「フリークス」作品紹介
作成 | 1932年 |
ジャンル | ホラー/人間ドラマ |
監督 | ドット・ブラウニング |
キャスト | ウォーレス・フォード、レイラ・ハイアムズ、ハリー・アールズ、オルガ・バクラノヴァ |
「フリークス(FRAKS)」とは、「奇形者」という意味があり、この映画は、生まれながらに奇形な者たちを描いたものです。
作成されたのは、1932年と相当古い作品ですが、内容があまりにも衝撃的過ぎたため、全米で即刻上映禁止措置がなされました。
当時のニューヨーク・タイム誌は「これは人間に見せるべき映画ではない」とまで評し、監督のブラウニングは、この映画がきっかけで映画監督としての道を完全に絶たれてしまいます。
「フリークス」のココがヤバい
この映画には、本物の奇形者、障害者たちをキャストして使用しており、見方によっては、「奇形者、障害者たちを見世物にしている」と解釈することもできます(上映禁止になった理由はここにあります)。
映画の内容としては、差別を助長するような内容になっていないのですが、奇形者達を「バケモノ」と揶揄するなど、コンプライアンス上いかがなものかと思えなくもないです。
しかも、なかなか市場に出回っていないので、手に入れるのに苦労しました・・・
「フリークス」考察及び感想
ストーリーとしては、「フリークスを馬鹿にする者は許さない」という強いメッセージが込められており、とても面白かったです。特に、フリーダの愚直なまでの一途さには、とても感動させられます。
一方で、皮肉にもこの映画自体が一種の「見世物小屋」的な性質を併せ持っていることも否定できません。
この映画を見て何を感じるかというのは、見る人の倫理観に依存するところが大きいのではないでしょうか?少なくとも、私はそのように感じました。
そもそも、この映画で出てくる見世物小屋とはどういったものなのか?
その起源は古く、西暦1600年あたりまで遡ります。
当時は、大男や超低身長という”ちょっと珍しい人間”を見世物として経営されていたようです。
ところが、1900年代に入ってからというものの、見世物小屋は奇妙さやおどろおどろしさを売りにするようになり、この映画のような奇形の人間(フリークス)が主役になっていったようです。
有名なところだと、結合双生児、小人症、小頭症、体重50ポンド(約22kg)という極度の低体重症、4本脚の女性、反張膝の女性、顔じゅうから髪が生える高栄養症の男性、剣で刺されても死なない不死身の男性などのパフォーマーが場を盛り上げていました。
一番有名なパフォーマーといえば、遺伝子欠陥のため体中にゴツゴツした腫瘍が出来る”エレファントマン”ことジョセフ・メリック氏。
メリック氏は、本ブログでも紹介している映画「エレファントマン」でその生涯が語られているので、気になる方は是非とも見てください。
なお、奇形の人間(フリークス)を見世物とする文化は、人権の問題などから現代では完全に廃れており、世界中のどこに行っても見ることはできないそうです。
「フリークス」登場人物
本筋に入る前に、この映画に登場する本物の奇形者、障害者たちを紹介します。
小人症のハンスとフリーダ | 身長が小さいまま大きくならない、先天性の病気を患った二人で、この映画の主人公的な存在です。ハンスとフリーダは婚約していますが、ハンスは健常者の女性に恋をすることに。 |
小人症のアンジェロ | 彼も小人症を患っています。フットワークが軽く、この映画でも要所要所で活躍します。 |
シャム双生児のデイジーとバイオレット | 双子の姉妹ですが、腰の部分が生まれつき繋がっており、常に二人一緒に行動しています。。当然神経も繋がっているので、姉側の肌をつねると、妹側も「今、姉の肌がつねられた」と感じることができます。 作中では、デイジーとバイオレットが別々の男性と結婚することになります。 |
”るいそう”のピーター | ”るいそう”とは、脂肪組織が病的に減少し、まるで骨人間のようになる病気です。 |
ヒゲの濃い女性オルガ | まるで男性のようにヒゲが濃い女性です。作中では、出産をするシーンがあります。 |
インターセクシャルのジョセフィーヌ | 半分が男性、半分が女性の性質を持つ。 |
ゼッケル症候群のクー | ゼッケル症候群とは、染色体異常により、低身長、頭が極端に小さいなどの症状に見舞われる病気のことです。 |
下半身欠損のジョニー | 腰から下が無く、手を使って走り回ることができます。 |
両腕が無いフランシス | 両腕が欠損しています。食事をするにも、ワインを飲むにも、すべて足を使います。 |
四肢欠損のプリンス | 両手両足が欠損しています。使えるのは口だけですが、一人でタバコに火をつけることができます。移動するときも、体をよじらせて前に進みます。漫画「バジリスク忍法帖」に出てくる地虫十兵衛のような感じです。 |
「フリークス」ストーリー
見世物小屋
この映画は、見世物小屋からスタートします。実は、20世紀の前半あたりまでは、サーカスに必ず見世物小屋というものがあり、奇形者や障害者達を見世物にしていたという人類の歴史があります。
ここには、奇形者を見にたくさんの客が集まっています。
ある一人の男が「ここにいるのは、生身の怪物たちである」と説明します。「それでは、ご覧下さい」と言って、檻の中身を客たちに見せます。客の中には、「キャー!」と悲鳴を上げるものもいます。
男は続けて説明します。「この者は、かつては美しい女性でした。しかし、ある出来事によって、こんな姿になってしまいました・・・」
サーカス
舞台は変わって、サーカスのテントの中。当時のサーカスは、短期間で場所を転々としながら興行を行っており、人や道具も含め、テントごと移動するという仕組みになっています。
よって、サーカスに所属している人間は、全員がサーカスのテント内で生活をしています。
このサーカスには、大きく分けて二つの派閥があり、一つは健常者たちの派閥、もう一つは奇形者、障害者達(フリークス)の派閥です。
しかし、派閥といっても力関係は平等ではなく、健常者たちがフリークスたちを嘲笑し、馬鹿にするといったことが日常的に行われています。
ハンスとフリーダ
このサーカスには、絶世の美女がいました。名前は「クレオパトラ」といい、空中ブランコを得意としていました。
小人症のハンスは、同じく小人症を患っているフリーダという婚約者がいるにも関わらず、クレオパトラに恋をしてしまいます。クレオパトラも、ハンスに気のある態度を取るので、ハンスはますますクレオパトラにのめり込んでいきます。
そんなハンスを見て、フリーダはヤキモチを焼き始めます。
ビーナスとヘラクレス、そしてフロゾ
一方、この映画のヒロイン的存在であるビーナスは、脳筋のヘラクレスと恋人関係にありましたが、余りの乱暴さに愛想を尽かし、彼の部屋から飛び出していきます。
イライラしているビーナスは、全く関係ないピエロ役の男フロゾに当たり散らします。フロゾは、八つ当たりをされてムッとしますが、「女はそういうもんさ」と水に流し、器の大きさを見せつけます。
ビーナスは、そんなフロゾに興味を持ち始めます。
ヘラクレスに色仕掛けをするクレオパトラ
クレオパトラは、脳筋ヘラクレスに色仕掛けをし、今度はこの二人が恋人同士になります。しかし、そのことをまだサーカスのみんなは知りません。
二人がイチャイチャしているシーンを、ジョセフィーヌが目撃してしまいますが、怒ったヘラクレスはジョセフィーヌを殴り倒してしまいます(なんとひどい)。
このシーンを見て、クレオパトラは爆笑するのでした(この女もひどい)。
ハンスとフリーダの不和
クレオパトラに夢中のハンスに、フリーダは気が気じゃありません。
ハンスは次第にフリーダをぞんざいに扱うようになり、二人の関係は徐々にヒビが入るようになります。
フリーダは、この頃もうすでにクレオパトラの本質に気付いており、ハンスへ打算的な誘惑をする彼女に我慢がなりません。
そうです。実はこのクレオパトラという女、見た目は美しいのですが中身は腐っていて、日頃からフリークスたちを馬鹿にしているのです。ハンスに近づいているのも、貢物狙いだったのです。
堪りかねたフリーダは、フロゾに「クレオパトラではあなたは幸せになれない」「みんなに笑われてる」と直接話します。それでもハンスは、そんなフリーダの心配を意に介さないばかりか、「俺はクレオパトラを愛している」と言い出す始末。
フリーダは失望し、「私はあなたが幸せであればそれでいい」と言い残してその場を去ります。
クレオパトラに直談判するフリーダ
その頃、クレオパトラと脳筋ヘラクレスは、ハンスがクレオパトラに貢いだ装飾品を「幾らで売れるか」という算段をしていました(ホント最低だな)。
ここで、フリーダがクレオパトラの元に赴き、「あなたはからかってるだけかもしれないけど、ハンスは本気なんだ」と告げたうえ、クレオパトラがハンスを誘惑する理由を問いただします。
そしてフリーダは、クレオパトラはお金目当てでハンスに近づいていることを悟ります。しかしフリーダは、ハンスが大きな遺産を受け継いでいることについて口を滑らしてしまいます。
ハンスには大きな遺産がある、この言葉を聞いてクレオパトラはとんでもないことを思いつきます。
✔ ハンスは体が弱いから、なにかすればすぐ死ぬはず
✔ 死ねば遺産は自分のもの
このアイディアに、脳筋ヘラクレスも賛成します。
脳筋ヘラクレスとクレオパトラは、ハンスを徐々に殺す計画を立てるのでした。
決行された結婚式
かくして、ハンスとクレオパトラの結婚式が挙行されました。どす黒い計画があることはつゆ知らず、ハンスは素直に喜びます。フリークスたちも大勢参加し、式はおお盛り上がりです。
そしてクレオパトラは、早速ワインの中に弱毒性の毒を盛り、ハンスに飲ませるのでした。
その後、酒に酔ったクレオパトラは、次第にタチが悪くなります。ハンスが愛の言葉を投げかけても、馬鹿にして相手にしません。それどころか、ハンスの目の前でヘラクレスとキスする始末です。
ハンスは徐々に言葉を失い、フリーダは見るに耐えず退席します。
一方、そんな事情を知らない他のフリークスたちは「クレオパトラを我々の仲間にしよう」と盛り上がります。
そして、アンジェロが仲間の印でもあるワインをクレオパトラの元に持っていくと、クレオパトラは突然「あなた達の仲間なんて嫌よ!」と叫び、酒をアンジェロに浴びせかけます。
宴はいっきに静まり返ります。
さらにクレオパトラは、「あなたたちは出て行って!」と言い、ハンス以外のフリークスを退席させます。
ハンスはついに「これ以上俺に恥をかかせるな」と怒りますが、クレオパトラはハンスを馬鹿にして相手にしません。
ついには、脳筋ヘラクレスと一緒に、ハンスをまるで赤ん坊のように扱い、遊びだすのでした。
ハンス、気付く
式後、クレオパトラはハンスに謝罪します(もちろん、形だけ)。ハンスは「君に笑われていたことに気付かなかった」と大きく傷つきます。
と、ここで突然ハンスが倒れます(毒が効いてきた)。
ハンスは医者のもとに運ばれますが、ここでハンスは初めて、クレオパトラに毒を盛られたことを知ります。
そこでハンスは、クレオパトラに復讐することを誓います。
ハンスの復讐
クレオパトラは、相変わらずハンスを看病するフリをしています。
ポケットから毒の入った瓶を取り出し、薬に混ぜて、ハンスに飲ませようとしたその時、弱って起き上ることすらできないはずのハンスが、普通にベットに座っているではありませんか。
驚くクレオパトラに追い打ちをかけるように、ハンスは「その黒い瓶を見せてもらおうか」。
計画が明るみに出たことを悟った脳筋とクレオパトラは、サーカスから脱出しようとします。脳筋はフロゾに襲い掛かり、クレオパトラは外に逃げ出そうとします。
しかし、他のフリークス達が黙って見ているわけはありません。日頃から馬鹿にされている恨みも重なり、銃やナイフを持って、脳筋やクレオパトラに攻撃を加えます。
「キャー!」と叫び声を上げるクレオパトラ、ここで画面は暗転します。
見世物小屋
舞台は戻って、最初の見世物小屋。
そしてその檻の中にはなんと、下半身が無く、腕だけで這いずり回り、「ウォー」としか話すことのできなくなった、いわばフリークスと化したクレオパトラがいたのでした。
1分で振り返るストーリーまとめ(忙しい人向け)
忙しい人向けに、本作の内容を1分で把握できるようにまとめました。
✔ クレオパトラがハンスに近づいているのは、お金目的。ヘラクレスという恋人もいる。
✔ ある日クレオパトラは、ハンスの財産を自分のものにしようとして結婚を申し込む。
✔ ハンスとクレオパトラは結婚するが、結婚後早々にして、クレオパトラはハンスを毒殺しようとする。
✔ しかし、ハンスはクレオパトラの企みを見破っていた。
✔ クレオパトラは、フリークス(奇形者)たちの復讐を受け、自らがフリークスになってしまう。
興味が湧いたら、ストーリー(細部)も読んでいただけると嬉しいです!!
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