作品紹介
連載 | 2017年~(連載中)「ビックコミックペリオール」 |
ジャンル | サイコサスペンス |
作者 | 押見修造 |
「血の轍」は、押見修造さんによる処女作で、2017年からビックコミックペリオールにて連載中の漫画です。
「この漫画がすごい2018」、「みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」においてそれぞれ9位にランクインし、注目度の高い漫画として知られています。
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この漫画のみどころ
この漫画の見どころは、想像がつかない狂気のストーリーです。
まずは表紙を見てください。笑顔で映りこむ母親(静子)と赤ちゃん(静一)が描かれていますよね。
一見すれば「幸せな親子によるほのぼの系の漫画なのか?」と思ってしまいがちですが、内容は全く違います。
本作では、ごく普通の中学生・静一とその母親である静子の二人の主人公が中心に描かれていくのですが、この静子という人物がかなりのメンヘラぶりを発揮します。
言ってしまえば、それは静子の”息子に対する愛情”ということなんですが、その愛情の向け方が歪みに歪んでいるのです。
過保護、という簡単な言葉では収まりきらず、ほぼ”狂人”のレベルです。
静子は、作中でも異常と思えるほどの行動を繰り返し、周囲を振り回していきます。
非日常的で狂気じみたストーリー。一度読んでしまったら、先が気になって一気に最後まで読みたくなってしまうという、中毒性が高い漫画といえるでしょう。
また、作者の画力が絶妙に高い。絵がめっちゃ上手いんです。
静一はあどけなさの残るイケメンって感じ。静子は、中学生の息子を持っているとは思えないほど若々しく美人に。静一の同級生の吹石も、とてもかわいらしく書かれています。
そして、顔のしわに至るまで細かく表現しているので、登場人物の抱いている感情が、読み手に直接伝わってきます。
従って、ホラー表現も秀逸。この漫画では、いたるところで恐怖シーンが出てくるのですが、かなり怖いです。
幽霊などの実態のない存在も怖いですが、一番怖いのは人間なのではないか?そう思わせてくれる作品です。
そんな「血の轍」、登場人物とストーリーについて、少しだけ触れていきたいと思います。
登場人物
長部静一
本作の二大主人公のうちの一人。長部家の長男で、ごく普通の男子中学生。
大人しい性格で、どちらかといえば引っ込み思案。
学校の成績は優秀で、通信簿は体育以外すべて「5」。
母・静子の言いなりになっている。友達からは「過保護」とからかわれることが多い。
最近、同級生の吹石のことが気になっている。
3歳の頃に静子と一緒に死んだ猫を撫でた、という思い出があり、このことだけは忘れられない。
長部静子
本作の二大主人公のうちの一人。静一の母。専業主婦で、家事はそつなくこなす。
一見すると、どこの家庭にもいる普通のおかあさんだが、実はとんでもない毒親。
息子・静一に強く依存しており、静一が関わると異常と思えるほどの行動を起こす。
静一が幼稚園の頃、「幼稚園に行きたくない」という静一のために、自身も毎日幼稚園に通い、教室の奥で一日中静一を見守っていた。
しげる
静一の従弟。通称”しげちゃん”。
静一とは大の仲良しで、二人でよく遊ぶ。
吹石由依子
静一の同級生。静一のことが好き。
両親は離婚しており、父親が男で一人で育てている。
父とは仲が悪く、しょっちゅう喧嘩をする。
長部一郎
静一の父。普通の会社員。
家庭を安寧に保とうと必死。
小倉
静一の同級生。
静一のことを気にかけ、学校では積極的に声をかけてくる。
ストーリー(序盤のみ)
長部静一は、どこにでもいる普通の中学生。家庭も円満で、何不自由なく暮らしているかのように見えた。
しかし、長部家には一つ問題があった。それは、静一の母・静子が異常なまでに息子に依存しているということだ。静一の親族や友達は、そんな静子を見て「過保護」と揶揄するほどだった。
とはいえ、静一の生活は順風満帆だった。気になる同級生・吹石から「一緒に帰ろう」と誘われるなど、中学生らしい青春も訪れようとしていた。
しかし、静一のそんなささやかな幸せは、ある日を境に急転直下することとなる。
長部家は、親族一同で登山に出掛けることとなった。そのメンバーの中には、静一の大の仲良しであるしげちゃんもいた。
登山は順調に進行していた。登山に参加したメンバーの間にも、和気あいあいといた空気が漂っていた。
休憩中、しげちゃんは「探検しよう」と言って、親族の輪を離れて静一を連れ出す。
二人が森の中を突き進んでいくと、切り立った崖に行きついた。その崖は、かなり高い場所にあり、そこから見える風景は絶景だった。
しげちゃんは、崖の淵に立ち「はやくこっち来いよ」と静一を誘う。
ここで、突然この場に静子が現れる。静子は、静一の様子が見えなくなったため、周囲を探していたのだった。
そんな静子を見て、しげちゃんは「ばっかじゃねぇん。ほんと過保護だいねぇ。」と言いながら、ふざけて片足で立ってみせる。
そこでしげちゃんはバランスを崩し、崖から落ちそうになる。しかし、静子はすぐに駆け寄って抱きかかえ、しげちゃんを間一髪で救い出す。
しかし、静子の様子がおかしい。しげちゃんの身体を掴んだまま、動こうとしない。
しげちゃんも、静子の顔を見て「おばちゃん・・・?」と呟きながら、訝しげな表情を浮かべる。
次の瞬間、なんと静子は、崖下に向かってしげちゃんを突き飛ばした。しげちゃんは、がけ下に真っ逆さまに落ちていった。
静一は、その一部始終を見ていた。あまりのショックで、静一は動けなかった。
静子は、その場で急に悲鳴を上げ、泣きながら「しげちゃんが落ちちゃったから、みんなを呼んできて」と静一に指示をだす。
その後も静子は、かけつけたしげちゃんの母親に状況の説明を求められても、「しげちゃんが崖の上でふざけていて、落ちてしまった。助けようとしたけど、間に合わなかった。」と、嘘の説明した。
崖から落ちたしげちゃんは、一命はとりとめたものの意識不明の重体。仮に意識が戻っても、障害が残る可能性が高いという。
警察による事情聴取の時も、静子は「しげちゃんが一人で落ちた」と説明した。一部始終を見ていた静一は、「お母さんの言うことで間違いないか」と警察から聞かれるが、「ママの言うとおりです」と答える。
なぜ静子はしげちゃんを突き飛ばしたのか、静一はその理由がわからないでいた。しかも、母親をかばうため、自分は嘘までついてしまっている。
このストレスが原因となり、静一は言葉がどもるようになり、日常生活においてうまく会話ができなくなる。
それから数日が経ったある夜。
静一はついに「なんでしげちゃんを突き飛ばしたの?なんでみんなに嘘を言ったの?」と静子を問い詰める。
すると、静子の口からはとんでもない言葉が返ってきた・・・
今後の展開
なぜ静子はしげちゃんを突き飛したのか?序盤については、この謎が付きまとってくるのですが、後半ではその恐ろしい理由が明らかになってきます。
なお、静子がしげちゃんを突き飛ばしたという事実を知っているのは、静一の他には、意識が戻らないしげちゃん本人です。
静子は”しげちゃんを助けようとしたけど間に合わなかった”ということになっていますが、しげちゃんの意識が戻れば、一気にウソがばれることになります。
その場合、静子は一体どのように振る舞うのでしょうか?
その他にも静一には、吹石とお付き合いすることになったりといろいろなイベントが起こるのですが、その都度静子がメンヘラぶりをいかんなく発揮し、静一はジャイアントスイングばりに振り回され、徐々に人生の歯車が狂っていきます。
さらに、9~11巻あたりではおどろおどろしい描写も増え、作者の秀逸な画力も相まって、サスペンスの域を超えてホラー漫画並みの恐怖を感じることができます。
そして、なぜ静子は静一に対して歪んだ愛情を注ぐようになったのか?その理由も明らかになっていきます。
先が気になった方は、是非とも続きを読んでもらいたいです。
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