作品紹介
制作 | 2005年 |
ジャンル | サスペンス |
監督 | デヴィッド・クローネンバーグ |
キャスト | ヴィゴ・モーテンセン、マリア・ベロ、エド・ハリス、ウィリアム・ハート |
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』は、2005年、同じ名前のコミックを原作として制作されたデイビッド・クローネンバーグ監督の映画です。
R-15指定。
この映画のみどころ
人には、誰しもが言いたくない過去、秘密にしたい過去があるものです。
私も、中二病真っただ中だったあの頃、いろいろと行ってきた愚行の数々と言ったらそうれはもう、とてもじゃないけど人様には聞かせられない恥ずかしい話ばかり…
では、こういうパターンはどうだろう?
真面目で温厚で優しくて、愛妻家で子供が大好きで、常に家庭のことを一番に考えている絵にかいたような模範的な男。
実はその男が、かつて冷酷な殺人鬼だったとしたら?
そのことを知ったら、友人を続けることができるだろうか?妻であれば、そんな夫を愛することができるのだろうか?
この映画は、ある意味”究極の愛とは何なのか?”ということを考えさせてくれます。
主人公に、または主人公の妻に自分の身を置き換えて見てみると、とても複雑な気分になれる。そんな映画です。
そしてなんといっても、主演のヴィゴ・モーテンセンがはまり役なんです。優しそうに見えて、どことなく恐怖を感じさせてくれるような凄みを持っている。
この人以外、トムの役はできないでしょうね。
登場人物
トム・ストール
本作の主人公。妻のエディと共に、街で小さなカフェを経営している。
愛妻家でありかつ子供にも優しく、絵にかいたような良き父。
性格も温厚で、人当たりも良い。
「暴力では何も解決しない」という信念を持っている。
しかし、トムは妻にさえ隠している秘密があるようだ。
エディ・ストール
トムの妻。トムを陰で支え、育児も欠かさない良き母。
カール・フォガティ
突然トムのカフェに押し入ってきた、得体のしれない雰囲気を纏った男。
トムのことを、しきりに「ジョーイ」と呼ぶ。
左目は潰されていて、カール曰く「ジョーイに有刺鉄線で抉られた」とのこと。
ジャック・ストール
トムの息子。高校生。運動は苦手。
学校では、不良の学生に虐められるているが、やられっぱなしかと思いきや思い切った反撃をすることもある。
サラ・ストール
トムの幼い娘。暗闇が怖く、夜中にはトムに慰められることがしばしばある。
サム・カーニー
エディの友人で、街の保安官。
ストーリー(細部)
序盤
トムは、仕事を真面目にこなして家計を支え、妻と子供を愛する模範的な父親だった。
子供が家にいない夜は、エディが歳甲斐も無くチアリーダー時代の衣装を身にまとってコスプレプレイを楽しむなど、そのラブラブぶりは半端ない(良い歳こいたチアリーダー姿のおばさんが「ゴー!ワイルドキャッツ!!」と叫んでベットに飛び込むさまは、なかなか痛いものがあるが…)。
幸せな生活を営むトム一家だが、ある日の夜異変は起きた。殺人強盗犯の二人が、トムのカフェに押し入ってきたのだった。
犯人の二人は、店員を人質に取ってお金を要求し、更にはその人質を殺そうとする。
ここでトムは、犯人の一瞬のスキをついて反撃。銃を奪い、ものの数秒で犯人の二人を殺してしまう。
トムが強盗犯をやっつける。このニュースは、町中を駆け巡った。
トムは英雄として称えられ、噂を聞きつけたお客さんで店内は賑わった。
しかし、トムはどういうわけか、一向にして暗い表情を変えないのだった。
中盤
後日、店に異様な雰囲気を纏った3人組がやってくる。
そのリーダーの男は自らの名前をカール・フォガティと名乗り、トムのことをしきりに「ジョーイ」と呼ぶ。そして、トムとは全く関係のない地域フィラデルフィアの話題を持ち出してくるのだった。
保安官であるサムの調査によると、このフォガティという男は、複数件の殺人容疑を持つマフィアであることが判明した。
その後もフォガティは、しつこくトムに付きまとった。当初は気丈に振る舞っていたエディだったが、徐々にカールの恐怖に怯えるようになっていった。
そしてある日フォガティはエディにこう告げる。
「旦那のすべてを見通せ、奴の腹の中、奴の真の姿を」
後日、フォガティはついにトムの自宅に押し掛ける。そして、息子のジャックを人質に取り、「フィラデルフィアで”ある人物”会ってもらう」と脅しかけるのだった。
ここでトムは、再び部類の強さを見せつけてフォガティの護衛二人をあっという間に片付ける。
その後トムは、フォガティに胸を銃で撃たれてピンチに陥る。銃口を向けられて「残す言葉はあるか?」と言われたトムは、
「殺しておくんだった」
と呟いた。
しかし、ここで息子のジョーイがフォガティをショットガンで撃ち殺す。トムは、一命をとりとめる。
この一連の事件で、エディはトムに不信感を募らせていた。フォガティから言われた言葉、そしてトムの異常なまでの強さ。
エディが問い詰めると、なんとトムは、昔ジョーイという名の男で生きていたことを告白する。
トムは、殺人鬼だったジョーイとしての自分を捨て、トムという人間として生まれ変わろうとしていたのだった。
エディはショックのあまり…トムと熱いセッ〇スを交わす♡(なぜ!?)
終盤
トムは、朝早くに車でフィラデルフィアへ向かう。リッチーという男(フォガティがトムに合わせようとしていた男)に会うためである。
トムがリッチーの屋敷に着くと、リッチーは恨みと共に、トムの過去を語っていった。
トムの本名は、ジョーイ・ルーザック。ジョーイは以前、リッチーと同じマフィアグループに所属していた。ジョーイは、このマフィアグループの中でもとりわけ狂暴な男として恐れられていた。
リッチーがボスの跡を継ぐと決まった後、ジョーイはフォガティの目を潰し仲間を殺すという問題を起こした。この後始末のため、リッチーは莫大な時間と金を費やさなければならなかった。
その後ジョーイはマフィアグループを抜け出し、ジョーイとしての人格を捨ててトムという人間に成り代わり、一般市民としての生活を営んでいた。
田舎町のカフェでひっそりと過ごしていたトムだったが、強盗撃退事件が有名になったことがきっかけで、居場所をリッチーに知られてしまったということだ。
リッチーは、部下に命じてトムを殺そうとする。しかし、殺しのプロであるトムは反撃、数人の部下もろともリッチーを殺してしまう。
リッチーとの関係にカタを付けたトムは、近くの湖に銃を投げ捨て、その場でうなだれる。
ラストシーン
自宅に帰ったトム。
家に入ると、エディ、ジャック、サラがまるでお通夜のような食事をしているところだった。
トムが食卓の椅子に座っても、沈黙が破れることは無い(居心地悪すぎ…)。
しばらくすると、サラがトムにお皿とナイフとフォークを差し出す。
次に、ジャックが食事を差し出す。
トムとエディは、お互いに涙を浮かべながらも深刻な表情で見つめ合っていた。
考察及び感想
最後、煮え切らない感じで終わるのがなんともクローネンバーグっぽいのですが、ここで問題になるのは、”トムはエディに許されたのかどうか?”ということ。
トムは、殺人鬼だったジョーイとしての過去を捨て、模範的な父親として人生の再スタートを切ったわけです。きっとここには、更生したいというトムの固い意志があったのでしょう。
事実、エディや子供たち、街の人たちがトムのことを慕っているように、十分に更生できたと言えるでしょう。
しかし、今はいくら善良な市民であったとしても、人を殺したという過去は消えるわけではありません。さらに、更生のためとはいえ本名や過去を偽るというのは褒められることではありません。
エディからすれば、当然信用していた夫に裏切られたと感じることでしょう。
最愛の夫であるはずの男が、実は元マフィアでかつ殺人鬼たったと知っても、それでも夫を愛することができるのか?
それでも愛せるというのであれば、それはまさに究極の夫婦愛とでも言えるのでしょう。
最後の食卓のシーン。
ジャックとサラは、トムに食事を採るように促しています。この二人の取った行動は、トムを”父親”として向かい入れることを意味していると考えられます。
問題はエディです。なんたって、とんでもない過去をずっと秘密にされていたわけですから。「浮気しちゃいました!テヘペロ」なんてこととは比べ物にならないくらいのショックを受けているはずです。
しかし、愛情が完全に枯れたわけではありません。トム=ジョーイと判明した後に、エディはトムとセッ〇スをしています。
きっとエディの心の中では、”愛したい気持ち”と”許せない気持ち”の両方を併せ持っているのでしょう。
エディがトムを受け入れたかどうか?キザな言い方をすれば、答えは視聴者の心の中にあるのだと思います。
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