【考察】「妄想代理人」(ネタバレ)正体不明の少年が、金属バットで突然人を殴りつける話

アニメ

作品紹介

制作 2004年
ジャンル アニメ
監督 今敏
キャスト 能登麻美子桃井はるこ飯塚昭三関俊彦阪口大助

『妄想代理人』は、2004年、今敏監督が手がけた初のTVアニメシリーズとして放映されたアニメです。

今敏監督の代表作としては、『PERFECT BLUE』『東京ゴッドファーザーズ』などがあります。

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 世界観の紹介

さて、みなさんはご自分の人生において、”追い詰められた”と感じたことはありますか?

借金、人間関係、病気、家族など、人間生きていて悩みの種は尽きません。人間は、その悩みが大きくなって大きくなって、どんどん追い詰められていくんですよね。

そうなったとき、「この現実社会から逃げ出したい」「救われたい」と誰しもが思うはず。

会社に通勤する途中でも、「このまま怪我をすして入院すれば、会社に行かなくて済むなぁ」と考えた人は大勢いるはず(笑)

 

『妄想代理人』こと少年バットは、そのような悩み追い詰められている人たちを救ってくれるありがた~い存在。

え?一体どうやって救ってくれるのかって?そりゃあもちろん、金属バットで殴りつけることによって…(笑)

 

作中で少年バットは、〆切、借金、いじめなどなど様々な理由で追い詰められている人たちを片っ端から金属バットで殴り倒していきます。

そして少年バットに殴られた人たちは、大怪我を負うことによって色々なプレッシャーを免除されていくのです。

 

このようにして、苦しんでいる人々を次々と救済していく正体不明の通り魔少年バット。

一見すると正義の味方にも見えるこの少年の行動に、「本当にそれでいいのか?」と疑問を投げかける人たちがいます。

しかし、エスカレートしていく彼の行動は、やがて日本社会を混乱の渦へと導いていくのです。

 

少年バットの正体は?そして、彼の目的は何なのか?

そして驚くべきことに、癒し系キャラクターの「マロミ」と少年バットは深い相関関係があったのです。

天才・今敏監督が手掛けたサイコサスペンスアニメーション。

登場人物

少年バット

本作の主人公(というか悪役?)。年齢、性別共に不明。

人間のような恰好をしているが実体は無く、突然現れては霧のように消えてしまう。

追い詰められている人間のところに現れ、くの字に折れ曲がったバットで強烈な一撃を加えるというまるで”通り魔”のようなことを繰り返し、日本社会を混乱させている。

彼がなぜ人を襲うかについては、分かっていない。

少年バットに襲われた者は、大概は怪我(入院)で済むことが多いが、中には死んでしまう者もいる。

猪狩慶一

少年バットによる通り魔事件の捜査を担当している中年のベテラン刑事。48歳。古風な人間で、仕事には一途な情熱をかけている。

禁煙中だったが、捜査が上手く進まないストレスから再び煙草を吸うようになった。お気に入りは「ショートホープ」。

ベテラン刑事らしく沈着冷静に捜査にあたる一方で、いったん激情すれば、例え相手が子供でも猛烈な勢いで被疑者を追い詰める。

現実主義者で、オカルトは全く信じていない。

病弱の妻がいる。

猪狩美佐江

猪狩慶一の妻。45歳。生まれつき病弱な身体を持つ。猪狩の男気に惚れこんで結婚を決意。

一度、流産を経験している。その後も、出産に身体が耐えられないという理由で子供を授かることは無かった。

心も病んでしまい、雨の日に布団を干したり、一週間前に作った食事を猪狩に提供したりなど、奇行が目立つようになる。

病院に通っているが、身体は全くよくならない。医療費ばかり

がかさみ、家計を圧迫してしまう。そんな自分の存在を「夫の負担になっている」と考えており、死にたい、いなくなりたいと考えるようになった。

馬庭 光弘

猪狩の相棒。29歳。

あらゆる場面で猪狩をフォローする、なかなかデキるヤツ。

実はゲームが大好きで、猪狩と共に中二病全開の孤塚を取り調べた際は、孤塚が話す妄想ファンタジーにノリノリ。挙句の果てに、妄想の登場人物にまでなり下がる始末。

…しかし、仕事はちゃんとする。

誰にも打ち明けていない秘密があるらしいが…

鷺月子

『M&F』に所属するアニメキャラデザイナー。口数が少ない不思議ちゃん。22歳。少年バットに襲われた最初に被害者。

月子が考案した「マロミ」という(なんとも微妙な)キャラクターは、自身が子供の頃に飼っていた犬の名前。

社長からは、次回作に大きな期待をかけられているが、同僚(女性)からは妬まれており、陰口を叩かれるなど職場では孤立している。

周囲から期待とは裏腹に、次回作へのアイディアを閃くことが

できず、精神的に追い詰められていた。

 

常に「マロミ」の人形を持ち歩き、人形の「マロミ」と会話することができる。

眼鏡を取ると何気に可愛い。

少年バットを昔見たことが有るらしい。

川津 明雄

「週刊噂マガジン」のルポライター。37歳。少年バットに襲われた第二の被害者。

腹黒い性格で、人によって態度をコロコロ変える。

通り魔事件の取材のために、第一被害者の鷺月子にしつこく付きまとっていたが、少年バットに襲われて入院することとなる。

交通事故を起こし、被害者の家族から多額の賠償金を請求されており、金策に困っていた。

鯛良 優一

武蔵野南小学校に通う小学生。学年は明らかにされていないが、児童会選挙に立候補するところをみると高学年か?

少年バットに襲われた第四の被害者。

学校へはローラースケートで登校する、マセた少年。

勉強、スポーツなどあらゆる面で秀でており、常に成績は一番であることから付いたあだ名は「イッチー」。

己の才能に自惚れており、基本的に同級生を見下している。

順風満帆に見えた小学校生活だったが、通り魔事件が発生して以来、少年バットと特徴が似ている(野球帽とローラースケート)ことから「少年バットの正体は優一なのではないか?」という噂が広がり、人気者から一転して学校でいじめられることとなる。

そんな落ち目の自分とは対照的に、学校で徐々に人気を獲得する牛山に激しく嫉妬するようになる。

家庭教師は、蝶野晴美。

牛山 尚吾

優一の同級生。虐めがきっかけで、つい最近最近武蔵野南小学校に転入してきた。少年バットに襲われた第三の被害者。

裏表のない良い奴だが、やや気弱で優しすぎる面がある。

カウンセラーの先生に「新しい学校では、何事も積極的に取り組むように」と言われ、児童会選挙に立候補するなど能動的に活動している。

本人は、ただ一生懸命頑張っているだけなのだが、落ち目の優一から逆恨みされるようになる。

蝶野 晴美(マリア)

慈愛大学の研究室で助手を務めながら、鯛良優一の家庭教師もこなす賢女。25歳。少年バットに襲われた第五の被害者。

二重人格の持ち主で、夜になると二人目の人格「マリア」が目覚め、男性に身体を売るホテトル嬢へと変身する。晴美とマリアの二人は、自宅の留守録電話に音声を録音させることで、間接的に口喧嘩を繰り返している。

晴美の方の人格は、研究室の教授である笠秋彦からプロポーズ

され、これから幸せな人生を歩もうとしていたのだが、マリアは晴美だけ幸せになることを許そうとはせず、晴海の邪魔ばかりするようになる。

マリアの妨害に、晴美は心底困り果てていた。

蛭川 雅美

交番に勤務するお巡りさん。猪狩とは、階級は違うが友人同士の間柄。少年バットに襲われた第六の被害者。

警察官でありながらヤクザの組長半田と交流があり、半田にタカって甘い汁を吸い続けてきた。この行動があまりにもエスカレートしたため、大金を支払うよう脅されるようになる。

追い詰められた蛭川は、お金を払うため、犯罪行為に手を染めることに…

妙子は最愛の娘であるが、その愛情はあらぬ方向へと向かっていき、家庭を崩壊させる大きな原因となる。

ホテトル嬢のマリアの常連客でもあり、自分のことを「お父さん」と呼ばせている。なぜ「お父さん」なのか?その理由は、後程明らかになる。

蛭川 妙子

蛭川雅美の一人娘。JK。少年バットに襲われた第七の被害者。

あの蛭川雅美から、何を間違ってこんな可愛い娘が産まれてきたのか?この問題は、このアニメ最大の謎と言われている(いない)。

子供の頃からお父さんが大好きで、小さい頃の夢は「お父さんと結婚すること」。

高校生になってもお父さんが大好きという奇跡的な育ち方をす

るのだが、あることをきっかけに、彼女の甲斐甲斐しい思いはどん底へと突き落とされてしまう。

狐塚 誠

中二病絶賛発症中の中学二年生。自分のことを聖戦士(ゲームの主人公)と思い込んでいる。少年バットに襲われた第八の被害者。他の被害者と異なり、襲われた結果死亡している。

少年バットの模倣犯で、少年バットと同じ格好・同じ手口をもって牛山省吾、蛭川雅美を襲う。

その後の警察の取り調べ(取調官:猪狩)では、なぜ牛山と蛭川を襲ったかと聞かれても、「俺は聖戦士」「世界を守るためにやった」などと意味不明な供述を繰り返し、猪狩を激怒させている。

ストーリー

第1話:少年バット参上

鷺月子は追い詰められていた。彼女が考案したキャラクター「マロミ」が大ヒットしたのは良いが、その次のアイディアが出てこないのだ。

そんな中、能天気な社長は次々と仕事を取ってくる。同僚たちは、手伝ってくれる気配が全くない。締め切りまで、あと少ししかない。

 

その日の仕事終わり、月子はとぼとぼと夜道を歩いていると…なんと、バットを持った謎の少年に突然後ろから襲われ、入院してしまうほどの大怪我を負ってしまう。唐突に月子を失ったアニメーション会社『M&F』は、大混乱に陥る。

そして、警察の取り調べにおいて月子が証言した犯人像とは、くの字に折れ曲がったバットを持ち、野球帽を深くかぶり、金色のローラースケートを履いている小学生くらいの男の子。

少年が通り魔、このニュースは世間を駆け巡った。取り調べを担当した猪狩馬庭は、あまりにも素っ頓狂な月子の証言が、果たして真実なのか狂言なのか掴み切れずにいた。

 

時を同じくして、ルポライターの川津は執拗に月子に付きまとっていた。川津は、今回の事件は月子の自作自演ではないかと疑っていたのだ。なんといっても川津は、人身事故により多額の賠償金を払わなければならず、ホットな時事ネタを掴みたかったのだ。

真夜中になってまで月子を追い回す川津。ここで、なんと少年バットが現れて、後ろから川津の頭に強烈な一撃を食らわす。川津は、重傷を負って入院する。

第2話:金の靴

勉強からスポーツに至るまで超優秀、女子にもモテモテの鯛良優一は、児童会選挙に立候補するなど順風満帆な小学生生活を営んでいた。

しかし、ある日を境に彼の生活は急変する。学校の全生徒が、優一に冷たくあたるようになってしまう。「世間を騒がせている少年バットの正体は実は鯛良優一なのではないか?」という噂が立ったのだ。

そんな落ち目の優一とは対照的に、愛嬌あるキャラクターの牛山は、優一を凌ぐほどの人気者になっていた。

優一は、そんな牛山を逆恨みし、辛くあたるようになる。しかし、超々良い奴の牛山は、優一の嫌がらせを気に留めないどころか逆に優一を庇おうとさえする。

優一は学校でいじめられるようになり、逆に牛山の人気はうなぎのぼり。

「牛山が少年バットにやられればいい、そうすれば俺は児童会選挙に勝てる」優一は、こう思うようになる。

すると、本当に少年バットが現れて、優一の望みを叶えるかのように牛山をバットで殴り倒す。牛山は、重傷を負って入院する。

 

「これじゃまるで俺が犯人じゃないか」優一は追い詰められていた。優一は、なんとしても少年バットにもう一度現れて欲しかった。犯人は自分ではないことを証明したかった。

すると、再び少年バットが優一の前に姿を表す。そして、優一に強烈な一撃を加えていくのだった。

第3話:ダブルリップ

優一の家庭教師を務める蝶野晴美には、裏の顔があった。夜になると、第二の人格「マリア」が目覚め、男に身体を売るホテトル嬢になってしまうのだ。

晴美は、自覚のないところで多数の男性と関係を持ち続けるマリアの存在を疎ましく思っていた。

思い悩む毎日が続く晴美だったが、ある日突然幸せが訪れる。研究室の教授である秋彦からプロポーズを受けたのだった。

晴美は、結婚を気に第二の人格「マリア」と決別することを決意する。マリアの所有物である洋服や小物をすべて捨てたのだ。

しかし、そんな晴美の行動を快く思わないマリアは、反撃に出る。晴美のプライベートの携帯電話番号を『ダブルリップ』(マリアが勤めているデリヘル店)にばらすなど、私生活を徹底的に妨害するのだった。

二重人格であること、そして二人目の人格マリアがホテトル嬢であることが、いつか秋彦にバレるのではないか?晴美は、そんな不安に押しつぶされそうになっていた。

そして、強いストレスを抱えた晴美の精神は限界を迎えることになる。

二人の人格が同時に出現した晴美は、ピエロのようなめちゃくちゃな化粧を施し、フラフラと夜の街をさ迷い歩く。はたから見るとまるで独り芝居をしているかのように見えるが、晴美の頭の中では、マリアと激しく口論をしているところなのだ。

ここで、少年バットが現れ、晴美に強烈な一撃を加える。

 

晴美が目覚めた時は、病院のベットの上。夫の秋彦は、晴美が目覚めて大喜び。そして、マリアの人格はこの事件を機に消滅したのだった。

ここまで少年バットの捜査を続けてきた猪狩の相棒馬庭は、あることに気付く。

「少年バットに襲われた人間は、どこかホッとしているように見える」

第4話:男道

有名アニメクリエイターの鷺月子、その月子を取材中だった川津明雄。児童会役員筆頭候補だった鯛良優一と、そのクラスメイトの牛山尚吾。鯛良優一の家庭教師をしている蝶野晴美…

猪狩と馬庭は、見えそうで見えてこない、被害者同士の微妙な相関関係に頭を悩ませていた。

 

そんな猪狩とは旧友の間柄である蛭川雅美は、しがない交番のお巡りさん。何よりも家庭を大事にする男で、近々家を建てることが決まっている。

ところが蛭川は、警察官という立場を利用してヤクザにたかり、甘い汁を吸い続けるという裏の顔も持つ男だった。蛭川の豪遊は次第にエスカレートしていった。

そして蛭川は、ついに年貢の納め時を迎える。ヤクザに囲まれて、200万円を持ってくるように脅しかけられてしまう。

思い悩んだ蛭川は、資金調達のために強盗を繰り返すようになる。

 

犯罪を重ねる蛭川。しかし、ヤクザからの要求は止まることをしらず、借金はますます膨れ上がる。これ以上強盗を繰り返せば、バレて警察に掴まり、自分の人生が終わってしまうかもしれない…

酔いつぶれた蛭川は、「(自分を)止めてくれ」と叫ぶ。

 

ここで、少年バットが登場。蛭川をバットで殴りつける。

倒れこむ蛭川を見てニヤリと微笑む少年バット。

しかし、蛭川は軽傷だった。蛭川はすかさず反撃し、ついには少年バットを捕まえることに成功する。

 

猪狩と馬庭は、少年バットの取り調べをすることとなった。

第5話:聖戦士(茶番)

警察に捕まった少年バットの正体、それは、中学二年生の狐塚誠だった。

猪狩は、ベテランらしく落ち着いた雰囲気で取り調べを開始するが…

「まだまだ救いを待っている人たちがたくさんいるんだ」狐塚は、奇妙な供述を始める。

「僕は、…ゴーマを倒すために選ばれた、聖戦士だ!!!」完全にイっちゃってるセリフを発したかと思うと、狐塚は、立派な鎧を纏った聖戦士へと変身する。

(取調の途中だが、ここから狐塚の脳内ファンタジーという茶番が始まる。茶番については省略。)

しかし、中二病全開のわけのわからない狐塚の供述を聞いて、馬庭はあることを閃く。この事件の鍵は、第一被害者である鷺月子の事件現場の近くに居合わせていた老婆が握っているのではないか?

第6話:直撃の不安

(この回では、鷺月子と蛭川妙子のシーンが交互しながら進みますが、分かりやすくするため二つに分けています)

鷺月子編

この老婆は、ホームレスだった。そして、猪狩と馬庭が老婆の家(段ボール製)を訪れてみると、なんと鷺月子が持っていたバックが見つかった。鷺月子が少年バットに襲われた時、現場にいたという何よりの証拠だ。

この老婆は、何かを知っている。猪狩が一本の煙草を差し出すと、老婆は信じられない話をする。

「鷺月子が襲われた時、周りには誰もいなかった」

猪狩と馬庭は、再度鷺月子の取り調べをすることにした。

 

取調べをしてみると、月子の供述がどうも歯切れ悪い。ここで猪狩は、老婆から聞いた話を月子にぶつける。

事件当時、追い詰められていた月子は、苦しい状況から脱出したいという思いから、近くにあった鉄の棒で自ら自分の足を傷付けた。これが、事件の真相だったのだ。

この瞬間、月子はまるでバットで殴られたかのようしてに倒れこんでしまう。

蛭川妙子編

一方、女子高生の蛭川妙子は、夜の公園で一人途方に暮れていた。

妙子は、小さい頃からお父さんが大好き。産まれてから今まで、貧しいながらも幸せな月日を過ごしてきた。

しかし、今は家出をして独りぼっち。雨が降る公園で、自分の家のことを「あんな家、なくなってしまえばいい」と呟いている。

妙子は、大好きだった父親のPCの中から、自分の部屋の盗撮映像を見つけてしまった。妙子の父親(後に蛭川雅美であることが判明)は、とんでもない変態野郎だったのだ。

 

妙子は、橋から飛び降りて自殺しようとする。これは、父親に対する復讐するだったのだ。

しかし妙子は、橋の下に広がる川面に、溺れているもう一人の自分を見た。すると、溺れていた自分はいつの間にか老婆(月子の第一発見者)に姿が変わり、さらに老婆は川下へと流されて行ってしまう。

ここで、妙子の携帯に父親から電話がかかってくる。怒りに震える妙子は、「あんたの幸せをすべて壊してやる!」と叫ぶ。

次の瞬間、少年バットがその場に現れ、妙子をバットで殴りつける。

その後、妙子の家は、大雨による土砂崩れの影響で潰れてしまうこととなる。

そして、病院に運び込まれた妙子は、家族の顔をも思い出せない記憶喪失になってしまったのだ。

第7話:MHz

月子は自作自演、その他の被害者は狐塚誠の犯行。猪狩は、今回の事件をこのように片付けようとしていた。

しかし狐塚は、「襲ったのは牛山と蛭川誠だけ」という供述を曲げようとしない。

ここで馬庭は、とあることに気付く。牛山以外の被害者には、例外なく悩みがあった。

「少年バットは狐塚ではない」「少年バットは、困った人間のところに現れる」「一人であって一人ではない」と、自論を猪狩にぶつける馬庭だが、全く相手にしてもらえない。

その夜、「困った人間を見つけることができれば、少年バットとも会えるはず」そう思いつめた馬庭は、猪狩に懇願し、現在留置場にいる狐塚の元へと急ぐ。

すると、なんと留置場の中に少年バットが現れる(すぐに消えてしまう)。さらに、監獄の中では狐塚が死亡している状態で発見された。

狐塚は、自殺として処理された。

 

馬庭は追い詰められていた。少年バットを挙げられないことに、焦りを感じていたのだった。

すると馬庭は、自宅にある怪しい無線室で、突然誰かと交信を始める。

「狐塚は自殺ではない」「少年バットは、まだどこかにいる」

第8話:明るい家族計画

紳士風で白髪の老人「冬蜂」、無口で背が高いゲイの青年「ゼブラ」、まだ年端もいかない天真爛漫少女「かもめ」。この3人は、自殺希望者が集う自殺専用サイトで知り合った。

初対面の3人だったが、自殺をするにはかもめがあまりにも幼かったため、冬蜂とゼブラはかもめを置き去りにして2人だけで自殺をしようと試みる。

しかし、かもめは執拗に2人に付きまとう。かもめは、なんとしても3人一緒に自殺をしたかったのだ。

 

さて、どんな方法で自殺をしようか?と、3人は考える。

練炭自殺、電車へ飛び込み、首つり…

一通り試したものの、どれも上手くいかなかった。

 

とりあえず旅館に泊まることにした3人。話題の中心は、最近世間を賑わせている少年バットに向かう。この3人は、少年バットに殺された人々を、「死ねていいなあ…」と羨望の眼差しで見ているのだ。

 

ここで、旅館の中に少年バットが登場。早速、従業員一人を殺害する。

少年バットを見つけるや否や、3人は「少年バット様!!」と叫けびながら少年バットを追いかける。少年バットは、一度はバットを振りかざしたものの、3人の放つ異様な雰囲気に恐れをなして逃亡する。

 

結局三人は、少年バットに殺されることは叶わなかった。

コンビニの駐車場で談笑する3人。ここで冬蜂は、とんでもないことに気付く。

自分たち3人には、影が無い。さらに、周囲からは自分たち3人は見えていないらしいのだ。

ショックのあまり倒れこむ冬蜂。そんな冬蜂にかもめが駆け寄り、一言。

「ねえ、今度は何して死ぬ?」

第9話:ETC

このマンションの中庭では、4人の主婦が井戸端会議を行っている。

話題はもちろん、少年バット。最近、少年バットによる被害が全国的に急増しているのだ。

浪人中の受験生、嫁をいびりまくっていた姑、闘病中の少女など、主婦たちの話のネタは尽きない。死亡した人間は、やはり皆追い詰められていたのだった。

 

しかし、最近引っ越ししてきたばかりの鴨川は、他の3人の主婦の話に付いていけない。

なんとかしようと創作話まで持ち出すが、すぐに見破られてしまい、逆に罵倒されてしまう始末。

鴨川からすれば、他の主婦たちの注目を浴びるため、なんとしても少年バットの生々しいエピソードが欲しかったのだ。

 

しょぼくれたまま帰宅する鴨川。すると、家の中では夫が血みどろになって倒れていた。

その瞬間、鴨川は満面の笑みを浮かべたまま、「ねえ、どうやってやられたの!?」ともう既に動かなくなった夫に問い続けるのだった。

第10話:マロミまどろみ

大雨の中、制作進行の猿田は車を走らせていた。TVアニメ「マロミまどろみ」の第1話放送用ベーカムを先方に届けに行くところなのだ。

「全世界が俺に期待している」猿田は呟く。

運転をしながらも瞼が重くなっていく猿田は、過去の出来事を思い出していた。

(以下、回想)

「マロミまどろみ」のTVアニメ化が決まったはいいが、制作の進捗は芳しくない。

それもそのはず、制作進行の猿田がミスを連発し、周囲の足を引っ張りまくっていたからだ。しかも、周りが寝ずに作業をこなしているにもかかわらず猿田はソファで昼寝をするなど、仕事に臨む態度も大きな問題があった。

猿田のあまりの反省しなさっぷりに、制作デスクの織田は手を焼いていた。

そんな状況に追い打ちをかけるかのように、製作の主要スタッフの一人が事故によりリタイア。そして、その事故には少年バットが絡んでいたのだった。

その後も、一人また一人と不慮の事故による離脱が相次ぐ。

 

そんな絶望的な状況においても、なんとか第1話用ベーカムは完成する。制作デスクの織田は、早速先方に連絡を取ろうとするが…そんな織田を、猿田は後ろからバットで殴りつける。

猿田は、自分がベーカムを先方に届けることによって、ヒーローになれると信じていたのだった。

(回想終わり)

そんな猿田も、ついには少年バットによって殺害されてしまう。

そして、死体となった猿田の手に握られていたベーカムを、先方のTV局員が持ち去っていくのだった。

第11話:進入禁止

猪狩慶一の妻美佐江は、生まれつき病弱な身体だった。

猪狩と結婚してからも、身体が出産に絶えられないという理由で子供を産めず。さらには、身体の治療のために多額のお金が必要となり、家計を圧迫していた。

肝心の猪狩はというと、少年バットの事件捜査失敗の責任を問われ、警察官をクビになっていた。今は、警備員の仕事で日銭を稼いでいる状態だ。

負い目を感じていた美佐江は、「もう死にたい。いなくなりたい。」と思うようになった。

そんな美佐江のもとに、少年バットは現れたのだ。

 

美佐江を殺す気満々の少年バット。

しかし、美佐江は少年バットに強気に言いつける。「確かに私はあなたを呼んだ。しかし、私は間違っていた。」

美佐江は気付いた。ここで死んでしまっては、美佐江を支えるために身を粉にして働いている主人を裏切ることとなる、と。

猪狩はかつて、「私なんかいなくなったほうがいい」と弱音を吐く美佐江にこう言った。

「二度とそんなことを言うな。おまえはただ逃げようとしているだけだ。現実から逃げてはいけない。その場限りの救いなど、甘やかしに過ぎない。どんなに苦しくても目を背けず、一緒に乗り越えていこう。」

さらに美佐江は、「(少年バットは)その場限りの癒しで人を惑わす『マロミ』と一緒だ」と、核心に迫る言葉を少年バットに突きつける。

この言葉を聞くと、少年バットは美佐江の前から消える。

 

この頃、猪狩は人生に疲れていた。警察官の職を追われ、慣れない警備員の仕事をこなす毎日。

「俺の時代はもう終わったんだ」

この時、猪狩は不思議な世界に迷い込む。そこは、まるで昭和初期の頃の日本の下町。

猪狩は、笑顔でその世界に溶け込んでいった。

第12話:レーダーマン

瘦せこけた体に無精ひげ。背中には無線機を担ぎ、変わり果てた姿で馬庭は少年バットと戦っていた。

まるでゲームの戦士のような恰好をして、手には西洋風の剣。しかしその剣は、何を隠そうただの折れた傘。戦士のような恰好も、ただの赤いボロの服。

馬庭は、既にまともな精神状態ではなかったのだ。

 

馬庭は、少年バットを倒すためのヒントをつかむため、猪狩夫人である美佐江の元を訪れていた。美佐江はここで、馬庭に「少年バットはマロミと同じ」と言い伝える。

馬庭はこの言葉の意味を考えているうちに、動くフィギア人形達と出会う。このフィギア人形達は、馬庭に貴重な情報を与えてくれる。

なんと鷺月子は、小学6年生の時、通り魔に襲われるという被害にあっていたのだった。

少年バットの秘密は、月子の過去にある。そう睨んだ馬庭は、月子の父の話を聞くために、月子の実家へと向かう。ここで馬庭は、少年バットの正体をついに突き止める。

 

この時、月子は少年バットに襲われていた。このピンチに表れたのが、バット(月子の実家で手に入れたもので、馬庭には剣に見えている)持った馬庭。

馬庭は、少年バットと一進一退の攻防を繰り広げるが、少年バットは突然姿を消してしまう。

第13話:最終回

世界は闇に包まれていた。正体不明の黒い塊が出現して、人々を飲み込んでいくのだ。これは、少年バットの力が暴走しているからなのだ。

そして猪狩は、相変わらず昭和の日本をさ迷っていた。そしてこの不思議な世界の中で月子と出会う。「どうだっていいじゃないか…」怒りは自暴自棄になっていた。

ここで猪狩は、妻の美佐江と出会う。美佐江は、つい先ほど病状悪化のため病院に運び込まれ、生死の境をさ迷っていたのだが、美佐江の意識だけが猪狩の世界に入り込んだのだ。

マロミは、必死で美佐江の存在を拒否しようとするが、美佐江の魂は頑としてひかない。

美佐江は、もうすぐ自分が死ぬことを理解していた。そして美佐江は、「わたし、幸せでした」という言葉を猪狩に残し、世界から消えていった。

この時、猪狩は理解する。今いる自分の世界は偽りの世界であり、自分は現実から逃げているだけだと。

 

現実世界に戻った猪狩は、少年バットと戦う馬庭と再会する。馬庭は、少年バットの正体を完全につかんでいた。

鷺月子は小学生の時、自分の不注意により飼い犬マロミのリードを離してしまった。結果、マロミはトラックに轢かれて死んでしまう。

しかし、月子は父親に怒られることを恐れ、バットを持った少年に襲われるという嘘のストーリーをでっち上げた。

この日以来、月子が生み出した妄想的存在として少年バットは誕生したのだった。

 

月子は、マロミが死んだときのことを思い出していた。確かに、リードを離しマロミを死なせたのは自分だった。ここで月子は、マロミの死骸を抱き上げて「ごめんね」と謝った。

この瞬間、少年バットは「さよなら」と言い残して消えていったのだ。

 

この後日本は復旧し、人々は何事も無く日常生活を送るようになった。

ここに、道路に意味不明な計算式を書き続ける白髪の人物がいた。この人物こそ、少年バットと死闘を繰り広げ、廃人と化してしまった馬庭。

計算式の答えを導き出した馬庭は、はっとした表情で顔を上げる。

相関図

考察

少年バットの正体のまとめ

結局少年バットとは、鍵月子の妄想が生み出した怪人。幽霊や妖怪とも違うので、「口裂け女」や「ひきこさん」のような都市伝説的怪人に近い存在だと考えられます。

そして、少年バットの存在意義とはズバリ、現実逃避!逃げ!

いろいろと辛い思いばかりする社会生活において、誰しもが一度は「逃げ出したい」と思ったことはあるでしょう。

少年バットとは、バットで殴り倒すことで悩みを抱えている人間を救ってくれる存在。

しかし、それはただの逃げであり、正面から向き合い戦ってこそが人間であると猪狩美佐江は気付くんですよね。

 

では、少年バットの誕生を時系列的にまとめてみることにしましょう↓

 ✔ 鷺月子は、小さい頃から父親に厳しく育てられていた。従って月子は、父親から叱られることを何よりも恐れていた。
✔ 月子はある日、愛犬のマロミを連れて散歩に出かけた。しかし、月子は突然腹痛に襲われてしまい、マロミのリードを手離してしまう。
✔ マロミはそのまま道路に飛び出し、トラックに轢かれて死んでしまう。
✔ 月子はこの時、マロミの死を悲しむよりも、父親に叱られるかもしれないという恐怖の感情の方が勝っていた。
✔ なんとか誤魔化したい月子は、”バットを持った少年に突然に襲われたことでついリードを離してしまった”という、自分に都合のいい嘘の話をでっち上げる。この時、月子の妄想という形で少年バットが誕生する(しかし、この時はまだいるだけで人を襲ってはいない)。
✔ 十数年後、アニメデザイナーとなった月子は、死んだ愛犬マロミをモチーフにした「マロミ」というキャラクターを考案。日本中で大ヒットする。
✔ 一躍時の人となった月子だが、期待というプレッシャーに押しつぶされそうになり、”通り魔に襲われた”という体にして自作自演の怪我を負い入院。
✔ この事件を皮切りとして、妄想の中だけに留まっていたはずの少年バットが、現実世界に影響を及ぼすようになる。
「少年バット=マロミ」というのは、こういうことだったんですね。マロミの死を少年バットのせいだと思い込んだため、マロミの魂は救われず。マロミの魂が救われなければ、少年バットは永久に存在し続ける。
では、少年バットは一体どんな存在だったのか?
それは、
✔ 少年バットは、月子が現実から逃げたいと思うがあまり産み出されたもの。従って少年バットは、人間を現実逃避させるための存在になった。
✔ 少年バットに襲われた人は、辛い現実世界から逃げ出すことができ、ホッとした表情を浮かべた。
✔ 少年バットは、大人気キャラクターのマロミと同じだった。マロミ人形を抱いた人間は、可愛い見た目から癒されたかのような錯覚に陥るが、実際は何も解決していない。これも、一種の現実逃避。
✔ マロミが日本中で流行ることに比例して、少年バットに襲われる人も増えていった。あの猪狩慶一も、ノスタルジックな世界に逃げ込んでいた。
✔ しかし美佐江は、現実から逃げるのではなく現実と戦うべきだということに気が付く。
✔ 美佐江にはっぱをかけられた猪狩は、現実を向き合うことができるようになった。
続いて、少年バットが消えていった理由。
✔ 月子は、マロミの死を少年バットのせいだとずっと思い込みながら生活していた。
✔ しかし月子は、馬庭から「少年バットとマロミは同じ」と諭される。月子は、バットを持った通り魔の少年など初めから存在せず、マロミの死も自分の過失であることを自覚する。
✔ 月子は、回想世界の中でマロミの死骸を抱き涙を流しながら「ごめんなさい」と語り掛ける。これはつまり、自分の非を認めるとともに、少年バットの存在を完全に否定することなのだ。
✔ 月子が妄想を止めたため、少年バットも存在意義を亡くして消滅する。
それにしても、月子が諸悪の根源だったとは…
全く想像できませんでしたね(;’∀’)

馬庭の無線

馬庭が必死に更新していた無線ですが、相手は一体誰なのでしょうか?

交信相手は明確にされませんでしたが、ただ一つ言えることは、馬庭は異世界と交信していたということです。

第8話で登場する冬蜂たち(幽霊)が蠢くネット世界に書き込みをしたり、猪狩の妄想ワールドに交信したりしています。

馬庭は後半、傘やバットが剣に見えたり、フィギアの人形と会話したりなどまともな精神状態ではありませんでした。彼にはすでに”死の世界”が見えていたのでしょう。

第8話の解説

自殺願望のある冬蜂、ゼブラ、かもめの3人組による1話完結のショートストーリー。

この話はつまり、「実は初めから3人は死んでいた」ということでしょう。

分かりやすいのは、一番最後のシーン。記念撮影をする観光客の写真に写りこもうとした3人ですが、この後、カメラを確認した観光客が悲鳴をあげています。恐らく、心霊写真が撮れてしまったのでしょう。

”3人だけ影が無い”というのも、彼らが既に生者ではないことを示唆しています。イントロで冬蜂が一人で町を歩くシーンをよく見てみると、実はここでも影が無いのです。

次に、線路の飛び込みのシーン。3人が飛び込もうとしていたところ、タイミングよく身を投げるサラリーマンが現れます。

サラリーマンは、俗にいう”マグロ”状態になって死亡。

しかし、この後にゼブラは、死んだはずのサラリーマンが「いててて」と言いながら歩いていくところを目撃しています。これも、この3人は死の世界にいることの証拠と思われます。

さらに、少年バットはこの3人を見たとたん恐れおののいて逃げてしまっています。これも、この3人が既に死んでいたからそこなのでしょう。

ラストシーンの意味とは?

最後、廃人と化した馬庭は、道路に意味不明の計算式を描いている途中にはっとして顔を上げる、という終わり方をしています。

実は、ストーリー序盤から登場していた正体不明のボケ老人も、この時の馬庭と同じくずっと意味不明の計算式を書いていました。しかも、月子のマンションの部屋番号「510」やイッチーを意味する「1」など、少年バットの犯行を予告するかのような答えを導き出していました。

このボケ老人、小塚がファンタジーの世界を全開にさせていた時も、「老子」などと言われてもてはやされていました。

そして最後は馬庭がボケ老人の代わりとなって地面にお絵かき。言ってみれば、馬庭がこのボケ老人の跡を継いだと言えるでしょう。

 

そもそも馬庭が廃人になってしまったのは、少年バットとの戦いの末に精神が崩壊してしまったため。ということは、このボケ老人も若いうちは少年バットと戦っていたのか?

そして、最後馬庭ははっとした表情で顔を上げていますが、これはもしかすると、少年バットが再び現れる予兆なのかもしれません。

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