【考察】「凶悪」(ネタバレ)人はここまで凶悪になれるものなのか?

名作

作品紹介

製作 2013年
ジャンル サスペンス(R15指定)
監督 白石和彌
キャスト 山田孝之ピエール滝リリー・フランキー池脇千鶴
劇場予告 https://www.youtube.com/watch?v=CxBx3mfHB8c

人間は、これほどまでに凶悪になれるものなのか?今回紹介する映画は、実際に起こった事件『上申書殺人事件』を基にして作られた凶悪

この映画は、凶悪 ある死刑囚の告発という本が原作となっています。『新潮45』編集部宛てに届いた死刑囚からの告発文をもとに、未解決事件の真相を記者がすっぱ抜き、首謀者逮捕にまで行きついたという実話が描かれた本です。

ジャーナリストの取材力によって、国家権力でもある警察さえも動かしたという痛快なエピソードとなっています。

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この映画の見どころ

この映画において一番目を見張るのは、表題にもあるとおり、とんでもない悪党が登場して悪行の限りを尽くすところです。

この”悪行”というのが、かなり常軌を逸しているんです・・・一般人の感覚では考えられないような、ハチャメチャなストーリーといえるでしょう。

まるでゲーム感覚で、何の抵抗も無く人を殺していく人たち・・・しかも、これは実在するモデルがいたということですから、何ともこの世の中は恐ろしい。

北野武監督が制作した「アウトレイジ」と少し雰囲気が似ているように感じます。

 

また、死刑囚・須藤順次を演じるピエール滝さんの演技力も一見の価値ありです。

須藤は、まるで蚊を殺すかのように平気で人を殺す凶悪なヤクザという設定なのですが、ピエール滝さんがまさにはまり役。

演技に凄みがありすぎて、「本物の殺人鬼なのではないか?」とすら感じてしまいます。ヤクザの役をやらせたら、ピエール滝さんの右に出る人はいませんね。

(ピエール滝さん自体は、2019年3月あたりにいろいろあって、現在は活動を休止中です。そういう意味で言えば、ピエール滝さんの演技が見れる貴重な映画ともいえるでしょう。)

以下、ネタバレの内容が含まれますので、まだ映画をご覧になっていない方は注意してください。

登場人物

藤井修一

スクープ雑誌『明潮24』に所属する中堅記者。自宅では、母親と妻を含めた3人で生活している。仕事には一生懸命取り組むが、家庭への配慮がおざなりになっている。最近は、母親のアルツハイマーが進行し、妻の負担が過大になりつつある。

須藤順次

元暴力団員で、平気で人を殺す恐ろしい男。作中では、冒頭既に死刑が確定している。凶悪な性質を持つ半面、情に流されやすく、舎弟の面倒見は良い。冷酷に人を殺すことがあるかと思うと、次の日には線香をたてて死者を悼むこともある。しかし、裏切りは絶対に許さない。

直感的に行動するタイプで、物事をロジカルに考えることが苦手。従って、人の言葉を簡単に信じ込んでしまう欠点がある。

舎弟の五十嵐には、絶大の信頼を置いている。

木村孝雄

須藤を操って金儲けを目論む不動産ブローカー。須藤からは「先生」と呼ばれ慕われている。

老人を事故や自殺に見せかけて殺し、掛けられている保険金を搾取するという手段を使って大儲けをする。彼にとって、少子高齢化の日本は、まさにバブルの到来を意味していた。

五十嵐邦之

須藤の舎弟。須藤を崇拝しており、「須藤さんのためなら死ねる」とも宣言している。彼にとって、須藤から言われたことは絶対であり、須藤のサポートをすることに命を懸けている。

若いが度胸があり、腕もたつ。

遠野静江

須藤の内縁の妻。連れ子の娘が二人いる。須藤を「純ちゃん」と呼び、凶悪ながらも情にもろい須藤に惚れている。

木村とは、家族ぐるみの付き合いをしている。

ストーリー

死刑囚からの告発文

ある日、明潮24編集部のもとに、服役中の死刑囚・須藤順次からの手紙が届きます。その内容とは、須藤が犯した犯罪で、まだ誰にも話していない事件を告発するといった内容でした。

編集部員である藤井は、上司からの指示により早速須藤が監修されている東京拘置所に向かいます。

 

藤井が面会に行くと、須藤は殺人鬼とは思えない程の神妙な面持ちでやってきます。須藤の第一声は、「自分のために来てくださって、ありがとうございます。」

須藤の話の内容としては、

「絶対に許せないやつがいて、現在もシャバで暮らしている。そいつを刑務所に引きずり込むため、誰にも話していない3つの殺人事件の話をするから、それを記事にしてくれ。」

というものです。

須藤の言う3つの殺人事件とは、

①老人を殺して焼却炉で燃やした事件
②老人を殺して生き埋めにした事件
③酒を飲ませて老人を殺した事件

だというのです。そしてその3つの事件は、いずれも先生が首謀者なのだというのです。

記事にできない?

藤井は、この須藤の話を上司に報告しますが、そもそも死刑囚の話なんて信ぴょう性に欠けるし、仮に本当だったとしても、証拠をつかむのが難しいということで、”記事にしない”というのが上の判断でした。

 

藤井は、再び須藤の元を訪れて、「上の判断で記事にできない」と話すのですが、須藤は「どうしても記事にしてほしい」と藤井に頭を下げるのです。

須藤は、木村(『先生』)に騙され、可愛がっていた舎弟を殺してしまったという過去があったので、どうしても木村を許せないというのです。

 

根負けした藤井は、上司の意向に反し、須藤が告発した事件について取材を始めることにしました。

物証なし

取材を始めたはいいが、事件については全く物証が得られませんでした。そもそも、須藤の記憶も曖昧で、会社の名前や被害者の名前、遺体を埋めた場所などすべての情報が不明確でした。

藤井がダメもとで現地に行ってみても、木村によって証拠隠滅が図られており、とても記事できるレベルではありませんでした。

 

編集部の上司にも報告しますが、記事にしないといったはずの事件を取材している藤井に対し、上司は激おこぷんぷん丸。

藤井の苦悩

「いつ記事にしてくれるんですか?」と須藤は聞きますが、藤井は「上から記事にする許可がおりない」と説明します。

すると、ここまでおとなしかった須藤が急に「ふざけるな!」と怒号を上げます。「さんざん話をさせておいて!ぶっ殺してやる」と叫びながら、須藤は、看守に連れられて面会場を強制退場させられます。

 

ここでも、ピエール滝さんの演技力が光ります。これまでは大人しくて真面目な印象だった須藤が、一変して凶暴な男に豹変するのです。

 

自宅に帰っても、痴呆症が始まっている母親の世話で、妻が疲労困憊状態。「なぜ見て見ぬふりをするのか」と、妻からは文句を言われます。

藤井にとって、仕事と家庭共に辛い時期だったのでしょう。男は辛いですねー・・・

つかんだ手掛かり

藤井は、須藤の内縁の妻・遠野静江の元を訪れます。すると、須藤の言う3番目の事件(酒を飲ませて殺した事件)の手がかりを僅かにつかむことができたのです。

保険金8000万円が掛けられていた被害者は、自殺に見せかけて殺されているはずなのです。

続いて藤井は、被害者の家族が住む自宅を訪れますが、「被害者は本当に自殺だったのか?」と聞くと、全員不自然なほどに口を紡ぎます。そして、「警察が自殺と言っていますから」の一点張り。

 

その後も藤井は、須藤の僅かな記憶を頼りに、地道な取材を続けます。

 

(これまでは、藤井という記者の目線でストーリーが進んでいましたが、ここからは時が遡り、須藤が捕まる前の、木村と共に活動していた頃に戻ります)

第1の事件(焼却炉で遺体を燃やす)

木村は、金銭トラブルを抱えていた一人の老人の首を絞めて殺すと、早速須藤に電話を掛け、遺体を都合よく処理するよう依頼します。遺体を譲り受けた須藤は、遺体を燃やして証拠隠滅を図ろうと提案します。

木村は、多額の金を貸している土建屋の社長に電話し、焼却炉を使用できるよう無理やり頼み込みます(ほぼ脅迫です)。

しかし、人間が入るほど焼却炉の奥行きが無いと知った須藤は、ナタを持ってこさせ、遺体をバラバラにし小分けにして焼却炉の中に放り込み、そのまま焼いてしまうのです。

第2の事件(生き埋め)

木村の次の狙いは、駐車場がある土地の略奪です。土地を自分のものにするため、地主である老人をこの世から抹殺することを目論みます。

老人の手足を縛って身動きを取れなくさせると、再び須藤を使い、地面を掘って生き埋めにしてしまうのです。

 

これにより、1億7000万円もの大金を手に入れた木村は、須藤を「弟のようだ」と表現します。それに対し、須藤も「一生先生に付いていきます」と、信頼の言葉を浴びせるのでした。

第3の事件

木村は、ある家族の基を訪れます。その家族は、借金のために首が回らずに、木村に相談をしに来たのです。家族が生き残る唯一の道は、おじいちゃんに掛けた役8000万円の保険金を、借金返済に充てるということだけでした。そしてその家族は、木村におじいちゃんを殺すよう依頼します。

木村は、形式上おじいちゃんを雑用係として雇い、酒を飲ませまくって自殺と見せかけて殺すという作戦を思いつきます。

もちろんそこには、須藤とその舎弟・五十嵐の姿があります。

 

その日から、おじいちゃんに無理やり酒を飲ませる日々が始まります。それは徐々にエスカレートしていき、酒を飲ませるだけでなく、殴る蹴る、さらにはスタンガンで痛めつけたりなどの暴行を加え始めます。

最後は、アルコール度数96度のスピリタスを一気飲みさせ、おじいちゃんを殺してしまいます。

(警察は自殺として処理)

ついに須藤の足が付く

しかし、やりたい放題してきた須藤にもついに足が付きます。

裏切った舎弟の家に放火して殺したつもりが、その舎弟は重傷を負ったものの実は生きており、そこから放火殺人の容疑で須藤と五十嵐が指名手配となったのです。

ほとぼりが冷めるまで、須藤と五十嵐は逃亡生活が始まるのか・・・という場面で、木村は意外なことを口にします。

「舎弟である五十嵐から逃走資金を求められたが、断った。彼は自分だけ逃げようとしている。これは純ちゃんへの裏切りだ。」

 

もちろんこれは、木村の方便です。木村は、指名手配が付いた須藤を見限り、舎弟の五十嵐を含めてこの社会から消してしまおうと考えたのです。

須藤は、木村の言葉を信じ、舎弟の五十嵐を泣きながら撃ち殺します。須藤は、後ほどこれが木村の噓だったということを知ることになります。

(ここで場面は戻り、次からは藤井目線になります)

記事にする

藤井は、地道な取材により、ここまでの事件の真相を解明することに成功していました。

早速編集部に戻り、上司に取材の資料を提出して「この事件は、世に出さなきゃだめだ」と強く説得します。藤井の情熱と、記事の信ぴょう性の高さに感服した上司は、まずは藤井と共に警察署に駆け込みます。

 

事件の真相を追った資料を警察に見せるのですが、警察側は全然やる気がなく、まともに取り合ってくれません。挙句の果てに「上司に報告するから、記事にするのはもう少し待ってくれ」と言い出す始末。

けんもほろろの対応しかしてくれない警察に憤慨した上司は、「記事にしちゃえ」と藤井に言い渡します。

 

そして、この3つの事件は、警察をも出し抜いた明潮24のスクープ記事となります。ここまでされたからには警察も動かざるを得ず、木村と木村に殺人を嘱託した家族3人が逮捕されることになります。

 

しかし、3つの事件のうち、警察が立件できそうな事件は3番目の事件のみで、このままだと木村は死刑にならず、無期懲役どまりです。

藤井は、木村を死刑にすべく、さらに取材を続けます。いつの間にか藤井は、木村を死刑にすることのみを考えるようになったのです。

公判

ついに木村の公判が開かれ、藤井や須藤が証人台に立ちます。裁判は一方的で、木村は無期懲役、死刑がすでに確定している須藤は、さらに懲役20年を言い渡されます。

 

後日、藤井は木村に面会に行き、「まだ終わっていない、おまえはまだ人を殺している」と問い詰めます。

すると木村は、「私を本当に殺したいと思っている人間は、被害者でも須藤でもない…」と言いって、ガラス越しに藤井を指差して、面会場を後にします。

考察及び感想

最後に木村が言いかけたセリフ、それは「まえが本当に殺したいと思っている人間は俺だろう?」というものであると考えられます。

藤井は、取材を続けていくうちに、木村という人間が許せなくなっていきます。そして、いつの間にか木村を殺してやりたいと思うようになります。

凶悪な犯罪者を追いかけているうちに、藤井は自分自身が凶悪になってしまったのです。誰にでも凶悪になりうる、最後のオチからは、そんなメッセージが読み取れます。

 

この映画の本当に怖いところは、木村と須藤が、ゲーム感覚でどんどん人を殺していくところです。演技とはいえ、狂気を感じてしまいます。グロテスク表現は少ないですが、R15指定としたのは、倫理的に考えて正解だと思いました。

しかし、全般を通りてみるとかなり面白い作品です。最後までハラハラドキドキでした。どぎつい映画が好きという方であれば、楽しんでみることができると思います。

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