【考察】「パプリカ」(ネタバレ)不思議な夢の中の世界へ。今敏監督の最後にして最高の作品。

アニメ

作品紹介

制作 2006年
ジャンル アニメ
監督 今敏
キャスト 林原めぐみ江守徹大塚明夫古谷徹堀勝之祐

『パプリカ』は、2006年、今敏監督の4作目となる劇場版アニメの作品であり、国内外問わずに高い評価を得た作品でもあります。

原作は、筒井康隆が記したSF小説『パプリカ』。

4年後、今敏監督は膵臓がんにより死亡したため、この『パプリカ』が最後の作品となりました。

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このアニメのみどころ

このアニメのみどころは、「イマジネーションと現実の融合」という今敏監督の作品テーマが存分に発揮されている点です。

主人公の千葉敦子が、夢の住人「パプリカ」と成り代わって不思議な世界を飛び回り、巨悪と戦っていくというストーリーなのですが…

そもそも形の無い「夢」がメインテーマなだけに、本当に不思議な内容です。西遊記の孫悟空に変身したかと思いきや、人形になったりスフィンクスになったり…空間が歪んでひしゃげたり、大きくなったり小さくなったり。

想像力豊かじゃないと、こんな作品作れないでしょうね。

監督はこれまでに、『東京ゴッドファーザーズ』など4作品をリリースしてきましたが、私が見る限り、『パプリカ』が一番「イマジネーションと現実の融合」っぽい作品と思います。

事実、この『パプリカ』が、監督の作品の中では一番評価の高い作品とされているようです(もちろん、他の作品も面白いですよ!!)。

登場人物

千葉敦子

本作のヒロイン。他人の夢に侵入できるという代物”DCミニ”の美人研究者。常に冷静沈着で、クールビューティー。歯に衣着せぬ物言いで、切れ味良く相手に嫌味を浴びせかける様はまるで妖刀。

研究者である一方で、その正体は、夢の中を自由に駆ける女性「パプリカ」。”DCミニ”を使い、クランケの夢に入り込んで精神的な治療を行うというカウンセラー的な側面も持つ。

一見すると男性に興味はなさそうだが、実は意外な人物に恋をしている。

島寅太郎

”DCミニ”研究所の所長。背が小さい白髪の老人だが、矍鑠としており、本作でも走ったり叫んだりと大立ち回りを見せる。

千葉敦子のよき理解者で、彼女のサポートのためなら労を惜しまない。

粉川利美

刑事。島とは大学時代の同期(とても同い年には見えないのだがそれは…)。

重いトラウマを抱えており、”犯人追跡中に誰かの背中を拳銃で撃つ”という悪夢を繰り返し見てしまうことで悩んでいる。

「パプリカ」による精神的治療を行っている。パプリカに惚れている。

学生時代から映画が好きで、自作映画なども作成していたほどだった。

時田浩作

”DCミニ”の研究所所員。体重300kgはあろうかという巨漢デブ。精神的に幼く、興味があることに関してはものすごい集中力を発揮するものの、それ以外はからっきしというやや発達障害的な側面を持つ。

そんな見た目とは裏腹に、実は自他共に認める大天才で、”DCミニ”を開発したのもこの男。あまりの天才っぷりに、多くの人間が彼に嫉妬している。

普段は軽蔑気味に接している千葉敦子も、時田の才能だけは認めている。

乾精次郎

”DCミニ”研究所の理事長。足が不自由で、常に車いすで生活している。

強大な発言力を持ち、研究所の方針をコントロールすることができる。

哲学的で小難しいことをばかり喋るので、結局何が言いたいのかが分かりづらい。

小山内守雄

”DCミニ”研究所の所員。非常に優秀な研究員で、千葉敦子の良きサポート役。実は好意を寄せているが、敦子には相手にされていない。

敦子が才能を認める天才時田に嫉妬している。

氷室啓

”DCミニ”研究所の所員。時田とは仲の良い友人同士だったが、時田の才能に嫉妬し、逆恨みするようになる。

未発表の”DCミニ”を盗み出し、夢テロを行った張本人。

ストーリー(細部)

序盤

他人の意識下に入ることができるというサイコセラピーマシン。安全性が確保されていないため、公式に使用許可は出ていないものの、精神治療への効果に期待されていた。

千葉敦子は、サイコセラピーマシンを使用して「パプリカ」という女性に成り代わり、患者の夢の中で精神治療を行っていた。もちろん、秘密裏にだ。

トラウマを抱える粉川利美は、サイコセラピーマシン治療の効果に驚いていた。

 

そんな中、”DCミニ”が何者かによって盗まれるという事件が発生した。DCミニは、サイコセラピーマシンを媒介して他人の意識下に侵入することができるという恐ろしい代物だ。

犯人は、いつでも他人の意識に侵入して精神攻撃を仕掛けることができるのだ。

 

千葉敦子、所長の島寅太郎、篤子の同僚時田浩作は、善後策を考えようと集合。しかし、島は突然意味不明なことを口走り始め、窓から飛び降りて大怪我を負う。

一命はとりとめたものの、島の意識は既に”何者か”によって支配されていたのだった。

 

敦子たちが、昏睡中の島の夢を覗いてみたところ、家電製品や人形、動物などが人間のように歩いてパレードを行うという摩訶不思議な夢を見ていることがわかった。

そして、どういうわけかその夢の中で、同僚である氷室啓の顔が見つかった。

「DCミニを盗んだ犯人は氷室啓に違いない」

敦子と時田に小山内を加えた3人は、氷室の自宅のアパートへと向かう。

しかし、アパートはもの抜けの空。逆に、敦子が精神攻撃を受けて命を落としかける始末。

その後敦子は、パプリカとなって島の意識を救済することとなる。

 

後日、”何者か”による精神攻撃を受けてたなる被害者が続出する。

事態を重く見た理事長のは、DCミニやサイコセラピーマシンの使用を止めるよう敦子に指示を出す。

何とか犯人を足取りを掴みたい篤子と時田は、既に廃園となった遊園地を訪れる。するとここで、DCミニに浸食された氷室が突然天から降ってきて地面に激突。意識不明の重体となる。

犯人の氷室は、さんざん人の意識に侵入して精神攻撃をした挙句、自分自身も異常を来して飛び降り自殺を図った。この事件は、こうのように片付けられようとしていた。

中盤

しかし、敦子は”犯人氷室説”に懐疑的だ。

盗まれたDCミニは3つ。氷室が使っていた分を除いても、残りの2つは行方不明のままだったのだ。篤子は、残りのDCミニの在りかを突き止めるため、意識不明で昏睡中の氷室の意識に入るべきと提案する。

するとここで、サイコセラピーマシン使用中の粉川が精神攻撃を受けたとの知らせが入る。敦子は、パプリカとなって粉川の夢に入り込む。

時を同じくして、時田は氷室の夢に入り込んでいた。時田は、DCミニの開発者として責任を感じたのだ。

ここで分かったのは、DCミニを使用して夢テロを繰り返しているのは氷室ではなく、別の黒幕がいたということだ。そして、その時田もまた精神攻撃を受けてしまうのだった。

 

敦子(パプリカ)は、何とかして粉川のトラウマ要素を取り除こうとしている中、氷室の夢が粉川の夢に入り込んで来る。夢同士が混同するという、通常ではありえない現象が起こっているのだった。

時田は、意識そのものを奪われてしまったのだ。

時田を救うため、敦子は再びパプリカとなって氷室の夢に入り込む。

敦子(パプリカ)は、夢の中で氷室を見つけ出すのだが、それは既に中身が空っぽの氷室だった。さらに、氷室を探す敦子(パプリカ)に攻撃を加える人物がいた。それが、理事長の乾だった。

黒幕は乾だった。この事実は、敦子と島を驚かせた。

間一髪で夢から一旦覚醒した敦は、島と共に乾邸へと向かう。

すると乾は、足元が木の根っこのようなものに変身し、しかもうねうね動くという気持ち悪い姿で敦子を待ち構えていた。さらに、島だったはずの人物は、いつの間にか小山内に成り代わっていた。小山内は、乾の部下だったのだ。

そう、覚醒したと思い込んでいた篤子だったが、実はこれも夢の中。黒幕である乾の精神攻撃を受けている最中だった。

覚醒ができないまま篤子は逃げ回るが、ついに小山内に掴まってしまう。

 

その頃粉川は、夢の世界において一人で自分のトラウマと戦っていた。そして、何かヒントを掴みかけたその時、パプリカのピンチを知ることとなる。

粉川は、パプリカを助けるべく、自力で氷室の夢(?)の世界へと侵入する(もうここまでくると訳が分からない…)。

さらに粉川は、自分のトラウマの原因を突き止める。粉川が若かりし頃、親友と一緒に映画の道を歩もうと話していた。しかし、粉川は自信が持てずに途中で映画の道を諦めてしまった。作りかけの映画を、親友に押し付ける形で(その親友は、やがて病気で死亡)。

「今度こそ完成させてやる」そう言い切った粉川は、トラウマを完全に払しょくし、パプリカを救出する。

終盤

乾邸では、夢の中で粉川に撃たれて絶命(?)した小山内が、地面にぽっかりとあいた穴の中へ引きずり込まれようとしていた。それを阻止しようと乾は縋り付くが、乾も小山内と共に穴の中に落ちて行ってしまうのだ。

 

時を同じくして、夢から覚醒した敦子は、相変わらず昏睡中の時田を救うべく対策を考えていた。

すると、なんと敦子と島の目の前に、ありえない大きさの日本人形が現れる。ここは、間違いなく現実世界のはずなのに…

そう、氷室の夢が、ついに現実世界に浸食を開始し始めたのだ。

街には、以前島が見たような、不思議な生き物たちによるパレードの一行が練り歩く。何も知らない通行人たちは、まるで信じられないという顔をしている。

 

逃げ惑う敦子と島の目の前に、今度は夢の中の住人であるはずのパプリカが登場する。パプリカは、乾理事長の暴走を止めるべきだと申し出るが、敦子は拒否。

敦子には、どうしても守りたい人がいたのだった。なんとそれは、同僚で天才の時田。敦子は、惚れていたのだった。(これまでさんざんデブだの脂肪だの悪口言ってたくせに、なんというツンデレ)。

 

敦子と別行動をすることになったパプリカと島は、街の中心にぽっかり空いた大穴を見つける。ここが、現実と夢の接点というとこだ。

そしてこの大穴から、超巨大乾理事長が登場し世界を崩壊させようと目論む。

すると、今度は巨大な赤ん坊が登場する。その赤ん坊は、乾理事長が発する闇オーラ(理事長曰く、それは「夢」だというが…)を吸い込み、それをエネルギーとして成長を始める(赤ん坊から小学生くらいの少女になるまで約30秒)。

最後には、乾理事長そのものを吸い込んでしまう。

成人にまで成長したその赤ん坊の正体は、なんと敦子だった。

ラストシーン

全てが終わり、世界は平穏を取り戻す。

昏睡状態だった時田は目覚め、敦子は時田の手を握る。

 

その後、トラウマを完全に払しょくした粉川は、パプリカからのメッセージを受ける。

「苗字が時田に変身します。PS.『夢見る子供たち』という映画がとっても良かったので、おススメです」

粉川は、早速映画館に足を運ぶ。

1分で振り返るストーリーまとめ(忙しい人向け)

忙しい人向けに、本作のストーリーを1分で把握できるようにまとめてみました。

✓ 敦子は、サイコセラピーマシンを使って夢の中に入り込み、「パプリカ」となって精神治療を行うことができた。
✓ 敦子の研究所から”DCミニ”が盗まれるという事件が発生した。これにより、犯人はいつでも他人の夢の中に侵入し、精神を破壊することができる。
✓ 当初、犯人は時田の親友でもある氷室ではないかと言われていた。しかし、氷室は精神に異常をきたして自殺未遂。昏睡状態に陥る。
✓ 他に犯人がいると睨んだ敦子は、「パプリカ」となって氷室の夢に入り込む。敦子がここで見たものは、黒幕が乾理事長だったということだ。
✓ 夢の中でパプリカと理事長が戦っているうちに、夢の世界が現実を侵食するようになった。
✓ 世界を破壊しようとする乾理事長を、巨大赤ん坊(愛に目覚めた敦子+パプリカ)が撃破。

興味が湧いた方は、是非ともストーリー(細部)も読んでみてくださいね!!

考察及び感想

粉川のトラウマ

粉川は、いつも同じ悪夢を見ていました。

粉川が犯人を追いかけているうちに、いつの間にか自分が自分に追いかけられる。

そうかと思えば、ジャングルを飛び回ったりスパイになったり、まるで映画の主人公のような役回りをするようになる。

そして最後は、自分の目の前で一人の人間が前のめりに倒れるシーン。その奥には、扉を開けて逃げ出す犯人。粉川は犯人を追いかけようとするが、地面が揺れて追いかけることができない。

 

結局粉川のトラウマとは、「親友と一緒に映画の道に進もうと約束していたのに、自分だけ途中であきらめて、製作途中の映画も親友に丸投げしてしまった」という罪悪感を抱えていたことだったのです。

「(作りかけ映画の)この先はどうするんだよ!」と叫ぶ、親友の声が忘れられないようです。

夢の最後で、前のめりに倒れ込む人物。これは、粉川本人。自分で自分の夢を諦めてしまったので、『自分で自分を撃ち殺した』という夢に変換されたものと考えられます。

 

しかし、ラストシーンで粉川は、親友の幻に「気にすることは無かった。おまえは映画を地で行ったから刑事になった。ウソから出た真じゃないか。」と声をかけられています。

刑事ものの映画を作っていた粉川たちでしたが、粉川は本当に刑事になってしまった。従って、親友は粉川を恨んではいなかった。

それを知ったので、粉川はトラウマを払しょくできたのです。

男色家の氷室

氷室が盗んだ3つの”DCミニ”のうちの二つは、なぜか乾と小山内が持っていました。一体、どういうルートで二人に渡ったのか?

 

夢の中でパプリカは、小山内(悪Ver.)にこう言ってます。

「アイドルだったのでしょう?氷室君の。その身体で、”DCミニ”と取引したんでしょう!?」

身体で取引って、まさか…

と思い、氷室の部屋の捜索シーンを見直してみたら…「HARD BOYS」というゲイ雑誌のような物がチラリ(アーーーーーーー!!!!!)。

さらに、氷室の夢の中には、なぜか小山内の半裸の胸像がそびえ立っている。

なるほど、そういうことですか(+o+)

小山内は、パプリカに言われて「やめろ!思い出させるな!」と叫んでいたくらいなので、小山内自身は多分ノーマルなのでしょう。

きっと、理事長に言われて嫌々身体を売った…ということかと思われます。

理事長と小山内の企み

結局、乾理事長と小山内は何がしたかったのか?

彼らはよく小難しいことを言うので分かり辛いですが、要は「夢の世界は素晴らしい。夢が科学に負けないように、夢の世界を守る」ということらしいです。

そしてどうも、理事長一人では実現不可能なようです。しきりに小山内の身体を欲しがり(BL的な意味ではなく)、「二人で一つなのだ」ということを言っていたので、恐らく身体的なところに原因があるように思います。

 

それにしても、夢の世界を守ることが、なぜ世界を破壊することにつながるのか?それは謎です。

巨大化した理事長は、「新しい秩序が、私の足元から始まるのだ!」と叫びながら、手を振り回して地面がドカーン!(秩序とは一体・・・?)

えー、意味不明です(笑)

夢世界を超リスペクトしていたところを見ると、現実世界をすべて壊して、代わりに夢の世界にしたかったのでしょう(それはそれで面白いのかも)。

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