【考察】「千年女優」(ネタバレ)現実と空想と過去と未来がごちゃまぜになる不思議なアニメ

アニメ

作品紹介

制作 2001年
ジャンル アニメ
監督 今敏
キャスト 荘司美代子小山茉美折笠富美子飯塚昭三津田匠子

created by Rinker
バンダイビジュアル
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『千年女優』は、2001年、今敏監督の「PERFECT BLUE」に続く自身2作目の長編アニメとして放映された作品です。

このアニメは、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』と共に、第5回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門を受賞しております。

このアニメのみどころ

このアニメのみどころは、摩訶不思議な今敏ワールドです。

今敏監督と言えば、このブログでもかなりの高評価作品として取り上げている『パーフェクト・ブルー』『東京ゴッドファーザーズ』

を手掛けてた天才アニメーター。

稀代の大女優・藤原千代子が、自身の歩んできた女優としての人生、そして、一途に思い続けてきた初恋の男性との思い出を語る…という、ストーリーとしてはごく単純なものなのですが、そこはさすがの天才・今敏監督。

あまりの今敏ワールド全開っぷりに、開始から5分で画面にくぎ付けになることでしょう。

現実と空想、過去と未来がまるでスクランブルエッグのようにごちゃまぜになっていて、ちょっと油断すると「????!」となってしまいます。

戦国時代から近未来まで、時系列は目まぐるしく移り変わり、息つく暇もありません。

しかし、そんな忙しないストーリー展開でありつつも、最後には不思議と辻褄が合っていくんですよね。この辺の取り回しはさすがとしかいいようがありません。

 

クスっと笑えるシーン、腕組みをして考え込んでしまうシーン、ウルっとするしーんなど、あらゆる要素が詰まったこの作品。アニメーションも繊細に作りこまれており、ストーリー面でもヴィジュアル面でも楽しむことができる良作です。

登場人物

藤原 千代子

映画製作会社『銀映』に所属していた元女優。戦前の生まれで、現在は70歳を過ぎ。しかし、高齢者になってもその美貌はいまだ健在

(←は若かりし頃)。

庭に植えたハーブをハーブティーにして飲むのが趣味。

女学生の頃に出会った絵描きの男に一目惚れし、「またいつか会おう」と約束をする。それ以来、絵描きの男を追い続けていた。

立花 源也

映像制作会社『VISUAL STUDIO LOTUS』の社長。情熱的で直情型。

若い頃から千代子のファンで、千恵子が出演する映画をセリフを覚えるまで繰り返し見ている。以前は、千代子と同じ『銀映』に所属していたこともあるが、結局芽が出ずに退社している。

井田 恭二

映像制作会社『VISUAL STUDIO LOTUS』に所属するカメラマン。

社長である立花の感情的立ち回りを、どこか冷めた目で見ている。

鍵の男

千代子の初恋の相手でもある、正体不明の絵描きの男。

首から鍵をぶら下げており、本人に言わせればこの鍵は「一番大事な箱を開けるための鍵」らしい。

細部は一切不明だが、憲兵に追われているところを見ると反戦的思想家のようだ。

大滝 諄一

「銀映」の専務の甥っ子。後に映画監督まで出世する。

狡猾な性格で、千代子を妻にするためにとんでもない手段を使うことに。

島尾 詠子

「銀映」の看板女優だったが、千代子が「銀映」に入ってからはセンターポジションを奪われ、千代子に強い嫉妬心を抱くようになる。頬に傷がある男

頬に傷のある男

憲兵。絵描きの男を追っている。

いやらしい性格。

ストーリー(細部)

取材

映像制作会社『VISUAL STUDIO LOTUS』の社長立花とカメラマンの井田は、今は隠居生活を送っている元大女優・藤原千代子の取材に向かっていた。

千代子の所属する映画会社『銀映』の創立70周年を記念し、その発展を支えた女優千代子のドキュメンタリー映像を作成しようとしていたのだ。

立花は興奮していた。なぜなら立花は、若い頃から千代子の大ファンだったからだ。それと、立花には取材の他に、もう一つの狙いがあった。

 

千代子の家に訪れた立花は、千代子に小さな箱を渡す。その箱の中には、古びた鍵が入っていた。

その鍵を感慨深い顔で見つめていた千代子は、自身の過去について語りだす。

千代子の生誕~女学生時代

時は数十年前に遡る。

千代子は、関東大震災と同時に産まれた。父親は自身で亡くなり、母親の手で育てられていた。

千代子が女学生の時、映画会社『銀映』のスカウトが千代子の家を訪れる。「女優にならないか」と持ち掛けるが、千代子の母親が大反対…

というシーンなのだが、なんとそこには、まるでタイムスリップしたかのようにスーツの立花とカメラを持った井田の姿があった。

(千代子の過去シーンは、このまま立花と井田を巻き込みながら進んでいく)

 

母に女優の道を反対されややふてくされて道を歩いていた千代子は、憲兵(頬に傷のある男)に追われていた男を助け、自宅に匿った。

その男は、絵描きだった。まだ未完成の絵を持っていて、いつか故郷に帰ってこの絵を完成させるのが夢なのだという。そして男の首には、”一番大切なものを開けるための鍵”がぶら下がっていた。

千代子は、この男に一目惚れをしてしまったのだ。

 

しかし次の日、千代子の留守中に憲兵が千代子の家に踏み込んだ。絵描きの男はなんとか脱出するが、汽車でどこかへ行ってしまう。後には、男が落としていった鍵だけが残された。

千代子は、「いつか必ず会いに行く」と、走りゆく汽車に向かって叫ぶ。

 

…というシーンを見て、立花はこれまでに53回泣いたらしい。

(え?いったいいつから映画の話になったの?)

満州

これまで千代子が話していたのは、千代子のデビュー作『君を慕いて』の内容の話だったようだ。

そして千代子の次作の舞台は満州!

時代は再び数十年前に遡り、若い千代子共に立花、井田がタイムスリップする。

 

千代子は、先輩女優の島尾詠子と共に満州で撮影を行っていた。千代子は、鍵の男を追って満州へ来たという設定だ。しかし千代子は、鍵の男が気になって撮影に集中できない。

千代子は、島尾の勧めで”よく当たる”と噂の占い師に鍵の男の居場所を聞いた。するとその占い師は、「鍵の男は北にいる」という。

千代子は、撮影をほっぽり出して北へと向かう(立花と井田も同行)。

 

しかし、千代子が汽車で北に向かっている途中、なんと馬賊に襲われる。

千代子は、その場を脱出しようと必死に汽車の扉を開けると…、なんとそこには戦国時代の日本の風景が広がっていた。

そして千代子は、いつの間にか日本の姫の姿をしていた。

戦国時代~幕末

ここでは、どうやら千代子がいる国が攻められていて、夫である殿は既に切腹しているようだ(これも、千代子が出演した過去の映画のシーン)。

悲観した千代子は自殺しようとするが、ここで謎の老婆が現れ、千代子に一杯の茶を勧める。千代子は、勧められるがままにその茶を飲んでしまう。

その瞬間、老婆は高笑い。どうも千代子が飲んだ茶には、飲んだ者に一生恋に身を焼かれる運命を背負わせてしまう効果があったようだ。

なんとここで立花が、千代子回想シーンの登場人物となって参入。千代子を連れて国を脱出する。

(しかし、これはあくまで千代子の回想シーン)

 

そして次のシーン。千代子はくノ一になっていた。そして、千代子を助けるために登場したのが、座頭市っぽくなった立花(笑)

立花の助太刀によりその場を抜け出した千代子は、今度は京都の舞子(幕末)。

しかし千代子は、どの時代にいてもあの鍵の男を探していた。

 

そして千代子は、ついに鍵の男と再会する。

千代子は感激し、あの時に拾った鍵を返そうとするが、新選組(頬に傷のある男)に追われていた鍵の男は「いつか約束の場所で」と言い残し、その場を逃げ去ってしまう。

明治~昭和

次に、千代子は明治の女学生になっていた。そして千代子は、未だに鍵の男を探していた。

しかし鍵の男は、憲兵(頬に傷のある男)に掴まってしまう。千代子は鍵の男の後を追いかけるが、扉を開けた先は大東亜戦争中の日本。アメリカ爆撃機からの空襲を受け、非難をしている真っ最中だった。

空襲後、瓦礫と化した町を眺めて呆然とする千代子だが、なんと近くの瓦礫から、「いつかきっと」というメッセージと共に壁に描かれた千代子の人物画を発見する。

この絵は、鍵の男が描いたに違いなかった。

千代子はこの絵を見て微笑むが、次の瞬間、その場に倒れてしまう。

 

そう、ここまで過去を語っていた千代子が、体調不良のため倒れてしまったのだ。

千代子は、この後も自分の過去を話し続ける。

千代子の結婚

千代子は、映画の舞台に立ち続けていた。きっとどこかで、鍵の男が自分の映画を見てくれていると信じていたのだ。しかし、一向にその男は現れない。

 

そしてとある撮影の日、千代子は大切にしていた鍵を現場で失くしてしまう。千代子とはタッフと一緒になって必至に探すが、結局は見つからなかった。

鍵を失くし、心にぽっかりと穴が開いてしまった千代子は、かねてより言い寄られていた「銀映」の監督である大滝との結婚を決意する。

 

結婚して数年が経過。家を掃除していた千代子は、大滝の本棚から信じられないものを発見する。それが、あの撮影の日に失くしたはずの鍵だったのだ。

そう、あの鍵の紛失事件は、大滝が千代子を手に入れるために企んだ茶番劇だったのだ。

ショックを受ける千代子。

 

そんな千代子に、突然頬に傷のある男が訪ねてくる。この男は、憲兵として非道の限りを尽くしていたが、戦争で負傷し片目と片足を失っていた。

今は傷痍軍人として、かつての非道を謝罪するために旅をしているという。

男は、鍵の男から預かっていたという手紙を千代子に渡す。

その手紙には、あの時匿ってくれた千代子に礼を申し述べる言葉と共に、「北海道に帰る」という文が書かれていた。

千代子は、この手紙を読むとすぐに汽車に飛び乗り、北海道へと向かう。

ついに宇宙へ

大雪の中、果てしない大地の先に進んでいく千代子。するといつの間にか、千代子は宇宙服を着て月を上を歩いていた。

すると千代子は、ついにキャンバスを見つける。このキャンバスは、鍵の男が残していったに違いなかった。

そのキャンバスには、雪の中、背を向けて奥へ歩いていく男の絵が描かれていた。その男こそ、鍵の男だった。

しかし、絵の中の男は、千代子の方に一瞬振り向くとそのまま消えてしまうのだった。

千代子はその場で泣き崩れてしまうが、すぐさま立ち上がり、どこまでも会いに行くことを決意する。

 

次のシーン、千代子はスペースシャトルに乗って飛び立つ場面。

ここで、突然地震が発生して現場は大騒ぎ。逃げ遅れた千代子を、当時まだ若かった立花が助ける。

しかし、「恋に身を焼く定め」という老婆の不気味な言葉を思い返してしまった千代子は、その場を逃げ出してしまい、銀映には二度と戻らなかった。

そして、この時千代子が落とした鍵を立花が拾い、今になって千代子に返しに来たということなのだ。

千代子の最期

ここまで語ってきた千代子は、ついにその場に倒れこむ。そのまま病院に運ばれ、入院することとなる。

ここで立花は、かつて頬に傷のある男が告白した言葉を思い出す。

「私が殺した」

そう、鍵の男は、頬に傷のある男によって拷問され、既に死亡していたのだった。千代子は、すでにこの世にいない男性をずっと追いかけていたということだ。

 

千代子は、自分の最期を悟ると、立花に微笑みかける。そして、鍵を握りしめながら「再びあの人を追いかける」と語り掛ける。

立花は泣きながら、「今度こそ会えますね」と言うと、千代子は、

「どっちでもいいのかもしれない、だって私…」

と言って、目を閉じる。

ラストシーン

宇宙船に乗り込んだ千代子は、鍵の男を追って、決して帰らぬ旅に出る。

宇宙船の中で千代子は、こう呟く。

「…だって私、あの人を追いかけている私が好きなんだもん」

千代子を乗せた宇宙船は、光の彼方へと消えていく。

1分で振り返るストーリーまとめ(忙しい人向け)

忙しい人向けに、本作のストーリーを1分で把握できるようにまとめてみました。

✔ 立花と井田は、かつての大女優である藤原千代子の元にインタビューに訪れ、千代子が昔落とした「鍵」を届ける。鍵を受け取った千代子は、喜んで昔話を語りだす。
✔ 千代子は、女学生時代、偶然会った鍵の男に一目惚れ。それ以来、ずっと鍵の男の後を追っていた。
✔ しかし、途中で「鍵」を失くしてしまった千代子は、妥協して大滝と結婚。
✔ 結婚後しばらくして、失くしていた「鍵」を見つける。なんとその鍵は、大滝がわざと隠していたのだった。千代子は、再び鍵の男を追う。
✔ ここまで語った千代子は、体調を崩して入院。還らぬ人となる。
✔ なんと千代子は、鍵の男を追いかけている自分が好きなだけだった。

興味が湧いた方は、是非ともストーリー(細部)も読んでみてくださいね!!

考察及び感想

まさかの「○○している私が好き」系女子

最後の千代子のセリフに衝撃を受けた方も多いでしょう。

ずっと一途に一人の男を想い続ける、なんともしおらしい乙女なんだろうと思っていたら、まさか千代子が、「○○している私が好き」系女子(老婆?)だったとは!?

彼氏を隣において幸せそうな笑顔を振りまく女子。しかし、その女の子は実は、彼氏が好きなわけではなく誰かに恋をしている自分が好きなだけ。

…などという女子が、ごくたまにいるとかいないとかゴニョゴニョ…(+_+)

要は千代子は、そんな系統の女子だったということ。

 

『RHYMESTEY』というHIP-HOPグループの歌に「君の瞳の中に映る俺に乾杯」という歌があるのですが、それの言葉を借りると、「あなた(鍵の男)の瞳の中に映る私に恋してる」ということでしょうか?(笑)

斬新的なストーリー

それにしても、このアニメはかなり斬新で個性的なストーリー構成をしています。

千代子という女性が、少女の時から死ぬ瞬間までずっと鍵の男を追い続けるということなんですが、その過程の時系列がかなりおもしろい。

まず、

最初の出会いと突然の別れ→昭和初期

老婆に呪いをかけられる→戦国時代

鍵の男と一瞬だけ再会する→幕末

鍵の男が憲兵(頬に傷のある男)に逮捕される→明治

鍵の男が壁に描いた千代子の絵を見つける→戦時中

鍵を失くし、大橋と結婚→昭和中期

鍵を発見し、再び鍵の男を追う→昭和から未来

 

このように、どうがんばっても時系列が合わない。まるで、千代子が1000年間女優をやり続けているかのよう。

さらに、時系列がバラバラなうえに、現実世界と映画の世界を行ったり来たり。そこに、まるで街角で撮影しているかのような感じで交じりこむ立花と井田。

あまりにもいろいろ混ざり過ぎて、まるで夢を見ているかのような感覚に陥っていきます。

しかし不思議なことに、最後には辻褄が合うんですよね、これが。この辺が今敏監督の狙いであり、このアニメの面白いところ。

呪いをかけた老婆=島尾詠子?

戦国時代、千代子は謎の老婆に呪いをかけられます。この時老婆は、「お前が憎い、憎くてたまらない」と申し述べています。

この老婆は、千代子に看板女優を奪われた島尾詠子なのではないか?と思うわけです。

まず、このアニメにおいて、千代子に恨みを抱く人間は大島以外考えられない。

そして、詠子は「いつまでも若い千代子が羨ましい。こっちは歳をとるだけ、ただの引き立て役」という主旨の恨みをこぼしています。

千代子だけが若く、自分は老いていく…そんな島尾の気持ちが、老婆の姿となって千代子に呪いをかけたのではないか、と推測します。

不可解な行動をとる使用人のばあさん

それにしても、ちょっと怪しい行動をとる千代子の使用人のばあさんが気になります。

といっても、怪しい行動は一瞬です。

体調を崩した千代子に薬を持ってきた時に、怪しい流し目。そして、肖像画を見ながら「あの人に置いた姿を見られるのが嫌だった」と語る千代子を、1~2秒停止してチラ見。

意味が無くてこんな演出はしないと思うんですが、いったいどんな意味があるのか…伏線が見破れない(T_T)

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