作品紹介
制作 | 2003年 |
ジャンル | アニメ |
監督 | 川越淳 |
キャスト | 栗田貫一、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗 |
『ルパン三世 お宝返却大作戦!!』は、2003年、ルパンTVスペシャルシリーズ第15作目として放映されたアニメです。
このアニメのみどころ
本作は、ルパンシリーズ屈指の芸術・文化に特化した芸術回になっています。
まず、ストーリーの鍵を握る重要人物の一人として登場するのが、実在した建築家アントニ・ガウディー。
アントニ・ガウディーは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したスペイン出身の建築家。
ガウディは、「自然の中にこそ最高の形がある」という信念を持ち、生物的な建築を得意としていた。その独創的な建築センスは、後の建築・芸術分野に大きな影響を及ぼした。
代表作には、サクラダファンリア、グエル公園、カサ・ミラなどがあり、それぞれユネスコ世界遺産として登録されている。
そして、本作の主戦場となるのが、スペインはバルセロナにあるサクラダファミリア。
サクラダファミリアは、ガウディによって作られた建築物の一つで、カタルーニャ語では『Sagrada Família』、日本語では『聖家族教会』と呼ばれることがある。
今やスペインを代表する建築物であるが、未だに建設途中となっている。
サクラダファミリアは、1882年、贖罪教会という名目
で建築家フランシスコ・ビリャールにより建築がスタート。以後、当時無名のガウディが引き継ぐこととなる。その後もガウディは、1926年に没するまでサクラダファミリアの建築に注力することとなる。
ガウディの死後も、色々な建築家たちによって建築が引き継がれており、2026年には完成する予定となっている。
・1700年代の世界初カフェポッド
・映画『007 ムーンレイカー』で使用されたゴンドラ
・フランスのキャバレー『ムーランルージュ』の衣装3着
・中東の王族がドイツのディーラーに特別注文したカスタムカー
・人魚姫の像
『真実の口』は、イタリアはローマのサンタ・マリア・イン・コスメディン教会に飾られている石の彫刻品。
ギリシア神話に登場する海神オケアノスの顔を象ったとされており、心に偽りのある者が口の中に手を入れると、手を嚙み切られると言われている。
映画『ローマの休日』で、ジョーがアン王女を驚かせようとして、本当に手が噛み切られたかのように演技をするシ
ーンはあまりにも有名。
イタリアのベネチアには、『カフェ・フローリアン』という店があり、「世界最古のカフェ」と言われている。アニメに登場するのは、この店で1700年代に使用されていたカフェポッド。
300年以上経った今でも経営中で、サンドイッチやコーヒーなどをリーズナブルな値段で嗜むことができる。
カフェ・ラテの発祥地としても有名。
映画『007 ムーンレイカー』は、1955年、ショーン・コネリーが主演を務める世界的人気作品007シリーズの第3作目として放映された映画。
英国諜報員であるジェームス・ポンドが、自国に向けられている核弾頭ミサイル「ムーンレイカー」の発射を阻止しようとするストーリー。
途中、カーチェイスならぬゴンドラチェイスのシーンがあり、このアニメのゴンドラはそのシーンに使用されている。
『ムーラン・ルージュ』は、フランスはパリにあるキャバレーで、1889年に創業して以来現在も営業である。
フランスの伝統芸である『フランスカンカン』を楽しむことができる。
このアニメで登場する衣装は、この店で初期に使用された
衣装。
かつて、中東の王族がドイツの某有名メーカーに発注したものの、その王族が殺されたことにより納車されることが無かった幻のカスタムカー
最高時速は約320km。
『人魚姫の像』は、1913年、彫刻家エドヴァルド・エリクセンにより制作された銅像で、デンマークはコペンハーゲンのランゲルニエ埠頭に設置されている。同都市のシンボル的存在。
アンデルセン童話『人魚姫』に登場する人魚を象ったとされており、顔は作成当時バレエダンサーを務めてたエレン・プリース、体はエドヴァルの妻エリーナがモデル。
しかし、なぜエヴァドルは妻のエリーナを身体だけのモデルとし、顔のモデルとして抜擢しなかったのか?きっと、深掘りしてはいけない大人の事情があるのだろう…
このように、世界的に有名な建築物や芸術作品がズラリ。まるでヨーロッパ旅行に行ったかのような気分に浸れます。
また、個人的には悪役のラッツが大好き。ただの小悪党かと思っていたら、最後の最後で意外な一面を見ることができます。
そんなこんなで、みどころ盛りだくさんの作品となっています。
登場人物
アニタ
本作のゲストヒロイン。
12歳の時、両親は交通事故で死亡。以後、母親の知り合いのマークから援助を受けながら生活してきた。
建築家を目指していたが、「(建築が)攻撃的でない」という芸術家にしか理解できない理由で会社をクビになる。
それ以来、建築家としての自信を失っていたが…
ゲストヒロインとしてはあまりストーリーに絡んでこないため、存在感は薄い。
マーク・ウィリアムズ
怪盗。ルパンの先輩にあたる。本作が始まる前にはすでに死亡しており、ビデオレターのみの登場となるも、大きな存在感を示している。
本人曰く、お宝や女を幾度となくルパンと取り合ったが、すべてマークが勝っていたという。
昔、好意を寄せていた女性がいたが、その女性が結婚してしまったためあきらめざるを得なくなった。その女性こそが、アニタの母親である。
イワン・クロコビッチ(ラッツ)
本作最大の敵で、グルジアマフィアのボス。
『ラッツ』とは愛称で、ネズミのようにせこい手を使って稼ぐという理由でこのように呼ばれている。
常にクールを気取り、ビジネスを最優先に考えている。言葉遣いもキザったらしい。
ミーシャやトカレフなど、優秀な殺し屋を多く雇っている。
特にミーシャは、”ただの弾避け”と言って邪険に扱っているが、二人きりの時などはキスを交わすなど複雑な関係。
ロシアでカジノを経営するも、ルパンに侵入されて大金を失う。以後、ミーシャにルパンを殺すよう指示を出す。
ミーシャ
ラッツに雇われている殺し屋。個人的には、アニタよりもゲストヒロインっぽい。
使用する古風な銃『モーゼルM712』は、祖父の遺品でもある。
殺し屋という立場でありながらラッツに惚れており、引っ叩かれたりナイフを突きつけられたりと散々な目に遭っているが、それでもキスを求めるなど積極的。
仕事を行う時は、スコルフ、ミルコの2人を加えた3人でチームを組む。3人で仕事に失敗したことはほとんど無い。
トカレフ
ラッツに雇われた殺し屋だが、ラッツの身の回りの世話をする執事的な仕事もこなす。
見た目は老人だが、身のこなしは鋭く、銃の腕もかなりのもの。体術も駆使する。
使用する武器は『マカロフ』と『デザートイーグル』。
ストーリー(細部)
序盤
ルパンは、峰不二子の仲介のもと、今は亡き泥棒の大先輩であるマーク・ウィリアムのビデオレターを見る。
そこには、マーク本人が盗んできたお宝をもとの場所に返却すれば、財宝”トリックダイヤ”の隠し場所をルパンに教えるというメッセージがあった。
トリックダイヤとは、19世紀に活躍した建築家アントニ・ガウディーが、バルセロナにあるサクラダファミリアの塔の天辺に埋め込んだとされているお宝だ。
トリックダイヤは、現在進行形で狙っている財宝なだけに、ルパンはそれを承諾する。
返却する財宝は、
・真実の口
・1700年代の世界初カフェポッド
・映画『007 ムーンレイカー』で使用されたゴンドラ
・フランスのキャバレー『ムーランルージュ』の衣装3着
・中東の王族がドイツのディーラーに特別注文したカスタムカー
・人魚姫の像
この6点だ。しかも、一週間以内という期限付き。早速、ルパンによるお宝大作戦が始められる。
実は、不二子にはある目論見があった。ルパンにトリックダイヤを手に入れさせた後、高値で売りさばいてしまおうというものだ。
商売相手は、『ラッツ』の愛称で知られるグルジアマフィアのドン、イワン・クロコビッチ。
しかも、ルパンは以前ラッツが経営するカジノから大金を盗んだことにより、ラッツが擁する殺し屋ミーシャに命を狙われていたのだ。
中盤
ルパンの作戦は順調に進んでいくが、殺し屋ミーシャや銭形警部の邪魔が入る。なんとルパンは、銭形に3度も逮捕される(3回とも脱出、もはや捕まえることに意味はあるのか?)。
さらに、ミーシャとの戦いで五エ門が負傷。その五エ門を助け出そうとして、今度は次元がミーシャたちに掴まってしまう。
ルパン一味は、それぞれが別行動を強いられることとなる。
一方、ルパンがすべてのお宝の返却したことを受けて、不二子は故マークの顧問弁護士からブラックダイヤの隠し場所が書き記されているUSBメモリを受け取ろうとしていた。
しかし、一人のエージェントがその場を襲い、USBメモリを奪い去ってしまう。
そのエージェントの正体は、ラッツの部下トカレフ。
トカレフは、ラッツの前でUSB内のデータを再生する。そこには、生前に撮影されたマークの映像(本来であればルパンが見るべきはずだった映像)が映っていて、「6月25日にサクラダファミリアの左端の塔の天辺にトリックダイヤを埋め込めば、とんでもないお宝が出てくる」というメッセージが込められていた。
ラッツは、ブラックダイヤを手に入れるため、ルパンとの接触を試みる。
その頃、負傷した五エ門は、建築家を目指す女性アニタの家に匿われていた。そして、偶然にもルパンはアニタの家を訪れていた。マークからの隠しメッセージにより、トリックダイヤはアニタという女性が持っているという情報を聞きつけてきたのだ。
アニタは、生前マークが懇意にしていた女性で、アニタの両親が事故で亡くなって以来、ずっとマークが援助をしていたのだった。
ルパンは、アニタが持つぬいぐるみの中から、ついにトリックダイヤを手に入れる。
ルパンは、五エ門とアニタを連れてスペインのへと向かう。
終盤
不二子は、トリックダイヤを高値で売りさばこうとして失敗。ラッツと他の3つマフィアたちを団結させてしまう。ラッツたちは、6月25日の夜、サクラダファミリアでルパンを待ち受けてブラックダイヤを奪い取ろうと計画する。
ラッツの部下のミーシャやトカレフも、万全の用意をして待ち構える。
ルパンは、マークの古き友人カルロスにアニタを預けると、五エ門と不二子を連れてサクラダファミリアへと向かい、最後の決戦に挑む(途中、次元も合流)。
そして、次元はトカレフと、五エ門はミーシャと決闘をすることに。
決闘の結果は、辛くも次元と五エ門の勝利。トカレフは死亡し、ミーシャは瀕死の状態に。
ミーシャは、足を引きずりながらラッツの元へと向かう。
一方ルパンとラッツは、トリックダイヤの取り合いを行っていた。
ルパンの撃った銃弾が瀕死のミーシャに向かって飛んでいく。
すると、驚くことにラッツは、ミーシャを庇って自分の背中に銃弾を受けたのだった。ミーシャを”ただの弾避け”であると公言していたラッツだったが、いつの間にかミーシャに対して愛情を感じていたのだった。
ラッツは、死んだミーシャを抱えたまま、ガウディの財宝が見られないことを嘆きつつ、塔から落ちて絶命する。
ラストシーン
ルパンは、ついにトリックダイヤをサクラダファミリアの塔の天辺に設置する。
すると、バルセロナの町中に突然音楽が流れ出す。
そして、トリックダイヤの中に閉じ込められていた光が一斉に飛び出し、イルミネーションにより作り出された巨大な塔が現れる。
ガウディは、建設途中だったこのサクラダファミリアに、夢にまで見た完成予想図をこのトリックダイヤの中に託したのだった。
建築家として自信を失いかけていたアニタは、この光の塔を見て感動し、一から設計を勉強しなおす決意をする。
1分で振り返るストーリーまとめ(忙しい人向け)
忙しい人向けに、本作のストーリーを1分で把握できるようにまとめてみました。
✔ これによりルパンは、マークが盗んだ6つの宝を7日以内に返却することとなった。
✔ 一方、ルパンと同じくトリックダイヤを狙っていたのがグルジアマフィアのラッツ。
✔ マークからの隠しメッセージを見たルパンは、アニタのもとを訪れ、トリックダイヤを手に入れる。
✔ ルパン一味は、ダイヤを持ってバルセロナにあるサクラダファミリアへ。塔の天辺にダイヤをはめ込めば、とんでもないお宝が出てくるらしい。
✔ ラッツはルパンからダイヤを奪い取ろうとするが、部下である殺し屋ミーシャを庇って死亡。
✔ ルパンがダイヤを塔の天辺にはめ込んでみると、光のイルミネーションにより建設途中だったサクラダファミリアの完成予想図が立体的に浮かび上がる。この奇跡的な光景を見て、アニタは自信を取り戻す。
興味が湧いた方は、是非ともストーリー(細部)も読んでみてくださいね!!
考察及び感想
過去イチでかっちょいい悪役ラッツ
今回の悪役であるラッツ。前半から中盤にかけては”いかにも小悪党”って雰囲気が漂っていたにに、最後にミーシャを庇うシーンでかなり男をあげましたね!あのシーンはかなりかっこよかった。
直前までミーシャを軽く扱っていたのに…いざとなったら行動に出すタイプの男だったんですね。
最後良ければ全て良し。こうなると、これまでのラッツの言動がすべてかっこよく見えてきちゃいます。
ミーシャがラッツを「小悪党を気取っている」と貶すシーンがありましたが、きっとラッツは、根が純情なのでしょう。マフィアのドンを張っているということで、悪党になろうと無理をしていたのではないでしょうか?
ルパンシリーズに登場する悪党は、どう贔屓目に見ても救いようのない悪党が多数登場してきたのですが、ラッツは例外。敵ながらあっぱれ!
次元がリボルバーに拘る理由
次元の使用している銃は、『S&W M19 コンバット・マグナム』というリボルバー式の銃。
リボルバーということで、最大装填数は6発。この点は、ルパンから「オートマチックにしろ!」と指摘されたり、トカレフからも「6発しか打てないんじゃ扱いずらかろう」とからかわれていました。
それでも次元がリボルバーに拘る理由。それは、個人的にリボルバーが好きという感覚的な部分もあるかもしれませんが、一番大きいのは、オートマチックよりジャム(弾詰まり)が起こりずらいというところ。これが、本作のなかで明らかになっています。
次元はトカレフと決闘の際、やたらめったら周囲の木材を撃ちまくります。すると、木くずが周囲に舞い散ります。
なんとその木くずがトカレフの銃に入り込み、ジャミングを起こさせたのです。これにより、リボルバーを使っていた次元が勝利。
私は、元自衛官ということでゲップが出るくらい銃を撃ってきました。私が撃っていた銃は、『ミネベア』という日本の企業が作ったオートマチックの銃です。
個体差はありますが、オートマチックはジャミングが起こりやすいというのは実感しています。マガジンに弾を込めるときも相当気を付けないと、やはり全弾消費する前にジャミングしてしまうんですね。
そこに拘りを持つ次元は、さすが世界一のガンマンと言えるでしょう。
目釘を湿す(めくぎをしめす)
五エ門とミーシャの一騎打ちの時、五エ門は斬鉄剣の柄部分を舌でペロッと舐めます。それを見たミーシャが「舌で目釘を湿す…少しは私の腕を認めてくれたのね」というセリフを言うシーンがあります。
剣の柄部分を湿らせる行為、これは、実は時代劇などを見ているとよく出てくるんです。
日本刀は、『目釘』と言われる部品で刃部分と柄部分の連結を固定しています。
この目釘を湿らせることにより、連結部分がより強化され、剣のすっぽ抜けなどを防止するという効果があるようです。
これ以外にも、日本刀が由来となる諺として『切羽詰まる』『寝刃(ねたば)を合わす』などがあります。
それよりも驚いたのは、極東系の生まれであるはずのミーシャがよくぞ『目釘を湿らす』という言葉と意味を知っていたなということ。
そもそも極東の方では、日本は大人気の国だそうですね。きっとミーシャも、日本が大好きだったのでしょう。
ということは…リアルSAMURAIの五エ門を見たミーシャとしては、サインを貰いたいくらい舞い上がったに違いありません。
それでも、そんな感情を押し殺し、非情に徹して戦わなければならないというのは、殺し屋とはなんとも悲しいお仕事ですね…
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