漫画『火の鳥 黎明編』(ネタバレ無し)天才のエキスがたっぷり詰まった秀作

漫画

『火の鳥 黎明編』の作品紹介

 連載 1969年(漫画雑誌「COM」)
単行本 全16巻(完結)中1~2巻
 ジャンル 人間ドラマ
 作者 手塚治虫

『火の鳥 黎明編』は、1969年、漫画雑誌「COM」にて連載された短編漫画です。作者は、日本でもっとも有名な漫画家の手塚治虫さん。

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『火の鳥 黎明編』のみどころ

この漫画の作者は、天才の名を欲しいままにした説明不要の漫画家・手塚治虫さん。

『火の鳥』という漫画は、その天才としてのエキスがたっぷり詰まった作品なんです。

黎明(れいめい)編は、数ある火の鳥シリーズの中で1番最初に描かれた作品。野球で例えれば、1番バッター。

黎明編を読んでいなければ、火の鳥はもはや語れないといってもいいでしょう。

そもそも、火の鳥とはどういう漫画なのか?

一言で説明するのは難しいですが、私の理解としては、漫画よりも「哲学書」に近い存在なんじゃないかと感じています。

もちろん、本質は漫画なので哲学書と違ってスラスラ読めます。基本的にはシリアスなストーリーですが、手塚治虫さん独特のギャグ(ちょっと古め)もちょいちょい挟んでくるので、読みやすいと思います。

 

題名にもなっている”火の鳥”が、まさにこの漫画の中核です。

”火の鳥”は、不老不死という超特殊能力を持った謎の生命体。首を斬ろうが、弓矢で貫こうが、絶対に死なない身体なのです。

しかも、神出鬼没。時間軸的には古代から未来まで、場所は山、海、宇宙、どこかの惑星など、あらゆる時間・場所に自由に出没することができます。

そしてこの漫画の肝は、”火の鳥”の生き血を飲んだ者は、”火の鳥”と同様に不老不死の力を手に入れることができるという点。

慾深い人間たちは、この日の鳥の生き血を手に入れるために、醜い争いを繰り返していくわけです(ストーリーにより多少の違いは有り)。

そこで”火の鳥”(作者?)は人間に問いかけるわけです。

「不老不死が本当に幸せなのか?」

 

前置きが長くなりましたが、今回紹介する黎明編の舞台は弥生時代の日本。この黎明編では、大きく分けて2つの視点からストーリーが進んでいきます。

1つ目は、過酷な運命に必死に抗う主人公ニギの視点。

ニギは、祖国を滅ぼされながらも、己の腕を磨き上げ、祖国を滅ぼした張本人である卑弥呼に復讐を誓います。そして、争いを繰り返しながらも必死に生き抜こうとするのです。

2つ目は、邪馬台国出身の医者グズリの視点。

グズリは、噴火による衝撃により、妻のヒナクと共に地中深くに閉じ込められてしまいます。

グズリは、野生動物と同程度にまで身をやつしながらもなんとか生き抜こうともがいているうちに、「生きるとはどういうことなのか」という人生の真理に触れることになります。

対照的なこの二人に対して、火の鳥は一体何をささやくのでしょうか?

二人がどんなラストを迎えるのか、この辺がこの漫画のみどころといえるでしょう。

また、登場人物の名前や逸話など所々に日本の神話をモチーフにしており、何気に日本の歴史のお勉強をすることもできます。

 

あと、何気に悲惨なシーンが多いのも特徴です。結構容赦のない展開が多いので、ショックを受ける方も多いはず。

ショックを受けたシーン

・突然クマソの国を襲った邪馬台国軍の猿田は、首長以下戦闘員を全滅させた後、残った村人たちを1か所に集め、弓矢で皆殺しにする。

・4人の赤ん坊を担いだまま、流れ込む溶岩から逃げるグズリとヒナク。しかし、赤ん坊4人のうち2人は溶岩に落ちて死亡。もう2人は餓死する。グズリは一言「赤ん坊はあきらめろ、また産めばいい。」

・邪馬台国軍と高天原軍との戦い全般。

 

『火の鳥 黎明編』の登場人物

イザ・ナギ

クマソの国出身の少年。伊弉諾の尊(いざなぎのみこと)がモデル。

兄のウラジを尊敬していたが、ウラジは火の鳥に焼かれて死亡。

最初こそ村人を皆殺しにした猿田彦を憎んでいたが、面倒見のいい猿田彦を父のように慕うようになる。

猿田彦の基に身を寄せてからというもののますます腕が上達し、国一番の弓使いとなる。

卑弥呼を打ち取ることを命題に挙げている。

猿田彦

邪馬台国出身の軍人。猿田毘古神がモデル。

豪快な性格。かなりの豪傑で、戦いになれば接近戦では右に出る者はいない。

卑弥呼のことを崇拝していて、卑弥呼に前に出るとあの豪放磊落な性格はどこへやら、なんでも言うことを聞くyesマンへとなり下がる。

ナギを実の子供のようにかわいがる。

グズリ

クマソの国に突如現れた、邪馬台国出身の医者。

当初は、ヒナクの病を治し、やがてはヒナクと結婚して国中の信頼を得るに至るのだが、実は邪馬台国の回し者。

裏でこっそりと手引きして、猿田彦率いる邪馬台国の軍隊をクマソに襲わせる。

ヒナク

グズリの妻。

グズリの裏切りを知りながらも、愛情と憎しみが交差したまま夫婦関係を続けていく。

ものすごい数の子供を産む。

卑弥呼

言わずと知れた邪馬台国の女王。

己の野望を叶えるためなら手段を選ばない、残忍な性格。

美貌と占いにより国民からの指示を得てきたが、歳も60近づき、そろそろ通用しなくなってきている。

永遠の命と若さと手に入れるため、国を挙げて火の鳥の生き血を探し求めている(国民からすればいい迷惑)。

天の弓彦

ヨマ国出身の軍人。

2mはあろうかという巨大な弓を使いこなし、どんなに遠く離れていても弓を命中させることができる。また、鉄でできた矢を数本同時に射出するなど驚異的な戦闘能力を持つ。

気分屋で、自分の気が向いたときじゃないとまともに動こうとしないのが玉に瑕。

軍人としてはなかなか骨がある人物で、戦い方は正々堂々としていて卑怯な真似は絶対にしない。

火の鳥を射止めるため、卑弥呼にスカウトされて邪馬台国に身を寄せる。

ストーリー(細部)

ニギの姉のヒナクは、原因不明の病にかかり生死の狭間をさ迷っていた。

ニギの兄でありヒナクの夫であるウラジは、ヒナクを助けるために火の鳥の生き血を探しに行ったが、焼死体となって村に帰ってきた。

そんな時に、グズリと名乗る旅人がクマソの国を訪れる。グズリは自身を「医者だ」と言い、ヒナクの病をたちどころに治してみせる。

その後もグズリは国の医療に貢献し、そのうちヒナクと夫として認められるようにまでなる。ニギも、グズリを兄のように慕っていた。

しかし、なんとグズリの正体は邪馬台国のスパイだった。

グズリの手引きにより猿田彦ら邪馬台国の軍隊はクマソの国に入り込み、村人を皆殺しにしてしまう。

クマソの国で生き残ったのは、ニギ、ヒナクの二人だけ。

グズリの裏切り。村人を皆殺しにした猿田彦。そして邪馬台国の女王卑弥呼。

奴隷の身になりながらも、ニギの心は復讐に燃えていた。

今後の展開

復讐を遂げようとするニギ。ニギを息子のようにかわいがる猿田彦。火の鳥の生き血が欲しい卑弥呼。そして、生きるために必死すぎて恨みとかそんなこと言ってられないグズリとヒナク。

黎明編の物語は、これらの人物たちを中心にして回っていきます。

 

特に後半は戦のシーンが中心になってくるのですが、そこで主要人物たちがごっそり死にます。

「火の鳥」シリーズは救われない話が多いと言われていますが、黎明編も例に漏れずの鬱展開。

 

皆さんも、『火の鳥 黎明編』を読んで、生きる意味について考えてみてはいかがでしょうか?

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