作品紹介
制作 | 2011年 |
ジャンル | 人間ドラマ |
監督 | 成島出 |
キャスト | 井上真央、小池栄子、森口瑤子、田中哲司、渡邉このみ |
『八日目の蝉』の原作は新聞小説。
2005年11月から2006年7月まで、読売新聞の夕刊において連載されていました。
その後、2010年にTVドラマ化され、次の年の2011年に映画化されています。
この映画のみどころ
本作は、”母性”をテーマにした作品となっています。
中絶手術により子供を産めない体になってしまった野々村希和子は、不倫相手の奥さんが産んだ赤ちゃんを誘拐。その後、その赤ちゃんを連れながら、警察の目を逃れるために名を変え場所を変え逃避行を続けるのですが…
いつの間にか希和子に母性が芽生え、その赤ちゃんをまるで自分の子供のように育てていくのです。
感動します。号泣します。
誘拐された子供・恵里菜を演じるのは、当時5歳の渡辺このみちゃん。この子の演技がまた泣かせるんです(T_T)
この映画を見た時、私には二人の娘(6歳と2歳)がおりまして、二人の顔が見事にこの子役とマッチング。
子供が可哀そうで不憫で・・・終止ティッシュが欠かせない状態でした。
男の私が見てもそうなのですから、女性が見ればなおさら、しかも幼稚園児以下の子供を持つ母親であればますます涙腺崩壊状態に陥るでしょう。
登場人物
野々宮希和子
本作の二大主人公の内の一人。
おしとやかな性格の割には、いざという時にとんでもない行動力を発揮する。
生後4か月の秋山恵里菜を誘拐して「薫」と名付け、4歳になるまで愛情を込めて一人で育てていた。なお、逃亡生活の間は『宮田京子』と名を変えていた。
その後、警察に逮捕され、未成年略取の罪に問われて服役することになる。
真里菜が産まれる前、恵理那の父親の丈博とは不倫関係にあったが、丈博の子を身ごもった時には中絶させられている。
それ以来、子供を産めない体になってしまい、そんな自分に強いコンプレックスを抱えるようになった。
秋山恵里菜
本作の二大主人公の内の一人。女子大学生で、アルバイトで稼いだお金で学費や生活費を賄っている苦学生。
大学へ通うための資金援助を断られるなど、母親の恵津子とはあまり関係が良くない。
岸田という名の恋人(不倫関係)がいる。
生後4か月の時に誘拐されて以来、希和子を本当の母親だと思い込みながら4歳までを過ごした。その間、カルト宗教施設『エンジェルハウス』や小豆島など、生活環境は目まぐるしく変わっている。
当時、希和子が恵里菜を『薫』を呼んでいたため、4歳になるまで自分の名前は『薫』であると信じていた。
従って、秋山家に復帰した後も、しばらくは恵津子を母親と思えずにいた。
4歳までの逃亡生活(幼い恵里菜は理解していなかったが)の影響で、旅行やクリスマスパーティーなど、一般的な家族イベントを大人になるまで経験しないできた。
安藤千草
親のすねをかじりながらフリーのライターをやっている。
常に猫背で歩き、挙動不審。
他人の家に上がり込んでは冷蔵庫を漁るなど、図々しい面もある。
男性恐怖症で、これまでに男性とお付き合いしたことが無い。
恵里菜の過去に興味を持ち、希和子のことやエンジェルハウスでの生活のことなどをっき出そうとしてくる。
秋山恵津子
恵里菜の実の母親。ヒステリックな性格。
恵里菜を誘拐されてから帰ってくるまでの約4年間、絶望的な毎日を過ごしていた。
恵里菜が家族に復帰してからも、なかなか自分に懐かない真里菜を見てナーバスになることが多かった。
恵里菜が成人してからも、親子関係はぎくしゃくしたままである。
秋山丈博
恵里菜の父親。
かつて希和子とは不倫関係にあり、「いつかは妻(恵津子)と別れて一緒になりたい」などと言っていたが、希和子が自分の子供を妊娠したと知って中絶させ、さらには妻のもとに戻るという最低な男。
後ろめたさからか、家庭で自己主張をすることはあまりない。
妻には内緒で、恵里菜に資金援助をしている。
沢田久美
エンジェルホームの住人。
夫の不倫で離婚するが、裁判で負けて親権を取られてしまい、絶望してエンジェルホームに入居したという経緯がある。
”苦しみを手放せ”という教えだが、子供と離れ離れにされた苦しみはなかなか忘れることができない。
岸田
恵里菜の恋人。塾の講師。
妻と子供がいる。
ストーリー(細部)
序盤
野々宮希和子は、被告人席に立っていた。
生後3か月の秋山恵里菜を誘拐し、4歳まで連れ回した罪を問われていたのである。
恵里菜の母恵津子は、希和子を死ぬほど憎んでいた。娘の幼少期の一番かわいい時期を希和子は奪ったのだから、それは当然のことだった。
しかも恵里菜は、秋山家に復帰してからも、しばらくの間は希和子を本当の母親のように思っていたのだから。
恵里菜と千草
18年後、秋山恵里菜は大学生になっていた。母の恵津子から資金援助をしてもらえないため、学費と生活費をアルバイトで賄う苦学生だ。
岸田という名の不倫相手もいる。
そんな恵里菜のもとに、安藤千草と名乗るフリーのライターが訪れる。恵里菜が幼少期に巻き込まれた誘拐事件のことを記事にしたいので、詳しいことを知りたいという。
しかし、恵里菜にとって希和子との逃亡生活は、思い出したくもない嫌な思い出だった。恵里菜の幼少期を台無しにしたのは、すべて希和子のせいだったからだ。
希和子の逃亡生活(22年前)
希和子は、生後4か月の恵里菜を誘拐した。本当は、赤ちゃんを一目見て終わる予定だったが、あまりの可愛さと妬ましさに、思い切った行動に出てしまったのだ。犯罪であることは明白だ。
その後希和子は、慣れない育児に悪戦苦闘しながらも、このまま赤ん坊を連れて逃亡生活を送ることを決意する。
希和子は、世を欺くために『野々村京子』と名を偽り、恵里菜に『薫』という名前を付ける。
逃亡中の希和子がふと目にしたのが、訳アリの女性を専門で受け入れてくれる『エンジェルホーム』。現代版の”かけ込み寺”のような存在だ。
ここは、『エンゼル』と名乗る代表者がいて、「天使としての使命を全うするため俗世から隔離された生活を目指そうという」という教えを信者に伝えているカルト宗教施設だ。
日常生活を信者による自給自足で賄っているこの施設は、警察の捜査を逃れたい希和子としてはうってつけの生活拠点だった。
赤ん坊と共に生きていきたい。その一心で、希和子はエンジェルホームに入信することとなる。
希和子は『ルツ』、赤ん坊は『リベカ』と名付けられた。
恵里菜の妊娠(現代)
恵里菜はある日、自分が妊娠していることを知る。相手は、不倫相手である岸田に間違いなかった。
しかし、恵里菜は岸田に妊娠を打ち明けるつもりはなかった。面倒ごとは逃げる岸田の性格を見抜いていたのだ。
恵里菜は赤ん坊を産むつもりだった。しかし、どうやって育てていくのかはあまり考えられていない。
恵里菜は、千草にだけこのことを打ち明ける。
ここで恵里菜は、千草から衝撃の告白を受ける。なんと千草は、18年前に恵里菜と同じく『エンジェルホーム』にいたというのだ。恵里菜とは、姉妹同然に育てられた仲だ。
「親のすねをかじってる今の生活を抜け出して、恵里菜と一緒に生活をしたい」
千草はこのように申し出る。
その後恵里菜は、妊娠の事実を両親に打ち明ける。もちろん、母の恵津子は出産に大反対。ヒステリーを起こし、恵里菜に包丁を向けながら大激怒する。
そして恵津子は、未だに自分に不信感を抱く娘に
「私は、母親として恵里菜を普通に育てたかった。女の子が母親に笑いかけている姿を見ると、妬ましくて悲鳴をあげそうになる」
と、泣きながら苦しい心中を吐露する。
恵里菜は、千草の取材旅行に同行することにした。
エンジェルホームからの脱走(18年前)
エンジェルホームにきてから4年、希和子はこの施設を脱走することを決意する。
エンジェルホームに見学を申し出ている人が来たため、京子(希和子)は、自分たちの存在が世に知られてしまうことを恐れた。
薫(恵里菜)はまだ4歳で、大人の事情など理解できるはずもなく、マロンちゃん(千草)など大好きな友達と別れてしまうことにただただ悲観して泣いていた。
しかし、薫は完全に京子を自分の母親と思い込んでいる。京子は、薫を背負いながら、当てもなく暗い森の中をさ迷い歩く。
恵里菜の苦悩(現在)
恵里菜は悩んでいた。恵津子の前では「赤ん坊を産む」と啖呵をきったものの、不倫相手の子供を堕ろすことで憎き希和子と一緒に見られたくない、というのが本心であり、実際は母親になる自信など無かった。
子供にどうやって愛情を注いだらいいのかがわからないのだ。
ここで、千草は「一緒に母親をやろう」と申し出る。千草は男性恐怖症で、今後ずっと一人で生きていくことが怖かったのだ。
次に二人が向かったのは、香川県にある小豆島。
京子、小豆島へ(18年前)
京子(希和子)は、施設を脱出する際に同僚の沢田久美から手紙をもらっていた。そこには、小豆島に住む両親に「元気だよ」と伝えてくれという内容が書かれていた。
行く当てもない京子は、薫(恵里菜)を連れて小豆島へ渡り、久美の実家のそうめん屋を訪れる。
すると、久美の両親に気に入られた京子は、そのままそうめん屋で働くことになった。
新しい生活拠点を手に入れた京子は、これから薫の人生のためにすべてを捧げることを改めて決意する。
薫も、近所に友達ができるなど、島の生活に順調になじんでいった。
島の伝統行事『虫送り』で薫と共に松明を持って島を練り歩いた時が、希和子の人生とっては絶頂の時だった。
恵里菜の小豆島旅行(現在)
恵里菜は、千草と共に小豆島を訪れていた。
すると、色々なことを思い出す。希和子と過ごした、幸せだった日々を。
急転直下(18年前)
薫と共に幸せな生活を送っていた京子の人生は、唐突にターニングポイントを迎える。
『虫送り』の時に偶然撮られた自分の写真が、全国紙に載ってしまったのだ。
警察の手が回るのを恐れた京子は、再度引っ越しを決意する。しかし、今度は薫は納得しない。島の友達と別れたくないのだ。
覚悟を決めた京子は、島にある写真館で最後の家族写真を撮る。
「動物園に行く」と嘘を付いて薫を外に連れ出そうとする京子、長く続いた逃亡生活がついに終わりを告げる。フェリー乗り場には、既に警察が待機していたのだ。
恵里菜は警察に保護され、希和子はそのまま逮捕される。手錠をかけられて連行される希和子、母と信じていた女性と離れ離れにさせられる薫。
現場には、「ママ!どこに行くの!?」と泣きながら叫ぶ、薫の声だけが響き渡っていた。
恵里菜の決意(現在)
恵里菜は、島の写真館を訪れる。すると写真屋の主人は、「5年前、野々宮希和子が写真を持ってった」と語る。
そして、18年前に撮った希和子との家族写真を現像してもらう。
そこで、恵里菜はすべてを思い出す。この写真を撮る時、希和子から「ありがとう、薫と一緒にいれて幸せだった」と語りかけられていた(この時点で、希和子は逮捕を覚悟していたため、薫に別れの言葉を伝えていたのだった)。
恵里菜はその場で泣き崩れ、子供を産むことを強く決意する。
1分で振り返るストーリーまとめ(忙しい人向け)
※ いつもはここでストーリーを端的にまとめるのですが、この映画を端的にまとめてしまうと感動が極端に薄れ、作品のイメージが変わってしまう恐れがあったため、今回は割愛します。
考察及び感想
”母性”を描く映画
この映画は、観ていると非常に複雑な気持ちになってしまいます。
まず、希和子がやった”生後4か月の赤ん坊を誘拐し、自分の子供のように育てる”という行動は、そもそも犯罪ですし、本当の母親である江津子からすれば何回殺しても殺したらないくらいの悪行と言えるでしょう。
いくら希和子が恵里菜に愛情を注いでいたとしても、恵里菜をカルト宗教施設で過ごさせたり、望まぬ引っ越しを何度も強要させたりと、言ってみれば希和子の自己満足といえます。
しかし、希和子を完全に自分の母親として認識し、「ママと結婚したい」と言わしめるまで希和子を慕っていた4歳の恵里菜の姿が涙を誘う…
希和子は、怨念と嫉妬から恵里菜を誘拐していますが、一緒に暮らしているうちに母性に目覚めたのでしょう。血が繋がっていないとはいえ、まさに『母親』でした。
希和子を恵里菜ともう少しだけ一緒に暮らさせてやりたい…そんな風に思えてなりません。
『八日目の蝉』の理由
作中、妊娠の気配に気づいた恵里菜と千草が、夜の公園で酒を飲むシーンがあります。
ここで千草は、
「蝉は何年も土の中にいるのに、成虫になってたった七日で死んでしまうのはかわいそう」
という主旨の話をします。
それに対し恵里菜は、
「死ぬのはみんな一緒だから寂しくない。仮に八日目を生きる蝉がいたら、みんな死んだ後だからきっと寂しいはず」
という主旨の答え方をします。
その後千草は、「中絶しようと思ったけど、お腹をエコーを見た瞬間いろんな景色が見えた」という恵里菜の告白を受け、
「八日目の蝉は、他の蝉と違った景色を見れる。それはもしかして、ものすごい奇麗なものかもしれない」
と気付きます。
物は言いよう、ということなのかもしれませんが、何があっても人生を前向きに捕えようとした恵里菜と千草の発想、ということでした。
お星さまの歌
秋山家に復帰した後、恵里菜は恵津子に「お星さまの歌を歌って」とせがみます。
江津子は、歌詞に”星”が出てくる『きらきら星』『おもちゃのチャチャチャ』を歌おうとしますが、それは恵里菜が思い描いている「お星さまの歌」ではありませんでした。
(ここでも、江津子はヒステリーを起こすのですが…)
では、恵里菜が望んでいた「お星さまの歌」とは何か?それは、『見上げてごらん夜の星を』です。
希和子は、エンジェルハウスを抜け出してきた夜、森の中をさ迷い歩いていた時にこの歌を「お星さまの歌」と言って恵里菜に歌っています。
この時の思い出が、恵里菜の中ではかなり大きいものだったのでしょう。
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