『火の鳥 異形編』の作品紹介
連載 | 1969年(漫画雑誌「COM」) |
単行本 | 全16巻(完結)中13巻後半 |
ジャンル | 人間ドラマ |
作者 | 手塚治虫 |
『火の鳥 異形編』は、1969年、漫画雑誌「COM」にて連載された短編漫画です。作者は、日本でもっとも有名な漫画家の手塚治虫さん。
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『火の鳥 異形編』のみどころ
『火の鳥 異形編』は、「生命編」と合わせて2話で1冊の単行本を構成しており、話としては100ページ強で完結というとても短いお話です。
ところがどすこい、そのストーリー性はかなり秀逸です。
ストーリーの出来栄えだけで比べれば、火の鳥シリーズのベスト3に入るでしょう。
え?望郷編は何位かって?
そんな話、ありましたっけ?笑
この漫画は、時間の歪みに巻き込まれてしまった主人公の左近介(女)が、同じことを繰り返しながら何十年も何百年も生き続けなければならなくなったお話です。
近代風に表現すると、”ループもの”というやつですね。
モデルとなったのは、日本の伝説上の人物である八百比丘尼。
人魚の肉を食べたことで不老長寿の力を身に着け、800年間生きたとされる尼。800年間生きたにもかかわらず、見た目は17~18歳程の若い女性だったと言われている。
八百比丘尼の伝説は全国津々浦々に存在しており、正確な発祥はよくわかっていない。
不老不死ではないにしろ800年間も若いまま生きたとされる八百比丘尼は、『火の鳥』というコンテンツの題材としては、まさにベストマッチしていると言えるでしょう。
さて、そもそもこの『火の鳥』という漫画には、全般的に仏教の教えが散りばめられています。
例えば、”輪廻転生”。これは、まるで車輪のように、人は別の生命に生まれ変わりながらも生き死にを繰り返していくという考え方。
この『異形編』でも、”因果応報”という言葉が多く出てきます。
結果には必ず原因があり、その原因を作るのは自分自身だとする仏教上の教え。
一般的には、悪いことをすれば悪いこととして自分に帰ってくるという”自業自得”的な意味で使われる言葉だが、仏教用語としては、良い行いをすればいい結果となって帰ってくるという使い方もされている。
そう、この時間の歪みに閉じ込められてしまった左近介、実はこれ、因果応報なのです。
左近介は、ストーリー序盤で八百比丘尼を切り殺します。彼女には、どうしても八百比丘尼を殺さなければいけない悲しい理由があったのです。
しかし、どんなに居たたまれない事情があろうと、やはり人を殺すことはいけないこと。主人公は、罰を受けることになったのです。
そして、時空に閉じ込められてから十数年が経ち、左近介は本当の恐怖を味わうことになるのです。
輪廻転生といい因果応報といい、言葉で説明されても難しくてなかなか理解できないのですが、漫画にしてくれるととても理解しやすいですね。
もしかして手塚治虫さんは、このような仏教の教えを子供たちに理解してもらいたくて、火の鳥という漫画を描いたのかもしれませんね。
『火の鳥 異形編』の登場人物
左近介
本作の主人公。男のような立ち振る舞いをしているが、実は女性。
父親に、まるで男のように厳しく育てられた。
とある理由から、八百比丘尼の殺害を企図する。
可平
左近介の付き人。左近介の身の回りの世話は、全て可平が行う。左近介が入浴中も、可平が背中を流す。
左近介からは、「身分を離れて、心を許しなんでも気楽に話せる」と評されている。
左近介の父
左近介の父。残忍な性格で、若い頃から戦に明け暮れ、多くの人間を殺してきた。
まだ幼い左近介の目の前で家来の首をはねたり、人間の生首を肴に酒を飲んで盛り上がったりというサイコパス。
鼻の腫瘍が悪化して以来、床に伏している。
『火の鳥 異形編』のストーリー(細部)
左近介は、可平を連れて八百比丘尼が住む寺へと押しかけていた。左近介には、どうしても八百比丘尼を斬らなくてはならない、深い事情があった。
刀を構える左近介。ところが、ここで左近介に一つの疑問が湧いてくる。
八百比丘尼は800年も生きている。ここで自分が殺しても、八百比丘尼は生き続けるのではないか?
この左近介の疑問に対し、八百比丘尼の答えはこうだ。
「ご安心なされませ、斬られれば私は死にまする。でも、他の人間がかわって私となり、永劫に私の身代わりが生き続けることになりましょう」
高らかに笑う八百比丘尼に向けて、左近介は刀を振り下ろす。
ところが次の日、左近介と可平の周りには異変が起こり始める。
二人が城に帰ろうとしても、まるで空間に閉じ込められているかのように、寺から出ることができないのだった。
混乱する左近介の基に、とあるお客さんが訪れる…
以後の展開
このように、八百比丘尼が住んでいたお寺から全く出られなくなった左近介と可平。
左近介はしょうがなく、八百比丘尼のフリをしながらしばらく暮らすことになるのですが…
ある日左近介は気付くのです。これは、因果応報なのだと。
そして最後、左近介に悲劇が訪れるのです。
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