作品紹介
制作 | 2007年 |
ジャンル | サスペンス |
監督 | デヴィッド・クローネンバーグ |
キャスト | ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ |
『イースタン・プロミス』は、2007年、クローネンバーグ監督によって製作された映画です。
「イースタン・プロミス」とは、”人身売買”という意味。
この映画のみどころ
この映画のみどころは、”人身売買”です。この映画の表題「イースタン・プロミス」は、東欧諸国のマフィアの間に使用される隠語で、「人身売買」を意味しているようです。
ある夜、病院に運び込まれた14歳の少女。この少女は妊娠しており、赤ん坊を産み落とすと間もなく息を引き取る。
助産師アンナが少女の日記を読んでみると、そこには、恐ろしい人身売買の事実が書き綴られていた、というストーリー。
ロシア語で書かれた日記が少しずつ翻訳され、それに伴って徐々に明るみになっていく犯罪事実。そして真犯人。この辺はさながら推理小説のよう。
そして、マフィアグループの運転手を務める主人公ニコライの、意外過ぎる正体とは?
ニコライ役を務めるのは、同じくクローネンバーグ映画「ヒステリーオブバイオレンス」でトム役を務めたヴィゴ・モーテンセン。
”優しさと怖さを併せ持つ”的な役をやらせると、この人はピカイチですね。ハマり役だと思います。
なお、人身売買というやや危険なテーマの映画であるため、日本ではR-18に指定されています。
登場人物
ニコライ
ロシアンマフィア「法の泥棒」に所属する運転手。サングラスがよく似合う寡黙なナイスガイ。
同じく「法の泥棒」の若頭であるキリルの舎弟を務める一方で、共に酒を飲み歩いたり相談に乗ったりと、まるで親友同士のような関係でもある。
また、死体の処理に関しては右に出るものは無く、”葬儀屋”などと呼ばれている。
キリル
「法の泥棒」の若頭。ゲイ。ニコライに対しては絶大な信頼を置いている。
日頃からマフィアらしく悪事を働いているが、子供好きという一面もあり、完全に悪には染まり切れずにいる。
自分がゲイであることに負い目を感じており、それを払しょくするためか無理やり女性と絡みあおうとする。
酒が好きで、しょっちゅう酔っぱらっている。
アンナ
トラファルガー病院に勤める助産師。妊娠したが流産し、彼氏と別れて実家で生活するようになった。
マフィアグループの一員でありつつもどこか優しい雰囲気を持つニコライに、徐々に惹かれていく。
愛車のバイク”ウラル”は、亡き父の形見。
セミオン
一見するとただの良いおっちゃんだが、真の姿は冷酷非道な「法の泥棒」のボス。
息子のキリルには厳しくあたっている。
ありとあらゆる手を使って保身に走る姿は、なんともマフィアらしい。
自らシェフとしてレストラン「トランス・シベリアン」を経営している他、バイオリンを弾きこなすなどマルチな才能を持つ。
ストーリー(細部)
序盤
ある夜、トラファルガー病院に14歳の少女が運び込まれた。彼女は妊娠をしていた。
間もなく少女は息を引き取り、お腹の中の赤ん坊だけが助かった。
助産師のアンナは、この少女のバックから日記を見つけると、こっそりと家に持ち帰っていた。しかし、中身はロシア語で書かれていて一切読むことができない。「日記が翻訳されれば、取り残された赤ん坊の家族が見つかるかもしれない」アンナはそう思うようになった。
そんなアンナが立ち寄ったのが、ロシアンレストランの「トランス・シベリアン」。少女のバックの中に、このレストランの名前が書かれた名刺が見つかったのだ。
オーナーがとても気のいい老人だったので、アンナはこの老人に日記の翻訳を依頼することとなった。
明日の7時、アンナはレストランに日記を持ってくる約束をする。
この時アンナは、この老人がロシアンマフィア「法の泥棒」のボス・セミオンであることを知らなかった。
一方で、「法の泥棒」のお抱え運転手であるニコライとセミオンの息子キリルの二人は、闇の世界で暗躍していた。今日も、裏切り者の仲間を殺害し、死体を海に捨てて処理したばかりだ。
後日、日記(コピー)をレストランに届けたアンナを、ニコライは車で自宅まで送り届ける。料金を払おうとするアンナに、ニコライは「クリスマスプレゼントさ」というキザな言葉を贈る。
中盤
赤ん坊を残してこの世を去った少女の死には、なんと「法の泥棒」が関わっていることが判明した。彼女はキリルに暴行を受けた後、キリルの父親(つまりセミオン)にレイプをされていた。アンナの伯父ステパンが、日記の一部を翻訳したのだった。
少女が産み落とした赤ん坊の父親は、セミオンだったのだ。
そしてアンナは、セミオンが仕掛けた罠にかかり、日記を奪われてしまうのだった。
さらにセミオンは、日記の内容を知っているアンナの伯父ステパンを殺害するようニコライに命令する。そしてニコライは、セミオンの命令を着実に実行するのだった。
この頃、セミオンのもとに「キリルを渡せ」と脅す勢力が現れる。彼らは、キリルが裏切り者として殺害した元ファミリーの仲間だった。
セミオンは、少し考えた後、2日後にキリルを差し出すと約束する。
その後まもなくして、ニコライが運転手から格上げし、「法の泥棒」の一員となることを許される。忠実な仕事っぷりをセミオンが評価したのだった。
ニコライは、ファミリーの一員の証として右肩あたりに星形の入れ墨を掘り入れる。ニコライは喜び、キリルは親友の昇格に祝福を送る。
その後ニコライは、ファミリーの主要人物であるアジムから呼び出される。どうやら、ビジネスの話があるようだ。
しかし、それはセミオンとアジムが仕掛けた罠だった。たちまち2人の刺客が現れ、ニコライを襲う。なんとセミオンは、ニコライをキリルだということにして殺させ、キリルを匿おうとしていたのだった。
ニコライは、間一髪で刺客を撃退するが、重傷を負ってトラファルガー病院に入院することとなった。
終盤
ここでニコライは、病院で働くアンナに「実はステパンは殺していない。セミオンの目を欺くため、国外に逃亡させている。」と告白する。
さらに、ニコライに面会を申し出てきたのは、なんと刑事。
驚くべきことに、ニコライはFSB(ロシア連邦保安局)の捜査員だった。覆面捜査を命じられたニコライは、「法の泥棒」に運転手として潜り込み、セミオン逮捕のための機会を伺っていたのだ。
ニコライは、セミオンに未成年強姦の疑いがあることを伝える。セミオンの血液を検査にかけ、赤ん坊のDNAと照らし合わせれば、レイプの事実は揺るぎないものとなる。
後日、セミオンのもとに数人の警察官が押し寄せる。そして、セミオンの血液を採取していったのだ。
いよいよ後が無くなったセミオンは、信じられない行動に出る。
夜、キリルは赤ん坊を抱いて歩いていた。キリルは、赤ん坊を殺してくるようセミオンに命令されたのだ。
キリルは泣きながら、「ごめんよ、ごめんよ…」と呟き、ついに赤ん坊を海へ投げ入れようとする。しかし、「まだこんなに小さいよ、父さん」と言いながら、なかなか決心がつかない。
この場に、ニコライとアンナが現れる。病院から赤ん坊が消えたので、急いで駆けつけてきたのだ。
ニコライは、「赤ん坊は殺すな、ボスはやりすぎた」と語ったうえで、「ボスと俺とどっちに付く?」と説得を試みる。キリルは静かにニコライに従う。
アンナは、要所で助けてくれるニコライに「あなたは誰なの?」と問いかける。
するとニコライは、「まだ王がいるのに、どうして俺が王になれるのか?」と、イマイチ的を射ない答えを返す。
ラストシーン
アンナの家にはステパンが戻り、さらにもう一人家族が増えた。
母親を亡くしたあの赤ん坊だった。
アンナは、赤ん坊の母親として生きていくことを決意したのだった。
最後、少女の日記の朗読と共に、静かに机に座るニコライの姿が映し出されてこの映画は終わる。
考察及び感想
この映画には、私が考えるに三つのビックリポイントがあります。
一つ目は、ニコライが実はFSBの職員だったということ。ニコライは、ずっと覆面捜査をしていたということですね。日本では覆面捜査は禁止されているので、この辺は海外ならではといったところでしょう。
なんと、覆面捜査に従事している捜査官は、違法行為は免除となるみたいですね(まあ、当然と言えば当然だが)。
今回でいえば、ニコライは遺体の指をハサミで斬ったり、遺体を海に投げ捨てたりしています。これは、死体遺棄罪に該当します。しかし、覆面捜査中のニコライはもちろん無罪。
”必要悪”というものなんでしょうね。
二つ目は、ニコライが「王になる」などと呟くようになったことです。「おまえはルフィーか!?」と突っ込みたくなりましたが、ニコライは本気です。
ニコライの言う「王」とは、恐らくマフィアのドンになるということを言っているのだと思います。
そして「まだ王がいるのに、どうして俺が王になれるのか?」という最後のセリフ、なかなか恐ろしいなと思うのです。
ニコライは、誰のことを「王」と表現しているのか?第一候補は、もちろんセミオン。「セミオンを倒して、自分がマフィアのボスに成り上がってやる!」という発想は、極めて自然に感じます。
第二候補は、キリル。ニコライがこのセリフを言う直前に、キリルに「おまえがボスだ」的なことを言っています。
これはつまり、まずはセミオンを倒してキリルをボスに仕立て上げ、キリルがボスの座についているうちに地盤を固め、そのうちキリルに成り代わって自分がボスになろうという意味。
ということは、これまでキリルに尽くしてきたり親友を演じたりしていたのは、すべて自分が頂点に立つための布石だった…ということ。
これは怖い。
そして三つめは、セミオンが14歳の少女をレイプしたという事実。
セミオンの年齢は不詳ですが、見た目だと60歳は超えているはず。60歳なんていったら、チ〇コなんて小便するための機能しか持ち合わせていないのでは?
そして、年齢差にもビックリ。46歳年下の女子に欲情するか普通?スーパーロリコンオヤジですね。「どんだけお盛んなんだよ!」と私は言いたい。
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