していたのかもしれません。
というわけで、終始意味不明で、ぶっ飛び具合が最高に楽しい映画でした。
また、文字だけでは伝えきれない部分もあります。全体的にとても陰鬱で、見ているだけで気分が暗くなってしまう映画なので、その独特の雰囲気は実際に映像を見てみないと伝わり切れないでしょう。
とにかく、これは一度見て見て下さい。そして、この映画に込められたメッセージとは何なのかを、ご自身で考えてみるのも一つの楽しみ方なのかもしれません。
「イレイザーヘッド」の登場人物
ヘンリー
本作の主人公。印刷工場に勤めている工員。無口。ボンバヘッ!
部屋には、鉢が無くて土がむき出し状態の植物を栽培するなど、やや変わった美的感覚を持っている。
メアリー
ヘンリーの恋人。ややヒステリックな面があり、精神面で安定しない。
赤ちゃん
四肢が無く、顔はまるで宇宙人のような醜悪な見た目の赤ん坊。
ビル
メアリーの父。配管工を30年程勤めた結果、左腕が痺れて動かない。
メアリーの母
メアリーの母親。精神的に不安定で、作中でも奇行を繰り返す。
アンナ
ヘンリーと同じアパートに住む若くて美しい女性。部屋はヘンリーの真向かい。
ローレル
ヘンリーの夢?妄想?の中に登場する、若い女性。両頬には、醜くい腫物がある。
ジャック
レバーを操る不気味な男。この男は何処に住んでいて何者なんか、そのレバーは何なのかは不明。
「イレイザーヘッド」のストーリー
意味不明な始まり方
映画が始まると、主人公であるヘンリーのドアップが映されますが、そのヘンリーの背景には、石のような惑星のような、表面がボコボコした謎の球体が現れます。
いったいこれは何なのか?全く分かりません。
この球体には、小屋のようなものが立っていて、屋根には穴が開いています。この小屋の中には、体中に腫瘍がある謎の男(ジャック)が住んでいました。ジャックの前には、数本のレバーが置かれています。
ジャックは、ぼーっと窓の外を眺めています。
次に、やや驚いたヘンリーの顔と、その背景にはひも状の謎の生物が映し出されます。
ジャックは、目の前にあるレバーを手前に引きます。すると、先ほどジャックの背景に移っていたひも状の生物は、飛び跳ねるようにどこかへ行ってしまいます。
そしてジャックは、残りのレバーも手前に引いていくのです。
何を書いてあるのかわからないと思いますが、実際こんな感じなのです。意味不明です。
ヘンリー
ヘンリーは、自宅のあるアパートに帰ってきました。このアパートには、エレベーターが完備されているみたいです。古い時代なのに、エレベーターがあるアパートなんて、すごいですね(*_*;
ヘンリーが部屋に入ろうとすると、向かいの部屋の住人であるアンナから、「メアリーが家で一緒にご飯を食べたがっている」という話を聞きます。
ヘンリーは、しばらく部屋でぼーっとした後、引き出しからメアリーの写真(首と胴体部分で破れている状態)を取り出してきておもむろに眺めます。
ちなみにメアリーは、ヘンリーの恋人であると思われます。
メアリー宅
ヘンリーは、メアリー宅へ向かいます。
メアリー宅では、メアリーの母親がヘンリーを待っていました。母親がヘンリーと話そうとすると、突然メアリーが発作を起こし、震えだします。しかし母親は、慣れている様子でメアリーの髪を櫛でとかし、メアリーの気持ちを落ち着かせます。
ここで、メアリーの父親・ビルが登場。ビルは、「今夜のディナーは人工肉のチキンだ」といって、メアリーの母と共に夕食の準備を始めます。
ディナーの用意
ビルは、オーブンにチキンを入れて焼く係、メアリー母はサラダ係です。
ここでメアリー母は、サラダにドレッシングをかけると、台所に座っている全く動かない謎の老女(恐らく祖母)の膝の上にサラダの入った器を置き、老女の両手にスプーンを握らせると、後ろに回り込んで両手をつかみ、一緒にサラダをかき混ぜるという謎の行動を取ります。(この間、老女は全くの無反応)
サラダをかき混ぜ終わると、今度はその老女の口に煙草を加えさせ、火を付けるのです。
ディナーの開始
かくしてディナーは始まりました。
ビルは、自分の左腕が痺れていて使い物にならないので、チキンをナイフで切って取り分けてもらえるよう要求します。
ヘンリーがチキンにナイフの刃を入れると、なぜか調理済みのチキンから血が噴き出し、手足がぴくぴく動き出します。
次の瞬間、メアリー母が急に取り乱し、意味不明な奇声を上げながらどこかへ走り去っていきます。(なにこの意味不明ワールド)
食卓には、ビルとヘンリーだけが残されました(めっちゃ気まずい雰囲気)。食事をしたくても、こんな状況じゃあ食べられませんよ。
メアリー母の詰問
正気を取り戻したメアリー母は、「話があるからちょっとこっち来いや!」とヘンリーを別室に呼び出します。
そこでメアリー母は、「メアリーと寝たのか?(訳:うちの娘とヤッたんかわれ?)」と問いただします。するとヘンリーは、「僕はメアリーを愛しています(訳:はい、ヤりました)」と答えます。
すると、なぜかメアリー母はヘンリーの首筋を吸い付きだします(何この謎行動)。メアリーが現場に来たので、すぐに止めましたが…
もうこの時点で、”この家族ヤバい”って感じがプンプン漂います。
そしてメアリー母は、メアリーに赤ちゃんができていて、今は病院に入院中だという事をヘンリーに告げます。しかしメアリーは「赤ちゃんじゃないかも・・・(?)」
赤ちゃんだけど、赤ちゃんじゃない?どゆこと?
そして、今すぐメアリーと結婚して子供を引き取るよう、メアリー母はヘンリーを問い詰めます。
新婚生活
かくしてヘンリーは、メアリーと結婚し、赤ちゃんと3人で共同生活をする事になりました。
メアリーは赤ちゃんに離乳食を与えていますが…
ん?よく見ると、赤ちゃんは人間の形をしていません。まるで宇宙人のような顔立ちで、四肢が無く、体中を包帯でぐるぐる巻きにされた不気味な生き物がそこにはいました。
メアリーはその生き物にご飯を上げようとしますが、すべて吐き出してしまうので、上手くいかずにイライラが募ります。さらにその生き物は、不気味な声で泣き出すのです。
メアリーが寝ようと思っても、その生き物はずっと不気味な鳴き声を上げています。鳴き声がうるさくていつまでたっても寝付けません。
メアリーはついに我慢の限界を迎え、「一晩くらいあなたが世話をしてよ!」と吐き捨て、部屋を出て実家に帰ってしまいます。
ローレル
メアリーが実家へ帰ってしまったため、ヘンリーが一人でこの生き物の世話をしなければならなくなりました。
すると次の日、なんとこの生き物の顔中に斑点が出来て、苦しそうにうめき声を上げているではありませんか。「病気なのか?」ヘンリーは早速看病をします。
夜、看病に疲れたヘンリーは、一人ベットで休息を取ろうとします。
ヘンリーがウトウトしていると、ここで突然ステージが現れ、両頬に腫物を持った一人の若い女性(ローレル)が登場します。
ローレルは、恥じらいながらもステージ上で左右に身体を揺らしています。そして、ひも状の謎の生物が次から次へとローレルの上から降ってきます。
ローレルは、微笑みを浮かべながら、その謎の生物を一匹ずつ踏みつぶしていくのです。
これがヘンリーの夢なのか何なのか、全くわかりません。カオスです。
不可解な出来事が続く
ヘンリーが目覚めると、隣にはさっき家出したはずのメアリーが寝ていました。
ヘンリーがベットの中を弄ってみると、なんとベットの中から、さっきローレルが踏みつぶしていたひも状の生物が大量に発生するのです。
ヘンリーは、それらの生物を壁に投げつけて殺していきます。
すると今度は、部屋の中にある観音開きの棚の扉が開き、そこから大きな蛆虫のようなものが這い出てくるのです。
アンナとの蜜月
ヘンリーは、疲れたかのようにベットに座っています。そこには、さっきいたはずのメアリーはもういません。
すると、部屋をノックする音が聞こえます。ヘンリーがドアを開けてみると、向かいの部屋に住むアンナが立っていました。
アンナは、「部屋のカギを亡くしたから部屋の中に入れてほしい」とヘンリーにお願いをします。ヘンリーが良いも悪いもいい終わらないうちに、アンナは部屋の中に入ってきて・・・・
そして、男女が二人っきりでやる事と言えば、そうセ○クスです。据え膳喰わぬは男の恥、へんりーさん、大変お疲れ様ですm(_ _)m
ヘンリーとアンナは、ベットの上で抱き合います。すると、なぜかベットの中央部分が球状に凹んでいて、そこにはお風呂のように水が溜まっています。
抱き合ったヘンリーとアンナは、そのまま水の底に沈んでいくのです。
ローレルの歌
次のシーン、先ほどステージ上に登場したローレルが、「天国では何もかもいい気持ち」という歌詞の、気味の悪い歌を歌います。
そのステージに、今度はなぜかヘンリーが上がっていって、ローレルと見つめ合います。
ヘンリーがローレルの手を握り締めると、ローレルは霧のように消えてしまい、ステージにはヘンリーだけが残されます。
するとヘンリーは、ステージに置いてある小道具の一部をくるくる回し始めたかと思うと、次の瞬間には突然ヘンリーの首がボロッと取れて床に転がり、ヘンリーの胴体からはあの”赤ちゃん”の頭がにょきにょき生えてくるのです。
鉛筆
ヘンリーの頭部は、そのまま外に投げ出されます。
地面に転がるヘンリーの頭部を、通りかかった子供が持ち去り、とある建物の中に持ち込みます。
するとそこには、ひげ面でこわもてのおっさんがいて、その子供を奥の部屋に案内するのです。
奥の部屋では、初老の男性がいて、ヘンリーの脳みそ部分にドリルのようなものをあて、そこから細い棒状の何かを取り出すと、それを目の前の機械にセッティングします。
その男性は、機械をスイッチを入れると、機械は自動的に鉛筆を作り出します。そうやって出来上がった鉛筆を試し書きして品質を確かめると、男性は「合格です」と一言。
その言葉をきいたひげ面のおっさんは、子供に報酬金を払います。
・・・えー、ここまで書いてきて、全く意味が解らないと思います。大丈夫です、私も全く分かっていません(何が大丈夫なのか?)。意味を理解しろと言う方が無理だと思います。
アンナの恋人
ここで、ヘンリーが眠りから目覚めます。これまでの意味不明のシーンは、ヘンリーが見た夢だったのでしょうか?
ヘンリーはアンナが気になるらしく、試しにアンナの部屋の扉をノックします。しかし、反応はありません。
ヘンリーは、がっくりとうなだれて部屋に戻ると、あの不気味な赤ん坊は、そんなヘンリーをあざ笑うかのように、不気味な笑い声をあげるのです。
ヘンリーは、寝ようと思うのですが、なかなか寝付けません。すると、向かいの部屋(アンナの部屋)で何か物音がします。ヘンリーは、上着を着るとすぐに部屋を飛び出します。
しかし、そこにはアンナの恋人がいて、アンナと共に部屋の名に入ろうとしているところでした。ヘンリーは、さらにがっかりして自分の部屋に帰ります。
ヘンリーの奇行
部屋に帰ったヘンリーは、はさみを持って赤ん坊のもとへ近寄ります。そして、赤ん坊の胴体に巻かれている包帯をはさみで切っていくのです。
包帯をすべてほどいてみると、そこには、皮膚ではなく赤ん坊の内臓がありました。そしてヘンリーは、なんとその赤ん坊の内臓をはさみで切り刻んでいきます(グロ注意)。
赤ん坊は、口から血を吐いて絶命します。その死体からは、白い泡のようなものが噴き出してきます。
その瞬間、部屋の電気は突然ついたり消えたりをくり返すようになります。そこでヘンリーは、巨大な赤ん坊の頭を目撃するのです。
ラストシーン
そこにはジャックがいて、苦悶の表情を浮かべながらもレバーを操作しています。そのレバーは火花を散らしていて、ジャックは何かを必死に食い止めようとしているかのように見えます。
次の瞬間、あたりは真っ白になります。
そこにはヘンリーが立っていて、ローレルがヘンリーを笑顔で抱きしめます。その時のヘンリーは、今までにないくらいの安らぎの表情を浮かべるのでした。
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