実在の人物を取り扱った映画
制作 | 1980年 |
ジャンル | 人間ドラマ |
監督 | デイヴィッド・リンチ |
キャスト | ジョン・ハート、アンソニー・ポプキンス、ジョン・ギールグッド、アン・バンクロフト |
劇場予告 | https://www.youtube.com/watch?v=_5to0pdKMTQ |
『エレファント・マン』は、プロテウス症候群により極度に体が変形した状態で生まれてきたジョゼフ・メリック氏(1862~1890)の青春を題材とし、鬼才デイヴィット・リンチが映画化したものです。
テーマがテーマなだけに、暗く重苦しい雰囲気で終始ストーリーが進みます(一か所だけ笑うシーンがあります)。それでいて、先が気になって気になってしょうがなくなるというのは、さすがはリンチの手腕といったところでしょうか?
今から150年以上も前のイギリスが舞台となっているので、当時は現在より人権意識が低いことは当然としても、こんなひどい時代があったのか・・・と、考えさせられた映画でした。
なので、私のおふざけコメントはいつもより少ないですが、登場人物とストーリーの紹介をしていきます。
登場人物
ジョン・メリック
プロテウス症候群のため、体全体が異様な形に変形してしまった21歳の青年。頭頂部は平たくひしゃげ、頭部は通常の2倍近くの大きさがあり、顔面は醜くただれ、背中には皮膚を覆い隠すようにコブがある。
右手は全く動かない。まともに喋ることができず、知能も弱いとされている。
サーカス団において、見世物にされている。
醜悪な見た目のため、幼少時から人間扱いをされてず、自己劣等感がかなり強い。
フレデリック・トリーヴス
とある大病院に務める優秀な外科医。
ジョンの数少ない理解者でもある。
”余計な一言”を言ってしまうタイプ。
ケンドール
イギリス演劇界を代表する女優。
バイツ
見世物小屋のボス。酒乱の気がある。暴力的でサディスティック。
ジム
病院の夜警。ジョンを利用して金儲けをしようと企んでいる。
婦長
病院の御局さん的存在。
怖い。
ストーリー
象に襲われる婦人
映画が始まると、まず最初に象に襲われる一人の婦人が映し出されます。
はい、開始早々全く意味がわかりません。
象って、かなり優しい生き物だと聞いていますけど、人間を襲うことなんてあるのでしょうか?一体、どんないたずらをしたら象に襲われるようなシチュエーションになるのでしょうか?
次の瞬間、赤ちゃんの産声が・・・
う、産まれた?
見世物小屋
医師のフレデリックは、街に来た見世物小屋に来ていました。
フレデリックがあたりをフラフラしていると、警察官が「立ち入り禁止」と書かれてある扉を開き、中に入り込んでいく様子を目撃します。
フレデリックは、釣られて中に入っていくと、見世物小屋のボスであるバイツが、警官から「化物を見せるのは、公序良俗に反する」と怒られている場面に出くわすのです。
その後フレデリックは、子供を使い、公序良俗に反するほどの化物とは何かを探らせます。
ちなみに、ここでは重症患者の外科手術シーンが映し出されるのですが、医師看護師含めて誰もマスクや帽子をかぶらず、手術中に普通に人が入ってくるなど、当時はなかなか不衛生な手術室だったんだなぁと思ってしまいましたΣ(゚д゚lll)
異形の化物
フレデリックは、子供からの情報を頼りに、興行師のバイツの元を訪れ、「エレファントマンを見せてくれ」と懇願します。
初めは拒否するバイツですが、フレデリックが多額の料金を払うというと、あっさりと奥へ通してしまいます。
バイツは、「エレファントマンの母親は、出産前、象に襲われた。そのせいで、子供はどんでもない姿で産まれてきた」と説明し、エレファントマンの姿をフレデリックに見せます。
フレデリックは、エレファントマンと呼ばれている男の、余りにも醜悪な見た目に驚愕してしまいます。
そしてフレデリックは、バイツにさらに金を渡し、エレファントマンを自分の所属する病院で診察させて欲しいと持ちかけるのです。
なお、ジョンは特殊メイクのため確かに見た目は醜悪なんですが、目はめっちゃキラキラしてます。恐らく、俳優さんがめっちゃイケメンなんでしょうねぇ。
病院へ入院
翌日、エレファントマンは顔に頭巾を被った状態で、フレデリックの病院を訪れます。フレデリックは、エレファントマンに幾度となく話しかけますが、全く反応が返ってきません。
わかっているのは、名前が「ジョン・メリック」だということくらい。
フレデリックは、会話のキャッチボールができないまま、ジョンの診察を始めることになりました。
実はフレデリックの狙いは、エレファントマンの存在を学会で発表し、自己の経歴に花を添えるということだったのです。
その後フレデリックは、学会においてジョンを登壇させ、大勢の目の前で自身の研究結果を発表すると、会場では大きな拍手が起こります。(しかし、この間ジョンはまるで見世物小屋状態)
しかし、学会での発表が終わりジョンが見世物小屋に帰ると、酒に酔ったバイツがジョンを杖で叩いて虐待するのでした。
後日、ジョンはバイツの虐待が原因で体調を崩し、フレデリックの病院に入院することとなります。
フレデリックは、醜悪な見た目を隠すために頭巾を被り、タクシーで病院へ・・・
って、当時のタクシーは馬車だったんですね!?
フレデリックが、頭巾をかぶった得体の知れない患者をこの病院に入院させた・・・
このことを知った医院長のカーゴムは、こんな変な患者をコソコソ入院させるのかをフレデリックに問いただします。
フレデリックは、ジョンの病気のことを隠しつつも体裁を取り繕うとしますが、隠し通すことは無理と判断し、後日カーゴムにジョンを面会させることを約束します。
カーゴムは、不治の病を患った患者はこの病院にふさわしくないという考えを持っており、ジョンのことをカーゴムに知れると、転院させられる恐れがあったのです。
夜警のジム
ジョンが入院してからほどなく、病院で夜警の仕事をしているジムは、夜の見回りの時に病室でくつろいでいるジョンを発見します。
(こいつ、病院の廊下で普通にタバコを吸っているけど、当時はタバコについてここまで寛容な時代だったのかと驚きました)
そしてジムは、「俺と友達になろう、あんたと会いたがっている人間が大勢いる」と言いながら、何やら怪しい笑顔を浮かべます。
ジムの瞳は、まさに$マークになっていたのです。
猛特訓
フレデリックは、いずれくるカーゴムとの面会に向けて、ジョンに会話のトレーニングをさせます。
といっても、ジョンはほとんど何も喋れませんので、会話は「こんにちは」「私の名前はジョン・メリックです」などの簡単なものばかりですが・・・
時を同じくして、バイツが「ジョンを返してくれ」と病院に押しかけてきます。バイツにとってジョンは、お金を稼ぐための大事なビジネスパートナー(実際は、ただの商売道具としか思っていない)なのです。
フレデリックは、バイツがジョンに暴力を振るっていることを見透かしており、あくまで病院に入院させ続けることを主張します。
胸ぐらをつかみ合うほど両者は激高しますが、カーゴムの助け舟により、バイツは一旦病院を後にします。
さて、次はそのカーゴムとジョンを面会させなければなりません。約束は、次の日の2時。フレデリックは、それまでにジョンの会話のトレーニングを完璧させる必要があります。
フレデリックは、きまりきった会話の定型文をジョンに叩き込みます。
奇跡が起きる
さて、カーゴムとの面会当日。
カーゴムがジョンの病室に入ると、たどたどしいながらもジョンは「お会いできて光栄です」と話し、まずまずの滑り出し。
しかし、会話を続けていくうちにどんどんボロが出てきます。そしてカーゴムは、本当はジョンは会話ができず、ただ訓練した言葉を繰り返しているだけだということを知ってしまいます。
これで転院は免れない・・・
フレデリックが諦めようとした途端、ジョンは急に旧約聖書の詩篇23を暗唱し始めるのです。これは、もちろんフレデリックが教えていないことです。
これには、カーゴムもびっくり。
「なぜ詩篇23を知っている?」とジョンに問うと、ジョンからは驚きの回答が・・・
なんとジョンは、高い知能を有しており、会話も読書も出来ていたのです。
しかし、その醜悪な見た目から人との関わりに恐怖を感じており、わざと会話ができないようなフリをしていたのです。
ジョン、有名人になる
次の日の新聞には、”見た目はびっくりするくらい醜悪だけど、ちゃんと読み書きができますよ”的な趣旨でジョンの記事が掲載されます。
この記事を見て、超有名舞台女優のケンドールは、「この人に一度会ってみたい・・・(恋心)」とつぶやきます(この記事のどの部分を見てそう思ったのか・・・?)。
一方で、ジョンを利用してなんとか設けてやろうと考えているジムも、この新聞記事を読みます。そして、病院の夜警という立場を利用し、仲間から金をとって夜の病院に連れ込み、ジョンを見世物にしようと企むのです。
さっそくその夜から、ジョンの部屋には、ジムとジムの仲間が入れ代わり立ち代わり訪れるようになるのです。
母の愛
常人と同様のコミュニケーションが取れると判明したジョンは、フレデリックとの信頼関係を徐々に構築していき、やがては自宅に招待してもらうような関係性になります。
フレデリックの自宅では、妻のトリーヴス婦人がジョンを迎い入れます。
ここでジョンは、おもむろに自分の母親の写真を取り出し、母親の話を始めます。なんとジョンは、その醜悪な見た目のせいで、既に母親には見捨てられていたのです。
ここでジョンは、「僕が素敵な友達(フレデリック達のこと)と一緒にいることを知れば、こんな僕でも愛してくれるかも知れない」と、つぶやきます。
母親の愛を一切受けることなく、20年以上も虐げられながら生きてきたというジョンの境遇に、トリーヴス婦人は思わず涙するのです。
ここのシーンは、私もウルッときました。母親からの愛を受けていないにも関わらず、それでも母親の写真を大事に持ち歩き、今でも母親からの愛を求めているなんて・・・
なんと健気な人間なのでしょうか・・・(T_T)
ケンドールとの面会
ある日、ジョンの人生に大きな転機が訪れます。
以前、新聞記事でジョンのことを知ったケンドールが、ジョンの基を訪れたのです。
二人はその場で意気投合し、”ロミオとジュリエット”のセリフを言いながらキスを交わします(しょ、初対面で!?)。そして、演劇を見たことがないジョンは、いつの日か演劇を見に行くと誓うのです。
最後にケンドールは、「あなたはエレファントマンなんかじゃない、ロミオよ」と声をかけます。この言葉にジョンは感激し、静かに涙を流します。
大女優のケンドールがジョンに好意を寄せている・・・
このことはたちまち世間に知れ渡り、ジョンはますます有名になります。そして、ジョンが有名になったことにより、フレデリックの病院には、たくさんの患者が訪れるようになりました。
ジョンには連日面会者が訪れるようになります。しかし、誰もが怖いもの見たさ、友達に自慢したいだけという不純な理由によるものでした。
そのことを病院の婦長に指摘され、フレデリックは「私はあのバイツと一緒なのか?」と悩むようになります。
ジョンを入院をどうするか?
後日、病院では幹部が集まり、このままジョンを継続的に入院させるか否かの採決を取ることになりました。
フレデリックとカーゴムは、今後のジョンの生活を考えて賛成派なのですが、反対派も「医者の使命は病気を治すこと」「大切なのはベットの空きだ」と熱く反論(反対派に一理ある気がするが・・・)。
お互い意見を交わしたところで、いよいよ多数決!
というタイミングで、ウェールズの王女・アレクサンドラ妃がこの会議の場に登場!超大物の登場に、会場内は騒然とします。
そしてアレクサンドラ妃は、「ジョン・メリックに対する慈善行為は賞賛に値する、ありがとう」という主旨の内容の、ヴィクトリア女王が書いた手紙を読みあげ、「キリスト教徒にふさわしい決断を」と発言します。
わかりやすく要約すると、「いいかおまえら、ヴィクトリア女王がこう言ってるんやぞ。賛成と反対、どっちに手を上げればいいのか・・・わかってんな?」ということです。
アレクサンドラ妃を呼んだ張本人のカーゴムは、ドヤ顔で採決を開始します。結果は言うまでもなく、全員賛成(権力の力って凄い!)。
ということで、満場一致(?)でジョンは永続的に現病院で暮らすということが決まりました。
エレファントマン見学
その日の夜、ジムはいつもよりも多くの仲間を集めて、エレファントマン見学の準備を始めるのですが、その中には、あのバイツの姿もありました。
バイツは、エレファントマン見学のどさくさに紛れて、ジョンを自分のもとに取り戻そうとしていたのです。
かくして、今夜もエレファントマン見学が開始されるのですが、ジムとその仲間たちは、いつもに増して悪ノリをし始めます。ジムたちは、さんざんジョンを馬鹿にしてからかった挙句、わずかな小銭だけを置いて嵐のように帰っていくのです。
そしてジムたちが帰った後、バイツはおもむろにジョンの部屋に入り、ジョンを連れ去ってしまいます。
次の日の朝、めちゃくちゃに荒らされたジョンの部屋を見て、フレデリックは驚愕します。
フレデリックは、一連の事件の犯人がジムだと知ると、ジムにつかみ掛かって「ジョンはどこだ!?」と大声で問い詰めます。
ジムは、鉄の棒を持ちながら反抗し「誰にも邪魔させない!手ごわいのは婦長だけだ!
」
・・・と、言い終わるや否や、婦長がジムの後ろに忍び寄って、持っていた荷物でジムの頭を一撃!ジムは卒倒します(この映画の中で、唯一言っていいほどのギャグシーン)。
弱っていくジョン
ジョンを取り戻したバイツは、ジョンを使い再びエレファントマンの見せ物を行っていました。しかし、バイツは酒を飲むと、決まってジョンに乱暴を働き、ジョンの体は次第に弱っていきます。
バイツのあまりにもひどい仕打ちを見かねた見世物小屋の仲間たちは、全員で共謀してジョンを外に逃がしてやることにするのです。
そしてジョンは、頭巾をかぶって船に乗船し、見世物小屋から脱出します。
やがてジョンは、汽車に乗ってロンドンの駅に行きつくのですが、子供たちからからかわれているうちに頭巾が外れてしまい、そのあまりにも醜悪な見た目から野次馬が大勢集まってきます。
そこでジョンは、「僕は動物じゃない、人間なんだ!僕はこれでも人間なんだよ!」と叫びます。
ロンドン警察に保護されたジョンは、再びフレデリックの病院のもとに連れ戻されます。その時フレデリックは、ジョンをやさしく抱きしめるのでした。
友情
この頃には、フレデリックとジョンは強固な友情で結ばれていました。フレデリックは、もうジョンを研究対象としてみることは一切なく、ジョンも、今自分が幸せなのはフレデリックのおかげと感謝するようになっていたのです。
そしてフレデリックは、婦長たちと共にジョンを演劇に連れていくことにしました。(あの最恐婦長が、おめかしして貴族みたいになってるー!!!)
生まれて初めて演劇を鑑賞したジョンは、感極まってその場で涙をします。
演劇が終わると、今度はあの大女優・ケンドールが舞台に登壇して挨拶し、「この演劇をジョン・メリックに捧げます」と言うのです。
ジョンは、会場中からの温かい拍手に包まれ、少し戸惑いながらも挨拶をするのです。
悲しすぎるラスト
ジョンは、病院に帰ってからも興奮から覚めることはなく、フレデリックに今日見た演劇がいかに楽しかったのかを語っていました。
フレデリックが自室に戻り、ジョンが部屋で一人きりになると、ジョンは
「これで、全部終わった・・・」
と、意味深な言葉をつぶやきます。
そしてジョンは、ベッドに積み上げられている大量の枕を取り除いてベットに寝そべり、眠りにつくのでした。
考察
最後のシーンですが、実はこれはジョンの”自殺”であると捉えることができます。
実はジョンは、頭が大きすぎるため何の対策もなしにベットに横になって眠ると死んでしまう体質なのです(これは、ストーリー序盤にバイツが発した「ジョンは頭が大きすぎるため、ベットで寝ると死んでしまう」というセリフからわかります)。
なので、病院のベットで寝るときは、頭の位置を上げるために大量の枕を積み上げていたのです。
しかし、ジョンは自ら枕をすべて取り除き、横になって眠ってしまいました。つまり、自ら死を望んだということです。
また、最後の「これで、全部終わった・・・」というセリフから考えてみると、ジョンは以前から死ぬことを考えていたのだということが推測できます。
それなのに、なぜジョンは自ら命を絶つという道を選んだのか?
ジョンは、フレデリックのような友人ができたうえ、大女優であるケンドールに好意にされ、生まれて初めて見た演劇に感動するなど、確実に運気が向上しているように見えました。
そもそもの外見や、これまでに歩んできた苛烈な人生が大きく影響していることは間違いないと思いますが、トリガーとなった出来事はなんだったのか?
ジョンのモデルとなったジョセフ・メリック氏の場合は、ベットで寝たことにより頸椎が脱臼し窒息死しているのですが、事故なのか自殺なのかはっきりしていないようです。
なので、作中ジョンが自殺した理由については、正解というものが無いのかもしれませんね。
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