【考察】「ザ・ブルード/怒りのメタファー」(ネタバレ)クローネンバーグ監督の代表作

ホラー

作品紹介

製作 1979年
ジャンル ホラー
監督 デヴィッド・クローネンバーグ
キャスト オリヴァー・リードサマンサ・エッガー

『ザ・ブルード/怒りのメタファー』は、1979年、クローネンバーグ監督によって製作された映画です。

「Cult Movie」という当時の雑誌では、この映画こそがクローネンバーグ監督の最良の映画であると評価しています。

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この映画のみどころ

この映画で面白いなと感じたところは、”怒り”という感情をエネルギーにして子供が産まれてくる、というそのクローネンバーグ監督の不気味な発想です。

「不快で衝撃的」と当時の雑誌で評されたこの映画は、クローネンバーグ監督らしさが存分に発揮されています。

ホラー映画が好きな私としては、「一体どんな子供が産まれてくるんだろう」と、純粋に興味が湧いてくるのです。

古い映画なので、現代の映画得比べてしまうと映像としてはどうしても見劣りしてしまいますが、そこはストーリーと発想力でカバーしており、十分楽しむことができます。

 

この映画では、夫婦関係が崩壊した主人公のフランクと妻のノーラが登場するのですが、なんとクローネンバーグ監督は、この映画を作る前に奥さんと離婚したばかりということなのです。

ということは、少なからず監督自身の実体験が基になっているということですね。

なんだかクローネンバーグ監督の個人的恨みつらみが反映されてそうで、ますます不気味…(-_-;)

小難しいストーリーが多いクローネンバーグ映画の中では、比較的完結明瞭なお話なので、初心者の方にはおススメです。

(とはいっても、どこにも置いてないので入手に苦労しますが…)

登場人物

フランク・カーベス

本作の主人公。妻のノーラは精神病院に入院中であり、愛娘のキャンディスをほぼ男手一つで育てている。

定期的に妻の元へキャンディスを連れて行っているが、妻に虐待癖があるため、本音で娘を妻に会わせたくない。

ノーラ・カーベス

本作のヒロイン。精神を病み、ラグランが経営する精神病院に入院している。

幼少時、母親から虐待を受けており、父親は見て見ぬふりでノーラを守ろうとしなかった。そのせいあってか、子供を虐待する癖がある。

ハル・ラグラン

精神病院を経営する精神科医。

患者の精神を操ることで、患者が抱える怒りの対象者になりきり、患者をわざと罵倒して本音を引き出して精神的和解を図るという”サイコ・プラズミック療法”の考案者。

ジュリアナ・ケリー

ノーラの母親。

ノーラが小さい頃、虐待を加えていた。

バートン・ケリー

ノーラの父親。

ノーラが小さい頃、母親から虐待を受けているノーラを助けなかった。

ルース・メイヤー

キャンディスが通う幼稚園の先生。

自宅に食事に誘われるなど、最近フランクとの距離が急接近中。

ストーリー(細部)

序盤

フランク・カーベスは、愛娘のキャンディスをほぼ男手一つで育ててきた。妻のノーラは、精神を病みラグラン精神病院に入院中である。

ある日フランクは、キャンディスの身体に虐待の跡があることを発見する。犯人は、定期的にキャンディスと面会させている妻ノーラに違いなかった。

これは、ラグランの行うサイコ・プラズミック療法の弊害に違いない。フランクは、弁護士と相談しラグランを訴える準備を始める。

 

その頃、ラグランはノーラへのサイコ・プラズミック療法の真っ最中だった。ラグランは、ノーラの娘キャンディスや母ジュリアナになりきり、ノーラが抱えるトラウマを引き出そうとする。すると、ノーラには幼少期、母親に虐待されていたという事実が判明する。

サイコ・プラズミック療法の効果により、ノーラの怒りはどんどん上昇していく。

時を同じくして、自宅でくつろぐジュリアナの周囲に異変が起こる。なんと、正体不明の気味の悪い子供が現れ、キャンディスが見ている前でジュリアナを撲殺してしまう。

警察が捜査したが、犯人は解らなかった。

中盤

ラグランの精神病院では、ノーラのサイコ・プラズミック療法が続けられていた。

ラグランは、今度は父親になりきってノーラの本音を聞き出そうとする。すると、ノーラの父親は、ノーラを虐待から守らずに見て見ぬふりをしていたということが判明する。

 

その頃、ジュリアナが死んだという知らせを聞いて、ノーラの父親バートンがフランクのもとにやってくる。

バートンは酒に酔い、娘のノーラに面会させてくれなかったラグランへの文句を呟いていた。

すると、ここで再び不気味な子供が登場する。そしてこの子供は、今度はバートンを撲殺してしまうのだった。

タイミングよく、バートンのいるホテルに駆け付けたフランクは、バートンを殺した犯人の子供を目撃する。その子供は、フランクの見ている前で急にもだえ苦しみ、原因不明の死を遂げる。

司法解剖の結果、謎の子供の正体が明らかになる。

・目に異常があり、虹彩はあるが網膜はない。視界はゆがんでいて、色の識別は不可能。
・上唇には口唇裂がある。
・舌が厚すぎてまともに喋れない。
・歯が無い。

そして何よりも、”へその緒”が無い。つまりこの子供は、お産によって分娩されていないということだ。

さらに、この子供の死因も不可思議だ。この子供には、体内にエネルギーを貯めるコブのようなものがあり、そのコブに貯蔵されるエネルギーが切れたことで死に至ったという。

この小さな殺人鬼は、人間ではないのだ。

 

一方で、ラグランによるノーラへのサイコ・プラズミック療法は未だ続いていた。ノーラ以外の患者をすべて退院させ、ノーラにつきっきりになるというラグランの熱の入れようだ。

ラグランが演じるのは、ルース・メイヤー。フランクとの浮気を信じて疑わないノーラは、ルースに対して怒りを爆発させる。

するとやはり、あの不気味な子供が2人ルースの前に現れ、ルースを撲殺してしまうのだった。そして、2人の謎の子供はキャンディスをどこかへと連れて行ってしまう。

終盤

フランクは、精神病棟を追い出された患者マイクと出会う。

マイクは、ノーラを「女王蜂」と呼び、自分を見捨てたラグランへの恨みを語っていた。そして、サイコ・プラズミック療法の被害者が多数いることを証言。

マイクの証言は、訴訟の材料としては申し分ないのだが…

後日、マイクが急にフランクの自宅を訪れる。そして、病棟閉鎖の理由が「ラグランには何か大きな計画がある」「小さい子供を育てていて、ノーラに面倒を見させている」というのだ。

小さい子供というと、これまでにフランクに近しい人間3人を殺害したばかりか、キャンディス拉致していったあの不気味な子供のことだ。

フランクは、閉鎖されたラグランの精神病院へと向かう。

 

山奥にあるラグランの精神病院で、フランクはラグランを発見。脅しつけてすべてを話させる。

なんとあの不気味な子供は、ノーラの”怒り”という潜在意識から産まれた子供だった。サイコ・プラズミック療法を繰り返すうちにノーラは、怒ると同腹児(ブルード)を産み出し、怒りの対象に差し向けて攻撃するという恐ろしい能力を身に着けていたのだった。

ノーラの力は既にラグランでは制御できず、ラグランですら殺されかねない状況だ。

ここで、娘を助けたいフランクと命を守りたいラグランは共に協力。フランクが夫としてノーラを諫めているうちに、ラグランが2階で監禁されているキャンディスを助け出すという算段となる。

 

久しぶりに対面するフランクとノーラ。フランクは優しい言葉をかけ続け、今後はノーラと一緒に生きていくことを誓う。

するとノーラは、服を脱いで自分の腹部をフランクに見せつける。

なんとノーラの腹部は、太いへその緒のようなものが飛び出ており、その先には大きな胎盤のようなものがくっついていた。そして、身体全体に腫瘍のようなものが広がっていた。

そしてノーラは、胎盤のようなものを自ら破き胎児を取り出すと、血だらけになりながら嘗め回すのだった。

ドン引きするフランク。そして、さっきまで愛がどうたらと語っていたフランクが自分にドン引きしている様を見て怒り出すノーラ。

その瞬間、2階で寝ていた謎の子供たちが起き出して、ラグランを撲殺。さらには、キャンディスを手にかけようとまでする。

キャンディスを守るため、フランクはやむを得ずノーラの首を絞めて殺す。すると、謎の子供達も一斉に活動を停止し、間一髪でキャンディスの命は助かった。

ラストシーン

キャンディスを車に乗せ、自宅に帰ろうとするフランク。

助手席に座り、ただ茫然と外を眺めるキャンディス。

この時フランクは、キャンディスの腕にノーラと同じ腫瘍ができていることに気付いていなかった。

考察及び感想

この「………(;・∀・)」となってしまうようなラストは、さすがのクローネンバーグ映画という感じですね。

 

さて、ラストに映されたキャンディスの腕の腫瘍。これはまさに、キャンディスが将来ノーらと同じ運命を辿るであろうということを示唆していると考えられます。

作中でも、何度も「キャンディスとノーラは同じ」という主旨の発言が出てきます。

 

それにしても、ラグラン医師が行っていた”相手をわざと怒らせて本音を引き出し、精神的な和解を図る”というサイコ・プラズミック療法ですが、なんと驚くことに、現代のカウンセリングの世界でも似たようなことが行われているそうなのです。

カウンセラーは時折、相手の本音を引き出すために、わざと精神を逆なでするようなことを言うそうです。

人間というものは、怒ると本音が出るんですね。

とはいうものの、ラグラン医師の場合は、患者のマイク(男性)に対し「お前は弱虫だ」「女として産まれてくればよかった」「スカートを履いて生活しろ」などと罵倒するなど、フェミニストが聞いたら激怒しそうな人格否定発言を繰り返しており、少しやりすぎな感じはしますが…(笑)

いずれにせよラグランは、自らが考え出したサイコ・プラズミック療法にベストマッチするノーラという患者を見つけ、夢中になってこの療法を繰り返しているうちに、ノーラはブルードを産み出すという特異体質に変化。

しかし最後は、ノーラの力があまりにも強くなりすぎたため、ラグラン本人でも制御できなくなってしまった、ということですね。

 

ホラーとしてはよくできているこの映画ですが、一つだけ残念な点は、視覚的な恐怖に掛けるというところです。

3人を殺害したブルードたちは、恐らく子供に防寒服を着せて灰色のメイクをほどこしただけ。おぞましい姿をしたノーラは、当時としては相当頑張って特殊メイクをしたのだと思いますが、今の感覚で見てしまうとどうしても作り物に見えてしまう。

もっともこの映画は、今から40年以上も前の1979年に作成されたものですので、当然CGなどは無く、特殊メイクにも限界がありますから仕方のないことだとは思います。

きっと、今の映像技術でリメイクされれば、相当怖い映画になるのだろうと思います。

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